気楽さの代償…テレワークで労働者が失ったもの (2/2ページ)

新刊JP

私たちは意識的にか無意識にか、自分の能力や個性を知りたいと願い、周囲からの評価や集団の中の位置づけを知りたいと願っている。他人から自分に向けた言葉や仕草、目つきを「鏡」のようにして自分を知る機会は、テレワークではどうしても少なくなる。テレワークが続いてメンタルが不安定になるのは、こうした他者からの承認の欠乏が原因になっている可能性がある。

■「ドキドキもしない代わりに、ワクワクもしない」

もちろん、テレワークには働く人のメンタルに良い影響を及ぼす性質もある。

スーツに着替える必要もないし、打ち合わせがなければ髪を整えたり化粧をする必要もない。相手から見えるのはパソコンのモニターに映る部分だけだから、会社に行っていた時のように気を張らなくてもいい。この気楽さはテレワークのいい点だろう。対面ほどプレッシャーを感じないため、普段あまり発言しない人がリモート会議では萎縮せずに意見を言うようになったという事例もある。

ただこの「気楽さ」もまた、テレワークで承認欲求を満たしにくいことと関係する。本書では両者を「表裏一体」の関係だと評している。

そもそも緊張感やストレスはある面で承認欲求と深く関わっていて、緊張感やストレスを感じない環境では承認欲求も十分に満たされないのが普通だ。ドキドキしないかわりにワクワクもしないのである。(P39より)

大事な会議に向かう時のドキドキ感も、大勢の目に晒されながらのプレゼンテーションで感じた手が震えるような緊張も、かつて普通に行っていた時は嫌だったプレッシャーのかかる時間が、実は仕事で承認欲求を満たすために欠かせないものだったのだ。緊張やストレスがあるからこそ達成感や充実感も大きいという、当たり前のことに気づかせてくれたのがテレワークであり、コロナ禍だったのだろう。

本来、テレワークは業務効率化や組織生産性の向上のために有益なものだが、テレワークではどうしても補えない部分もやはりある。特に、会社に行っていた時に無意識に得ていた「無形の報酬=会社生活の隅々から得ていた他者からの承認」をどうするか。組織側がテレワークを上手に取り入れるためには、この課題に取り組む必要がある。

テレワークを導入したはいいものの、従業員からの評判が悪くない会社はもちろん、長引くテレワークで心身の調子が良くない人も、本書から気づきを得られるのではないか。

(新刊JP編集部)

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