【鎌倉殿の13人】土肥実平が魅せた「焼亡の舞」、ボロボロの頼朝公を励ました旧跡「謡坂」

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【鎌倉殿の13人】土肥実平が魅せた「焼亡の舞」、ボロボロの頼朝公を励ました旧跡「謡坂」

土肥実平「真鶴の岬へ参りましょう。あそこまで行けば土肥の舟を出すことができます」
源頼朝「どこにある」
実平「少し戻りますが、ここからだと目と鼻の先」
頼朝「ならどうして最初からそこへ連れて行かぬのだ!」
北条義時「みな安房で待っております。急いで」
頼朝「もう無理じゃ。もう歩けん!」
実平「お立ちになって!さぁさぁさぁさぁ、参りましょう!」

※NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第6回「悪い知らせ」より

……治承4年(1180年)8月23日、石橋山の合戦に敗れてあっちへこっちへ逃げ回り、疲労困憊の源頼朝(演:大泉洋)公。

戦の前には縁起がどうとか日取りがどうとか、いざ負ければ「お前らのせいだ」とばかりに逆ギレする残念ぶりに、舅の北条時政(演:坂東彌十郎)さえ見限ろうとする始末。

菊池容斎『前賢故実』より、土肥実平

そんな主君でも見捨てることなく、けなげに頼朝公を支え続けた一人が土肥実平(演:阿南健治)でした。

今回は実平が気弱になった頼朝公を励ましたエピソードを紹介したいと思います。

頼朝公さえ無事ならば……

石橋山からほど近い相模国足下郡土肥郷(現:神奈川県真鶴町辺り)を領していたため、そこから頼朝公の再起を期するべく安房国(現:千葉県南部)へ出航します。

でも現代と違い、舟は人力で漕がないと進んでくれません。そこで体力を回復させるため、出航前に一休み。

田代信綱「まったく、先日は散々でしたなぁ」

岡崎義実「あの時、梶原(景時。演:中村獅童)めが見逃してくれなんだら、今ごろ我ら草生す屍(かばね)じゃ」

年恒「石橋山合戦之図」より、洞窟に潜む頼朝ご一行。真鶴へ逃れる道中、メンバーの入れ替わりがあった模様。

土屋宗遠「然り然り……それにしても、大庭(景親。演:國村隼)の大軍に完全包囲されていた中、よくぞここまでご無事でしたなぁ」

土肥遠平「やはり佐(すけ。頼朝)殿は『天に守られて』いるんじゃなぁ」

新開実重「そうとも……佐殿さえご無事なら勝ったも同然。ここは一つ、天下草創の前祝いと参ろうぞ!」

土肥実平「然(さ)ればそれがし、舞いなど一指し……」

土佐坊昌俊「いよっ、待ってました!」

頼朝公「やれやれ……ポジティブが過ぎるわ」

これらの会話はフィクションですが、こんな感じで頼朝激励会&船出の壮行会が行われたことでしょう。

ちなみに、現場にいたとされるメンバーは以下の通り(カッコ内は実平を中心とした関係)です。

源頼朝公
土肥次郎実平(どい じろうさねひら)
土肥弥太郎遠平(どい やたろうとおひら。実平の長男)
新開荒次郎実重(しんがい あらじろうさねしげ。実平の次男)
土屋三郎宗遠(つちや さぶろうむねとお。実平の弟)
岡崎悪四郎義実(おかざき あくしろうよしざね。実平の妹婿。演:たかお鷹)
土佐坊昌俊(とさのぼう しょうしゅん。実平の預け者)
田代冠者信綱(たしろ かじゃのぶつな。工藤茂光の娘の子・外孫)

※能楽「七騎落」より

この場所は実平が謡い舞ったことから、後に「謡坂(うたいざか。神奈川県真鶴町岩42)」と呼ばれるようになったのでした。

エピローグ・焼亡の舞

【謡坂】

治承4年(1180年)石橋山の合戦に敗れた源頼朝の一行は、箱根山中を逃れ出て岩海岸から房州(千葉県)へ向けて船出しました。その途中、無事を祝い再起を願って土肥実平がうたい踊ったと「源平盛衰記」にあります。
この付近の謡坂という地名はそれに由来するといわれます

※「謡坂」碑文より

謡坂の石碑。筆者撮影

以前、私用で真鶴へ立ち寄った時にここを通りがかりました。負け戦で疲労困憊しているのはみんな同じなのに、少しでも頼朝公や仲間たちを元気づけようと謡い舞った実平の心意気は、坂東武者の鑑と言えるでしょう。

ちなみにこの舞は「焼亡(じょうもう)の舞」と言いまして、自分の館が伊東祐親(演:浅野和之)に焼き討ちされているのを見下ろしながら「家など焼きたくばいくらでも焼け。その炎は主君を守護する光となろう」などと舞ったもの。

半ばヤケクソだったのかも知れませんが、もう何も失うものがなくなった実平たちは、それから大いに活躍したのでした。

※参考文献:

『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月 三田村信行『源平盛衰記 巻の二 源氏の逆襲』ポプラ社、2004年12月

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