NHK大河『鎌倉殿の13人』殺陣師・辻井啓伺が語る小栗旬、山田孝之、木村拓哉、坂東彌十郎ら「俳優の真のすごさ」

日刊大衆

辻井啓伺(撮影・弦巻勝)
辻井啓伺(撮影・弦巻勝)

 殺陣師、スタントコーディネーター、アクション監督……と、さまざまな呼ばれ方をしますが、僕の主な仕事は、映像作品において、闘ったり殴ったり蹴ったりするシーンの“動き”をつけることです。

 時代劇の場合は、刀や弓、槍などを使った立ち回りと、馬術指導がメインとなりますし、現代モノはケンカなどの場面はもちろんのこと、役者さんが転ぶシーンでも現場に行くことがあります。

 要するに、カッコよく迫力のあるアクションシーンを、安全かつスムーズに撮影するために、そのすべてを請け負う職業というわけです。

 演じる俳優さんは、刀で何かを斬った経験はおろか、殴り合いだってほとんどの人がしたことがありません。ですから、初めてアクションをする俳優さんの場合には、まず立ち方からしっかりサポートします。そして、その俳優さんの身体能力やスキルを見ながら“ここまではできる”“これ以上は危険だ”と、つど判断しながら、監督の作りたい映像に近づけていきます。

 今は、現在放送されているNHK大河ドラマ鎌倉殿の13人』に「殺陣武術指導」として参加しています。

 主人公の北条義時を演じている小栗旬くんとは、ドラマ『花より男子』で出会い、その後、ヤンキー映画の『クローズZERO』でもガッツリ一緒に仕事をしています。

 この作品で敵対する相手役だったのが、山田孝之くん。こちらは当時、アクション初挑戦でしたね。

 二人とは練習から一緒に体を動かしていましたが、彼らはものすごい勢いで成長していく。そのスピードに驚くと同時に、さらに彼らは、自分がどう動けばどんなふうに映るのか、ちゃんと分かっているんです。本当にすごいと思いましたね。

■持っているモノが違うとしか言いようがない

 そういう意味では、映画『無限の住人』で不老不死の用心棒を演じた木村拓哉さんも、とてつもなかった。

 このサイズでこのアングルだったら、この構え……というのが自然にできちゃう。しかも、刀の切っ先までキッチリ画角におさまっていて、それがまた最高に決まるんです。

 現場では初めての時代劇出演だった福士蒼汰くんや満島真之介くんをグイグイ引っぱっていて、これがスターというものかと恐れ入りました。

 やっぱり、第一線でやっている俳優さんは皆さん、すごいですよ。『鎌倉殿の13人』には、歌舞伎や舞台で活躍されている方々がたくさん出演されていますが、お芝居が上手な人は、殺陣もうまい。

 ドラマや映画での殺陣って“形”だけじゃなくて、演じながら“感情”で斬るわけです。僕らは、基本の動きは教えられますけど、その先は俳優さんの力なんです。

 北条時政役の坂東彌十郎さんは歌舞伎界の大ベテラン。「映像は不慣れなので……」とおっしゃるんですが、もう立っているだけですごい! 敵を叩き斬るときなんて“これ、NHKで放送しちゃっていいの!?”と思うくらいの迫力です。

 そんな人たちと出会うたびに思うんです。“僕は、殺陣はできるけど、スター俳優にはなれないな”って。殺陣がうまいとか、下手とかじゃなくて、持っているモノが違うとしか言いようがない。

 僕は、18歳でジャパン・アクション・クラブに入団し、ずっとこの世界に身を置いてきました。

 最近はCGやワイヤーアクションが入ってきて、アクション表現の幅が広がった。ただ、プラスアルファという意味ではいいのですが、僕は“継承”ということも大事にしたい。

 アクションをやる若手はいるけど、時代殺陣ができる人材はどんどん減っています。だから、僕が育てていきたいんです。

 変わらなくてはならない部分と、変わらない部分とがあると思います。僕はその変わらない部分を、これまでもこれからも、ただただ愚直に、やっていきたいと思っています。

辻井啓伺(つじい・けいじ)
1963年生まれ。ジャパン・アクション・クラブを経て、数多くの映画、ドラマで殺陣・アクションの指導を行う。スタントチーム・ゴクゥのメンバー。携わった主な作品は、映画『十三人の刺客』『土竜の唄』、ドラマ『精霊の守り人』シリーズ(NHK)、『信長協奏曲』(フジテレビ系)、『半沢直樹』(TBS系)など多数。

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