狼や熊など、20種の哺乳類の再導入が失われた生態系を回復する鍵を握っている
[画像を見る]
オオカミ、クマ、バイソン、ビーバーなどの動物たちを自然に帰せば、壊れかけている世界の生態系が回復するかもしれないという。
国連が助成した報告書によると、20種の哺乳類を自然に帰すことで自然が健康になるばかりか、気候変動や生物多様性の喪失といった諸問題に取り組むことにもつながるという。
・動物を元の生息域に帰すことで生態系が回復
たった20種の動物を彼らの元の生息域に再導入するだけで、動物たちの生息域が地球の4分の1以上にまで広がる。これが生態系を回復させ、二酸化炭素の排出を防ぎ、種の個体数を増加させると期待できるという。
報告書の主執筆者カーリー・ヴィンヌ博士は、「この結果は、積極的かつ戦略的な回復プログラムを行えば、無傷の動物たちを回復させられるという希望と可能性をもたらすものです」と語る。
「生態系回復と自然を基本とした解決策に資金が集まるなど、注目の高まりを感じます。地球の生命の豊かさを取り戻す保全や回復へ向けた努力を確実に行わねばなりません。それは現存する野生種全グループの回復にもつながります」
この分析は、国連環境計画(UNEP)と非営利団体RESOLVEによって実施され、『Ecography』(2022年1月27日付)に掲載された。
[画像を見る]
photo by Pixabay
・大型哺乳類の再野生化計画のメリット
再野性化のキモとなるのは、大型哺乳類をその本来の生息域に再導入することだ。これによって生態系を「自己調整できる自然な状態」にまで回復させる。
どの時代の生態系を「自然」とするかについては、さまざまな意見がある。西暦1500年頃を基準にすべきという意見や、最後の氷河期(1万2000年前)の状態を自然とみなす意見もある。
再野性化は、生態系の生物多様性やその機能向上につながると期待できる一方、万能ではない。すでに地上から消えてしまった生態系もあるからだ。
さらに大型哺乳類を再導入すれば、人間や家畜に被害を与える可能性もあるだろう。たとえば、オオカミのような大型捕食動物はわかりやすい例だ。
オオカミの再導入はしばしば物議を醸してきた。しかしこれまでの研究からは、こうした動物は草食動物の個体数を調整してくれるために、植物や腐食動物を繁栄させることが明らかにされてきた。
肉食動物だけでなく、草食動物の再導入も環境に重要な影響を与える。彼らは植物のタネを拡散させ、栄養を循環させ、さらに放牧による火災まで抑制してくれる。
[画像を見る]
photo by Pixabay
・20種の動物を適切な地域に再導入
今回の研究では、大型哺乳類を再導入するにあたってもっとも効果的な地域と、その方法が検討されている。
その結果、世界の生物多様性を回復させるには、わずか20種(肉食動物7種、草食動物13種)を再導入すればいいことが判明したのだ。
この研究では、世界の生態系の状態を評価するために、地球を「エコリージョン」ごとに分けて、そこに生息する現在の大型哺乳類と過去の個体数を比較した。
エコリージョンとは生物地理区より小さな生物地理学的地域のことで、陸地および水圏の比較的大きな地域を含み、地理的に異なった特徴的な生態系の集合体を含む。
その結果、大型哺乳類の個体数が500年前と同じレベルで保たれている地域は、わずか6%しかないことが判明。
全体としては、地表の16%に無傷の哺乳類群集が生息していることが明らかになった。
[画像を見る]
photo by Pixabay
さらに復元しやすいエコリージョンを調査したところ、アジア北部の大部分、カナダ北部、南アメリカとアフリカの一部ならば、大型哺乳類をほんの数種導入するだけで、生態系を元の状態に戻せるだろうことが判明した。
ヨーロッパでは、ヨーロッパビーバー、ヨーロッパバイソン、オオカミを再導入すれば、彼らがすでに失われてしまった35地域で、大型哺乳類の増加につながる。
アフリカなら、カバ、チーター、ライオンを導入することで、健全な哺乳類が生息する面積を2倍にすることができる。
それによる環境の変化は他の種にも恩恵を与えるために、そうした種が保全される結果にもなる。
たとえば20種の大型哺乳類のうち、再導入すれば最大級の効果があるだろうと期待されるのが「ダマガゼル」だ。サハラの固有種であるこの動物は、成獣200頭しか生きておらず、この種事態が絶滅危惧種である。
[画像を見る]
photo by iStock
・再導入の前に準備しなければならないこと
研究グループは、再導入を実施する前に、いくつもの準備が必要であることを認めている。
再導入以前に、そもそも彼らを危機に陥れた密猟や生息地の喪失といった要因を解決しなければならない。
またエコリージョンは国境を跨って広がっているので、国際的な協力も不可欠である。
今回の発見は、今年中国で開催される「国連生物多様性条約 第15回締約国会議(COP15)」における生物多様性保全へ向けた議論の材料となる。
UNEPのジョー・ゴスリング氏は、やるべきことはあるとしながらも、各国が協調して努力すれば行動は可能であると述べる。
私たちが推奨していることは、世界のどこでもすぐに実行に移せるというわけではありません。たとえば、狩猟の圧力や十分なエサが存在するかなど、地域ごとに評価を行う必要があります。References:Reintroducing large mammals could restore the world's ecosystems | Natural History Museum / written by hiroching / edited by parumo
それでも、緩和要因を管理すれば、大型哺乳類を回復させられる土地が世界にはまだまだ残されていることを示しています
今の10年はきわめて重要な期間で、これを国連は「国連生態系回復の10年」と定めました。
次の重要なステップは、国際社会や各国が大型哺乳類の回復を明示的な目標として掲げられるかどうか見守ることでしょう。
広範で効果的な自然の回復は、主要な保全団体と資金提供者によって支援された政府の協力があってこそ可能になります
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』