時を戻そう。皮膚細胞を30歳若返らせることに成功、53歳の肌が23歳に

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時を戻そう。皮膚細胞を30歳若返らせることに成功、53歳の肌が23歳に
時を戻そう。皮膚細胞を30歳若返らせることに成功、53歳の肌が23歳に

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 英国の研究者が、53歳女性の「皮膚細胞」を30年巻き戻し、23歳にまで若返らせることに成功したそうだ。

 イギリス、バブラハム研究所のグループは、皮膚細胞だけでなく、他の部位も若返らせることが可能だと考えている。

 最終的な目標は、糖尿病・心臓病・神経疾患といった老化にともなう病気の治療法を考案することであるそうだ。

・クローン羊「ドリー」から始まった若返り法
 今回の若返り法は、あのクローン技術から始まった。1990年代、ロスリン研究所では羊から採取した乳腺細胞を胚に変える方法が研究されていた。やがて生まれてきたのが、哺乳類としては世界初のクローン「ドリー」だ。

 だが、この研究の本来の目的は、羊のクローンを作ることではなく、人間の「胚性幹細胞(ES細胞)」を作ることだった。

 これを筋肉・軟骨・神経細胞といった特定の組織に成長させれば、古くなったものと交換することだってできるに違いない。

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image credit:Toni Barros / WIKI commons

・iPS細胞の開発で技術が進む
 ドリーのクローン技術は、2006年に京都大学の山中伸弥教授が「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を開発したことで、よりシンプルなものになった。

 山中教授の方法では、成熟した細胞を50日間、化学物質に浸す。すると遺伝子が変化して、成体細胞が幹細胞に変化するのだ。

 クローン技術でもiPS細胞でも、作られた幹細胞を再び成長させて、必要な細胞にすれば、病気の治療にも使えるはずだ。ところが、これが思いのほか難しく、それから数十年がたった今も、幹細胞による治療は大きく限られている。

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photo by iStock

・iPS細胞技術を応用したら皮膚細胞が30歳若返る
 この研究を行った、バブラハム研究所のウォルフ・ライク教授ら研究チームは、53歳の女性から採取した皮膚細胞にiPS細胞技術を応用してみた。ただし、本来、細胞を化学物質に50日間漬けるところを12日に短縮したみたのだ。

 すると驚いたことに、細胞はiPS細胞になるかわりに、30歳も若返ったのである。見た目も、振る舞いも23歳の皮膚細胞そのものだった。

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Fibroblast Cells Migration as Part of a Wound Healing Assay・ただし実用化するには克服すべき問題点も
 ただしライク教授は、『https://elifesciences.org/articles/71624』(2022年4月8日付)に掲載された研究がまだごく初期段階にあることを強調する。

 医療として実用化されるまでには、克服せねばならない問題がいくつかある。iPS細胞法が、がんのリスクを高める可能性もあるからだ。

 それでも、細胞の若返りが可能であると実証できたことは大きな前進で、ライク教授は、いずれはもっと安全な方法が見つかるだろうと確信している。

 「長期的な目標は、いつまでも健康で生きられるよう、人間の健康寿命を延ばすことです」とライク教授は話す。

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最初の画像は若い線維芽細胞、2枚は10日後、右は治療あり、最後の2枚は13日後、右は治療あり。赤色は、回復したコラーゲン産生を示す / image credit:Fatima Santos, Babraham Institute・まずは高齢者の傷口の治癒スピードをあげる
 ライク教授によれば、まず実現可能である最初の応用法として、高齢者の傷口の皮膚を若返らせ、治癒をスピードアップさせることが考えられるという。今回の研究では、若返った皮膚細胞は素早く動けるようになることが確認されている。

 次のステップは、この若返り技術が、筋肉・肝臓・血液細胞といった他の組織にも有効かどうか確かめることであるという。

 バイオテクノロジー・生物化学研究評議会のメラニー・ウェルハム教授は、iPS細胞の医療への応用は長い間停滞していたが、それが実現するのもそう遠いことではないと、BBCニュースに対し語っている。

 「同様のアプローチや新療法が、歳をとると働きが衰える免疫細胞を若返らせるなら、高齢者のワクチンの効果を高めたり、感染症への抵抗力を向上させたりできるかもしれません」

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Photo by Diana Polekhina on Unsplash

・究極のアンチエイジング薬となるか?
 そして何より気になるのは、この方法が発展した暁には、全身の若返りが可能になるのかどうかだろう。

 ライク教授によれば、若返りの霊薬は、まったく突飛な話ではないとのことだ。

 「遺伝子改変マウスでこの技術を試したところ、実際に若返ったことを示すサインが確認されています。ある研究では、膵臓が若返ったらしきことが観察されています。新しい糖尿病治療の可能性として興味深いものです」

 一方、ロンドンのクリック研究所のロビン・ロヴェル=バッジ教授は、実用化までに克服すべきハードルは、たとえ最も単純な応用であってもかなり高いだろうと考えている。

 また他の組織への応用や、全身の若返り薬も容易ではないだろうとのことだ。

 「同じことをしてくれる別の化学物質が見つかっても、いいものにも悪いものにもなります。ですから、そうした化学物質が簡単に見つかるとの想定は野心的すぎるでしょうし、その方が安全でしょう」

 細胞の種類が違うだけで制御の条件が違うということも、十分ありえるとのこと。ましてや、それを全身で安全に行うなど、今日明日にできるようなことではなさそうだ。

References:Multi-omic rejuvenation of human cells by maturation phase transient reprogramming | eLife / “Time Jump” by 30 Years: Old Skins Cells Reprogrammed To Regain Youthful Function / written by hiroching / edited by / parumo


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