【史実と比較】「鎌倉殿の13人」北条時政、ぶん殴られて目を覚ます…?第9回「決戦前夜」振り返り

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【史実と比較】「鎌倉殿の13人」北条時政、ぶん殴られて目を覚ます…?第9回「決戦前夜」振り返り

三浦義澄「この世で一番みすぼらしいのは何か知っているか……しょげている爺いだ」

北条時政「次郎(義澄)。俺のほっぺた、思いっきりぶん殴ってくれ」

石橋山の敗戦で源頼朝(演:大泉洋)に八つ当たりを食らって以来、すっかりやる気をなくしてしまっていた北条時政(演:坂東彌十郎)。

息子・北条義時(演:小栗旬)の活躍を複雑な思いで見守る日々を送っていた時政がついに復活か……?

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」3月6日(日)放送の第9回「決戦前夜」はまさにそんな回となりました。

上洛を焦る頼朝、諫める時政…史実と比較

時政「佐殿は所領をお持ちにならねえんで分からねえんだ。坂東武者にとって何より大事なのは所領と一族。それを守るためなら死に物狂いで戦う。清盛が憎いからじゃねえ。己が所領がかかっているから戦うまで。その辺のところを、どうか考えてやってくだせえ」

治承4年(1180年)10月20日、富士川の合戦に勝利(と言うより、水鳥の羽音に驚いた平家の軍勢が勝手に逃走)し、これを追撃≒上洛の好機とはやる頼朝。それに対して、そろそろ所領に帰りたい御家人たちとで意見が対立します。

水鳥の羽音に驚き、逃げ出す平家の軍勢(対岸、左奥)歌川国芳「源平盛衰記 駿河国富士川合戦」

土肥実平「わしらは追討軍を追い返して終わりだと思っておった」

この年は飢饉で(第3回「挙兵は慎重に」参照)兵糧が底を尽きかけ、また8月の挙兵から2か月余り、ずっと戦い通しでみんな疲れています。しかも所領を空けることで不在の隙を狙う勢力も現れました。

上総介広常「……常陸の佐竹だ。昔から折り合いが悪くてな。俺がいないのをいいことに、また兵を出してきた……」

いくら攻めどきとは言っても、実際に戦ってくれる者がいなければ戦になりません。何とか頼朝を説得するよう、又しても役目を押しつけられた義時でしたが……。

時政「(真っ向から頼朝を見据える)戦で命を張るのはわしらなんだ!」

父上が腹をくくってくれました。いつも義時にばかり苦労をかけていられないとばかり、やる時はやってくれるのです。

ちなみにこの「一気に上洛したい頼朝をとどめる」シーン、『吾妻鏡』では上総介広常(演:佐藤浩市)、千葉介常胤(演:岡本信人)、三浦義澄(演:佐藤B作)の三者が説得しています。

特に広常は頼朝の京都志向に反感を示し、強硬に反対しました。

「ナンデウ(なんじょう)朝家(ちょうか)ノ事ヲノミ身グルシク思ゾ。タダ坂東ニカクテアランニ、誰カ引ハタラカサン」

※『愚管抄』より

【意訳】おい武衛、何だってそんなに上洛ばっかりしたがるんだよ。俺たちと坂東にいれば無敵だってのによぉ……。

木曾義仲主従の最期。勢力基盤を固めず、遮二無二上洛を焦った結果でもあった。楊洲周延筆

ここまで言われて、なおも上洛を強行した場合、頼朝はどうなっていたか……恐らく、この少し後に上洛を果たした木曾義仲(演:青木崇高)の末路が参考になるでしょう。

頼朝「時政、よう言うたな」

そう義時に打ち明けながら、誰も平家打倒の意志を理解してくれない寂しさをにじませた頼朝。

頼朝「とどのつまりは、わしは一人ということじゃ。流人の時も、今も」

そこへ現れた異母弟の源義経(演:菅田将暉)。泣きながら抱擁を交わした頼朝が、肉親との再会を喜んだのはきっと本心でしょう。

……というところでメインストーリーをまとめ、以下ほかのキャラクターたちもピックアップしていきましょう。

善児(演:梶原善)

善児「旦那様から固く申しつけられとるもんで。悪う思わんで下さい」

まるで蚊でもつぶすくらいの冷淡さで江間次郎(演:芹澤興人)を殺し、今まで仕えてきた八重姫さえも手にかけんとする仕事人・善児。

この薄気味悪さ、おどろおどろしさがたまりませんね。出来れば息絶えた江間次郎を蹴転がすくらいの残虐さを演出して欲しかったです。

危いところで三浦義村(演:山本耕史)が助けに入り、手傷を追って逃げた善児ですが、このままでは終わらないでしょう。

果たして三谷幸喜の脚本は、彼をどのように使うのでしょうか。

三浦義村(演:山本耕史)

