こけしは「子消し」という恐ろしい説は間違いだった…!? なぜ流布したのか、俗説を検証

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こけしは「子消し」という恐ろしい説は間違いだった…!? なぜ流布したのか、俗説を検証

最近、親から伝えられた知識がことごとく間違っていた可能性が出てきて、自分の常識を疑っている筆者です。

たとえば、「つまようじのくびれは折って箸置きのようにするためのようじ置き」とか、「銀ブラの『ブラ』は、銀座でブラジルコーヒーのブラ」とか。これで「えっ」と思った方は同世代の可能性があるかもしれませんね。

これらはある時期に流布されたとはいえ、絶対的根拠のないものばかり。※ただし銀ブラの説は可能性が低いだけで、完全に否定されたものではありません。

そのなかで、「こけし」は『子消し』の意味で、水子供養のために作られたもの」という説があります。

私は子供の時にそれを聞いてから、土産物屋でこけしが並んでいるのをみると、怖くなってしまいました。で、実はその説はなんと誤りだと最近知りました。私の恐怖は一体何だったのか…。

「子消し」説はどこから生まれたのか

・「堕胎した子供の供養」
・「亡くなってしまった子供の代わり」
・「口減らしした子供の数」
などなど、こけしには怖い俗説がありますね。この説の由来は、松永伍一氏が記した1971年に発刊された「こけし幻想行」というエッセイ集から始まったと言われています。そこでは「赤ちゃん」の意味をもつ「きぼこ」は間引きした子供のことなのではないかと書いています。

「子消し」の罪つぐないのために、幻のわが児を「木ぼこ」すなわちこけしに形どって、棚にかざったのではあるまいか。(松永伍一こけし幻想行第三巻より引用)

これがテレビにも取り上げられるなどして流布されて、定説のようになってしまったとか。

こけしの発祥は?

こけしの呼び方の起源は諸説あり、

・山に入る際に山の神が忌み嫌う人数をさけるために携行した「さんすけさま」とよぶ人形から誕生した説
・田畑の神回顧の神として崇められるおしらさま信仰から生まれた説
・子供の健康を願って作った「ほうこ人形」説
・単に子供のおもちゃとして作った説

こけしを作る木工職人(フォトACより)

などさまざまです。

発祥は、東北地方・現在の山形県など蔵王連峰の「木地師」たちが手掛けたのが始まりとのこと。木地師とは山中に住み、お椀やお盆、茶たくなどを作り生業としていた木工職人のことです。

江戸時代に温泉地で保養する湯治が流行ると、それらの地でお土産物として多く作られます。それが全国で広まり、各地で独自の進化と形態を遂げたとのことです。

確かに民話や昔話で、恐ろしいこけしの話は記憶にありません。柳田邦男の『遠野物語』などにもこけしの話は見当たりませんでした…。

幕末期の記録「髙橋長蔵文書」(1862年)によると、「こふけし」(こうけし=子授けし)と記されており、子供が授かる祈願やまたは子供の健康を願うお祝い人形だとのこと。「子消し」とまったく意味が反対ですね!

いまその独特のフォルムで再び人気を集めているこけし。
木の持つ暖かな雰囲気が可愛いですよね。と初めて感じることができた筆者です。

参考:岳人(2021年11月号)、日本こけし館

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