「鎌倉殿の13人」北条と比企の対立、謀叛に利用される曽我兄弟の仇討ち…第22回「義時の生きる道」振り返り

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「鎌倉殿の13人」北条と比企の対立、謀叛に利用される曽我兄弟の仇討ち…第22回「義時の生きる道」振り返り

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん、遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動(ゆる)がるれ。

【意訳】遊ぶために生まれてきた。戯れるために生まれてきた。子供が遊ぶ声を聞くと、もうゾクゾクしてしまう。

※後白河法皇 編『梁塵秘抄』より

「守り抜かれよ……楽しまれよ……」

後鳥羽天皇(演:菊井りひと)にそう言い残して崩御された後白河法皇(演:西田敏行)。

源頼朝(演:大泉洋)からは「日本一の大天狗」と呼ばれた法皇でしたが、当人としてみればただ無邪気に遊んでいただけだったのかも知れませんね。

後白河法皇御影。藤原為信筆

さて、征夷大将軍となってもはや日本国に敵はなく、朝廷との協力体制を築いた頼朝。

しかし御家人たちの間には謀叛の気配がただよい、愛妻を喪った哀しみに沈む北条義時(演:小栗旬)は鎌倉の危機を救うべく動き出すのでした。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第22回放送のサブタイトルは「義時の生きる道」。その意味は「子供たちの世話よりも、鎌倉殿の御為に奉公すべし」と言ったところでしょうか。

梶原景時(演:中村獅童)から謀叛に父・北条時政(演:坂東彌十郎)がからんでいることを聞かされた義時。果たして、どのような展開になるのか楽しみですね。

その前に、今週の振り返りをしていきましょう。

子供たちの世話に追われる義時、久しぶりに姉弟の時間

亡き八重(演:新垣結衣)が預かっていた孤児たちの世話をすることで、悲しみを紛らわそうと奔走する義時。烏帽子まで脱げちゃってもうてんやわんや。

子育てに翻弄される義時(イメージ)

「やればできる!」笑顔で子供たちを励ましていた仁田忠常(演:高岸宏行)でさえ、投げ出してしまう始末……そこへやって来たのが下女に扮した政子(演:小池栄子)。

子供たちの世話をしていると、自分の子供時代を思い出す……何かにつけて弟の首を絞めていたという政子。理由はわかりませんが、何だかその情景が目に浮かびます。

昔の着物を引っ張り出してくるくる回って見せる政子、御台所の堅苦しいご身分よりも、こっちの方が楽しそうで何よりです。

以前に「我らはもう、かつての我らではない」と言った義時でしたが、やはり家族同士は気楽が一番というもの。

少し気が楽になったのか、孤児たちは引き取り手を捜して金剛(演:森優理斗)の教育と御家人としての使命に専念していく道に復帰しつつあります。

鶴丸(演:佐藤遥灯)との友情、そして弥九郎(演:渡部澪音)との仲直りなど、金剛の成長が楽しみですね。

比企と北条の対立、たらい回しにされる比奈

建久3年(1192年)8月9日、政子の次男となる千幡(源実朝)が誕生。その乳母父として阿野全成(演:新納慎也)と実衣(演:宮澤エマ)夫婦が選ばれますが、全成は何だか不満顔。

「(乳母父となることが吉と出たが)私の占いが半々しか当たらないのは知っているだろう!」

一度くらいは祈祷を成功させたい全成(イメージ)

それって占いの意味がないんじゃ……祈祷にいたっては効果のあった例しがない、とまでは言わなかった実衣さんは偉いです。

冗談はさておき、千幡の誕生によって相対的に嫡男の地位がゆらぐ長男の万寿(源頼家)。その乳母父である比企能員(演:佐藤二朗)と(演:堀内敬子)との確執が深まってしまいます。

比企の地位をより安泰にするため、能員は姪っ子の比奈(演:堀田真由。姫の前)を頼朝の側室にあてがおうとしますが、政子に阻まれて失敗。

義時の後妻にしようと思っていたんだ……頼朝は何とか切り抜けたものの、義時にとりあえずその気はない様子。たらい回しにされて、ちょっと気の毒ですね。

『吾妻鏡』などでは義時が一目惚れ、フラれてもフラれてもしつこくアプローチを続けた結果、頼朝の仲立ちで正室に迎える姫の前。

いずれ結婚するのでしょうが、果たして彼女と義時は北条と比企の架け橋となれるのでしょうか。

御家人たちの謀叛再び

鎌倉殿は文官ばかりを重んじて、武士たちを軽んじている。そんな不満がそこかしこで見られていました。

それを察して御家人たちの酒席に加わる大江広元(演:栗原英雄)、都落ちとバカにしていた京童たちを見返せた……と上手く取り入る様子は流石です。

さて、義時たちとは別に集まっているのは……以前も謀叛を企んだ老将たち。

岡崎義実(演:たかお鷹)、三浦義澄(演:佐藤B作)、千葉介常胤(演:岡本信人)、土肥実平(演:阿南健治)……らの愚痴を聞いている蒲殿こと源範頼(演:迫田孝也)と比企能員。