義時「戦というのはつくづく難しいものだな」

義村「女と一緒だ。どう転ぶか見当もつかない。でも、そこが面白い」

前回の「平六~!(義時が義村に泣きつく)」に続き、義時の知恵袋として存在感を発揮する義村。

伊東祐親(演:浅野和之)と義時の対決を邪魔させまいと、和田義盛(演:横田栄司)と畠山重忠(演:中川大志)の行く手を塞ぎ

義村「あんなのでも、俺の身内なんでね(≒殺させはしない)」

と啖呵を切ったシーンにしびれたファンも多かったのではないでしょうか。

※ちなみに、祐親を捕らえるシーンについては史料に詳述がなく、これらのくだりは概ねフィクションと考えられます。

北条政子(演:小池栄子)

「厚かましい!」八重姫のワガママに憤る政子(イメージ)

政子「どこの世の中に夫の前のあれを、そうと分かってそばに置いておく妻がいますか!」

一度は三浦義澄の元へ預けられることとなった八重姫のワガママを聞き、頼朝の御所に仕える打診をした義時を一蹴。

そりゃそうです。どう考えたってトラブルの火種にしかなりません。筆者が義時の立場なら、八重姫を縛り上げてでも三浦の元へ叩き込むでしょう。

しかし一度受け入れるとなったら態度を豹変。

政子「色々ありましたが、これよりは共に佐殿を支えて参りましょう。それぞれの立場で」

もちろん芝居でしょうが、ここに政子の恐ろしさを感じてしまいます。果たして頼朝と(演:江口のりこ)との関係を知ったら、彼女は一体どんな顔になるのでしょうか。

武田信義(演:八嶋智人)

信義「これを見よ……(中略)……わしは橘遠茂(たちばなの とおもち)を討ち取った。駿河の目代じゃ……」

武士が壺とか桶とかを持ってきたら、その中身はたいてい首級……その法則は今回も順調に発動しました(ちょっと覗かせて欲しいですね)。

誰が源氏の棟梁か、頼朝と張り合う信義は抜け駆けを謀るも失敗。視聴者的にはちょっとスカッとしたでしょうか。

八嶋智人さんのイヤなヤツ演技は、それと解っていても胃の底がムラっとくる絶妙さですね。

上総介広常(演:佐藤浩市)

広常「総大将は誰がやるんだ……俺がやってやるよ……この間の鎌倉入りみてえな事じゃ困るんだよ」

義時「その節は、申し訳ありませんでした」

広常「見栄えが大事なら、俺だって身なり整えりゃ、それなりに見える……(腹周りをポンポンと叩く)……よろしくな」

前回、鎌倉入りの先陣を「若くて見栄えがするから」と畠山重忠に代わられてしまった広常は、そのことをまだ気にしていたようです。

頼朝の将器に惚れ込み(第7回)、頼朝と「武衛」の間柄になって(第8回)、広常は意識してかせずか頼朝のファンに。

すっかり歳は食っちまったが、俺だって負けちゃいない。武衛にいいところを見せてぇんだ……この「腹周りポンポン」が、中年男性として凄く共感できてしまいます。

広常のみならず、常胤と言い義澄と言い実平と言い義実と言い、頼朝まわりの年寄りたちは本当に可愛くてなりません。

3月13日(日)放送の第10回「根拠なき自信」

かくして富士川から凱旋した頼朝の前に、かつての強敵・大庭景親(演:國村隼)らが引き出されます。

「東国の御後見」と恐れられた平家政権(東国支配)の象徴であった景親が最期を迎え、広常を悩ませる佐竹討伐に乗り出す頼朝たち。

颯爽と飛び降りる義経。劇中でも櫓から跳んでいましたね(イメージ)

若き天才・義経はこれがデビュー戦、どんな活躍を見せるのでしょうか。

義経「戦に出たら誰にも負けません!」

実衣「得体の知れない人が、どんどん増えてく」

義村「俺がもらっても文句はないな」

頼朝「わしが2人を取り結んでやる」

義時「八重さんも、これからは幸せになってもらいたい」

※次回予告より

サブタイトルの「根拠なき自信」とは、恐らく義経の態度を指しているものと思われます。果たしてどんな展開となるのか……来週も目が離せませんね!

※参考文献:

『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月

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