「鎌倉殿の13人」が描く坂東武者たちの史実との違いは?第6回放送「悪い知らせ」の振り返り
石橋山の合戦に敗れ、「もう戦はやらぬ」などとすっかり不貞腐れてしまった源頼朝(演:大泉洋)。
その闘志を蘇らせたのは、北条義時(演:小栗旬)が亡き兄・北条宗時(演:片岡愛之助)から受け継いだ坂東武者たちの思いでした。
今回はそんな坂東武者たちの一人々々をピックアップ、史実との違いやその後も含めて紹介したいと思います。
比企能員(演:佐藤二朗)伊豆で頼朝が挙兵した際、味方すべきか否か、妻の道(演:堀内敬子)と比企尼(演:草笛光子)の板挟みとなっている様子がコミカルに描かれていました。
母と妻の板挟みで、重い腰を上げかけた比企右衛門尉能員(イメージ)『星月夜鎌倉見聞誌』より
比企尼「すぐに戦の支度を」
道「なりませぬ。味方についた後で佐殿が平家に滅ぼされたら我らはどうなるのですか」
能員「母上、やはりここは様子を見ると言うのは……」
比企尼「早く戦の支度をなさい!」
能員「戦じゃ!」
この時点で能員が動いた記録はありませんが、2年後に生まれた源頼家(頼朝の嫡男)の乳母父となっていることから、早く(頼朝の勢力が確保できた前後)から味方する意思は示していたのでしょう。
土肥実平(演:阿南健治)
頼朝の窮地を守り抜いた土肥実平像。Wikipediaより(撮影:C2revenge氏)
石橋山で敗れた頼朝を山中に匿い続け、後に合流した御家人たちと共に真鶴から舟を出して安房国へと逃れます。この辺りはドラマと同じですね。
ちなみに頼朝を見逃した梶原景時(演:中村獅童)が後に降伏してきた時、とりなす役目も果たしており、両者の間につながりがあったことがわかります。
北条時政(演:坂東彌十郎)早くも頼朝を見限ろうと武田信義(演:八嶋智人)に取り入ろうとしたかと思えば、心が折れてしまったり、頼朝のための食糧を頬張ったり……不在の宗時を案じてか、ずいぶんと不安定な様子。
と思えば後から海を渡って来た頼朝と再会すると、見捨てたことも忘れて「よくぞ生きておられました」と手の平を返す調子のよさ。
史実では諸説あるものの、時政と義時は甲斐国に留まり、武田信義と共に行動。富士川の合戦で合流するまで、頼朝とは別に動いています。
安西景益(演:猪野学)頼朝の幼馴染で、安房国へ逃げのびて来た頼朝を温かく迎え入れたのは史実通りです。
人間の本性は困った時にこそ表れるもの……平素はさんざん調子のいいことを言っておきながら、いざ戦となれば矢を射かけたどこぞの山内首藤経俊(演:山口馬木也)とは大違いですね。
三浦義澄(演:佐藤B作)
丸子川の増水で石橋山に参戦できなかった三浦一族は、引き返す道中に畠山重忠(演:中川大志)の軍勢と遭遇。
重忠は父が京都=平氏政権の監視下にいたこともあって源氏に与する意思を示せず、大庭景親(演:國村隼)との手前「戦ったふり」だけする約定が交わされていました。
しかし三浦一族の和田義茂(わだ よしもち)が暴走して畠山を攻撃。怒った重忠も抵抗し、双方に被害を出したことが後の衣笠城攻めにつながります。
大河ドラマでは話を簡略化するため、兄の和田義盛(演:横田栄司)が暴走したことになっていましたね。
三浦義明(演:なし)ドラマの都合上割愛されてしまいましたが、義澄の父・大介義明は源義朝(よしとも。頼朝の父)の代から仕えた累代の家人。
「我は源氏累代の家人として、老齢にしてその貴種再興にめぐりあうことができた。今は老いた命を武衛(頼朝)に捧げ、子孫の手柄としたい」
そう言ってただ一人で衣笠城に残り、孫の重忠に討たれたのでした。
畠山重忠(演:中川大志)大河ドラマでは大庭景親の目下みたいに扱われていましたが、決して下風に立つような家柄ではありません。
やがて捲土重来を果たした頼朝に従うことになりますが、衣笠城を攻めた時点で17歳の生年。後に坂東武士の鑑と讃えられる武勇と将器を備えていたのでした。
和田義盛(演:横田栄司)「もしも大願成就した暁には、某を侍大将にしていただけませぬか!」
石橋山での放火と言い、重忠との一戦と言い、何かと暴走しがちなイメージの和田義盛。
義澄「まだ何も手柄を立てておらぬのに、先に褒美をねだるやつがあるか」
頼朝「面白い。ならばここに約束する。源氏の世が来たら、おぬしを侍の別当としよう」
この冗談が瓢箪から駒となり、後に鎌倉入りした頼朝は義盛を侍所別当に任じたのでした。
ダメで元々、何でも言ってみるもんですね(もちろん、叶えるための努力は前提ですが)。
その他、女の戦いや後白河法皇の生霊など……とまぁ、何かと男むさい(そこが魅力的な)源平合戦ですが、北条政子(演:小池栄子)をはじめ女性陣の演技も彩りを添えてくれます。
たとえば政子Vs八重姫(演:新垣結衣)の繰り広げた「女の戦い」。愛する頼朝がどっちの夢枕に立っただの、どっちが早く立っただの……男からすれば「どうでもいい」の一言。
でも、政子にしてみれば水タライを蹴っ転がすくらいに腹立たしかったようで、そんな様子も実に可愛かったですね。
また、今回も頼朝を悩ませる後白河法皇(演:西田敏行)の生霊……夜だけじゃなく、昼間にも出没するように。次はどんなアプローチを仕掛けるのでしょうか。
終わりに義時「風向きは変わりました。佐殿は生き延びられました。佐殿は天に守られている。そのことは、どんな大義名分よりも人の心をつかみます」
義時「このままでは、石橋山で佐殿をお守りして死んでいった者たちが浮かばれませぬ!事は既に佐殿の思いを超えています。平家の横暴に耐えてきた者たちの不満が今、一つの塊となろうとしている。佐殿がおられなくても我らは戦を続けます。そして必ず、平家の一味を坂東から追い出す」
義時「私は諦めてはおりませぬ!」
その想いを真っ向から受け止めて、真に覚醒(でもちょいちょいボロは出る)した頼朝。
さぁ、ここから巻き返しです。房総の大豪族・上総介広常(演:佐藤浩市)を説得するべく義時と義盛が向かいますが、この男はかなりの曲者。
房総の大豪族・上総介広常。彼の選択が戦の趨勢を決する。歌川芳虎「大日本六十余将 上総介広常」
頼朝からの書状を握りつぶし、酒をかっ食らう無頼漢ぶり。のっけから強烈なインパクトを放ちます。
広常「この戦、俺がついた方が勝ちだ」
果たしてこの広常は頼朝につくか、それとも平家につくのか。次週2月20日(日)放送の第7回「敵か、あるいは」。
義時たちは広常を説得する任務を果たせるのでしょうか。続々新登場する者たちにも注目ですね!
※参考文献:
『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月 田中大喜 監修『大河ドラマ 鎌倉殿の13人 北条義時とその時代』宝島社、2022年2月日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan