恐怖は伝染する。友人が多いほど恐怖心が強くなることがお化け屋敷実験で明らかに
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お化け屋敷やホラー映画のような恐怖を感じる娯楽が好きな人がいる。これまでの研究で、人は退屈すぎず、怖過ぎない「適度な恐怖」を楽しく感じることが明らかになっている。
今回の研究もお化け屋敷を利用して行われた。「人は脅威を感じたとき、どのような社会的反応が起きるのか?」というもので、その結果を『Psychological cience』(2022年1月10日付)で報告している。
それによると、人は友人が多いほど恐怖心が強くなり、恐怖心は伝染することが明らかになったという。
・お化け屋敷は人間と恐怖の関係を調べる最高の実験場
なぜだか一部の人々は、ホラー映画やお化け屋敷が大好きだ。専門的にはそれを「娯楽的恐怖(recreational horror)」という。すなわち恐怖と楽しみが混ざった感情体験である。
だが、カリフォルニア工科大学のサラ・タシジアン氏らによる新しい研究の主なテーマは、娯楽的恐怖そのものではなく、さまざまな恐怖に対する人体の反応である。
お化け屋敷を利用して恐怖を調べたのは、タシジアン氏が初めてではない。『Why Horror Seduces』の著者マティアス・クラーゼン氏(オーフス大学)は、デンマークのお化け屋敷を利用して、恐怖心をコントロールする2種類の戦略について調査している。
お化け屋敷の顧客は、恐怖を心ゆくまで味わう人たち(アドレナリン・ジャンキー)と、恐怖を抑えようとする人たち(ホワイト・ナックラー)がいるという。
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・適度な恐怖が楽しみにつながる
彼の2020年の研究では、恐怖レベルがちょうどいい具合でなければ、恐怖と楽しさのバランスが取れないことが明らかなっている。
クラーゼン氏の仮説によると、ホラーという楽しみは、進化した恐怖系によるものなのだという。
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さらに2020年、フィンランドの研究者がvia%3Dihub" target="_blank" title="" rel="noopener"この仮説を裏付けるような研究を発表している。
この研究では、ホラー映画(『インシディアス』と『死霊館』)を見ている人の脳をMRIで検査して、「不気味な状況で感じられる忍び寄るような不吉な感覚」と「不意に怪物が出てきたときに感じる本能的なギョッとする反応」について調べた。
この結果、前者のケースでは、視覚・聴覚に関連する領域が活発化し、後者のケースでは、感情処理・脅威の評価・意思決定に関する領域が活発化することが観察された。
つまり、脅威に対してうまく対応するための反応であると推測できるのだ。
お化け屋敷はこうしたことを実験するには、うってつけの舞台だ。本当に恐怖が迫っているかのような没入感は、恐怖心を起こさせるには大切なポイントなのだ。
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・脅威を感じた時、人はどう反応するのか?
タシジアン氏の今回の研究は、クラーゼン氏のそれとは違ったコンセプトだ。
人はなぜお化け屋敷やホラー映画のような恐怖を感じる娯楽が好きなのか? これがクラーゼン氏らのテーマです。タシジアン氏らは交感神経の活動を調べるために、皮膚電気活動データを利用。更にクラーゼン氏同様、交感神経活動を調べるための心拍数も利用している。
私のテーマは、お化け屋敷などで身の危険を感じたとき、どのような社会的行動をとるのか? です。
もともとは動物のリスク希薄化行動に関する研究なのです。群れで行動する動物は、恐怖反応が減ります。同じことが人間でも言えるのでしょうか?
これらを組み合わせれば、どちらか片方だけのときよりも、恐怖誘引によるストレス関連生理反応をより深く理解できるでしょう。どちらの研究も、客観的な生理学的指標と自己申告による主観的な恐怖とを組み合わせ、自己申告された恐怖体験は比較的正確であることを示している。
「潜在的脅威に対する交感神経系反応を左右する文脈的・内因的要因を特定するべきだという意見が多くなってきています。私たちの研究は、これに応えるためのものです」とタシジアン氏は言う。
脅威への反応を理解することは、社会学と臨床学どちらにも関連することです。たとえば、不安とは、安全に対する脅威の抑制障害であることも、知覚上は脅威に似ているが、それ自体は安全な刺激への一般的脅威反応であることもあります。
私たちの研究では、こうしたプロセスを悪化させる可能性がある文脈的要因(例:集団である、予期せぬ恐怖)の特定を試みています
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・友人が多いほど恐怖心が強くなる
タシジアン氏が研究に利用した「17番目のドア」というお化け屋敷は、その名称から想像できるように、17の部屋で構成されており、それぞれに異なる仕掛けが用意されている。
お化け屋敷にはポーラという主人公が登場する。息子を殺した罪で服役中の女性で、贖罪のために虐待してくる看守やその手下と戦う。およそ30分間で終わるホラーアトラクションだ。
お化け屋敷のゲストはグループになり、スタッフによって各部屋を案内されながら、大きな音とともに突然何かが出てきたりと、さまざまな恐怖や脅威体験をする(中には俳優が”ゲスト”と会話する珍しいタイプの趣向もある)。
そうした体験の中には、大学の研究室などでは倫理上許されないような脅威や苦痛を感じさせるものもある。
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The 17th Door 2019 Haunted House Trailer
2019年、タシジアン氏らは17番目のドアのゲストから156人の実験参加者を募集した(なお、自主的にお化け屋敷に立ち寄った人たちなので、娯楽的恐怖を感じている可能性が高い)。
参加者は入場料を払い、諸事項への同意書にサインし、お化け屋敷で感じるであろう恐怖をアンケートに記入する。
それから8~10人のグループになってお化け屋敷に入る。グループは知り合いだけでなく、赤の他人と一緒になることもあった。
またお化け屋敷のスタッフは、どのグループに実験参加者が混ざっているのか知らされなかった。お化け屋敷終了後、参加者は実際に感じた恐怖を回答する。
この結果、恐怖反応を左右するのは、「友人の感情の伝染」「主観的な恐怖感」「恐怖の予測性」であることがわかった。
たとえば、まったく予想外の恐怖ほど、より大きな反応が返ってくる。中でも最後の脱獄では、最大級の恐怖反応が見られたという。
「この結果から、これが注目すべき研究であることがわかります。反応の速度・頻度・度合いなど、複数の皮膚コンダクタンス(伝導性)を計測したからです」とタシジアン氏は説明する。
「ほとんどの研究は、そのうちの1つしか調べておらず、そのせいで交感神経系のダイナミズムや体に影響する各種ファクターなどの理解は限定的なものでした」・恐怖は伝染する
注目すべきは、「グループ内にいる友人の人数」と「ストレス・恐怖反応」とに正の相関があったことだ。
グループ内に友人が多いほど、脅かされたときの反応が大きくなったのだ。これは友人から恐怖が伝染したからだと考えられている。友人の行動から何かを察して、恐怖反応が増幅されたのだ。
「友人が多いほど皮膚コンダクタンスが高まるという結果は、意外に思われるでしょう。これはリスク希薄化仮説とは矛盾します」とタシジアン氏。
リスクが希薄化されれば、恐怖反応は弱まるはずです。周囲に仲間がいれば、攻撃される可能性が下がりますから。タシジアン氏は次の研究テーマについて、「社会的文脈が恐怖に与える影響を調べるため、没入感ある脅威という文脈を引き続き利用したいです」と語る。
しかし集団には、他人を通じて、自分では確認できていない危険に気づかせるという機能もあります。
あなたが集団の中にいるとしましょう。その中の誰かが危険に気づいて逃げ出したとします。たとえあなたがその危険に気づいていなくても、おそらくあなたも逃げることでしょう。
その集団に知り合いが多ければ、より彼らの反応に影響されやすくなります。
このように恐怖もまた伝染するのかもしれません。しかしこうした社会的効果が生理や感情などに与える影響を知るには、自然な環境での研究がもっと必要です
References:Haunted house study sheds light on how human body responds to threats | Ars Technica / written by hiroching / edited by parumo
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