今回メインで息巻いていたのは義実と義澄。常胤は先週に引き続き、酔っ払って「九郎殿は強かった……」と寝言を洩らすばかり、実平は前回で懲りた様子がうかがえました。

頼朝の取り巻きは文官ばかりが取り立てられる(イメージ)

戦いはもちろん、上洛するにもカネがかかる。なのにいくら頑張っても所領は増えないし報われもしない……そんな不満を、範頼は懸命になだめます。

しかし義実は源平合戦の序盤で第一線を退き(奥州征伐には従軍)、義澄は建久元年(1190年)の上洛に際して右兵衛尉の官職を授かった時、これを「若い者にやる気を出させよう」と三浦義村(演:山本耕史)に譲りました。

後から文句を垂れるくらいなら、いいカッコしなさんなと思ってしまいます。かつて敵対していた畠山重忠(演:中川大志)を赦すなど人格者として名高い義澄の口からつまらない不満を聞くのは、非常に残念でなりません。

ちなみに『吾妻鏡』だと義実は建久4年(1193年)8月24日に宿老の大庭平太景義(おおば へいたかげよし。大庭景親の兄)と共に出家。

そこには「特に理由はないが、年老いたため予ての念願を遂げるため(雖無殊所存。各依年齢之衰老。蒙御免。遂素懷畢云々)」とあります。

しかしあえて「特に理由はない」などと書いているのは不自然であり、実は富士の巻狩り(曽我兄弟の仇討ち)で何らかの策謀を企んでいたとも言われます。大河ドラマではその説を採ったのでしょう。

それにしても酔っ払ってくだを巻く常胤、いいカッコして後から文句を垂れる義澄、そして謀叛で晩節を穢してしまう義実……ドラマの演出としても、彼らに対するフォローもいただけると、ファンとしては嬉しいです。

曽我兄弟の仇討ち、時政は勧めていたけど……

かつて工藤祐経(演:坪倉由幸)に石を投げていた二人の少年、彼らは元服して曽我十郎祐成(演:田邊和也)、曽我五郎時致(演:田中俊介)と改名。

祐経に殺された父・河津祐泰(演:山口祥行)の仇討ちを打ち明けられ、大いに賛同していた時政とりく(演:宮沢りえ)でしたが、こういう場合ってどうなんでしょう。

父の仇討ち時代は親孝行として賞賛されたかも知れませんが、頼朝のお気に入りである祐経を許しなく討つのは悪手ではないでしょうか。

これが頼朝亡き後に御家人同士が殺し合いを始めた混沌の時代ならともかく、頼朝が健在である前提なら、許可なき仇討ちは間違いなく謀叛に当たります。

秀湖「曽我兄弟復讐之図 曽我十郎祐成 曽我五郎時致」

頼朝まで討つ気でいるとか否は関係なく、曽我兄弟が仇討ちを決行した後、五郎の烏帽子親である時政も無事(知らなかった)ではすみません。

『曽我物語』では母親が仇討ちを諦めるよう諭しており、時政もこの場面に接したら(仇討ちを知っていたら)少なくとも頼朝に祐経の非道≒仇討ちの許可を訴え出るワンクッションはおくのではないでしょうか。

とにかく殺っちまえ、後は野となれ山となれ……という態度は、鎌倉武士団の中枢に位置する北条氏の棟梁にあるまじき軽挙。

物語としては面白くなるのでしょうが、比企につけいる隙を与え、仇討ち≒謀叛を未然に阻止するチャンスを逸してしまったようです。

富士の巻狩り、そして仇討ち……第23回放送「狩りと獲物」

先週からの八重ロスに苦しむ視聴者たちの箸休め的なホームドラマ展開が多めだった第22回。

次週は金剛が元服して北条頼時(演:坂口健太郎。泰時)となり、万寿も元服して源頼家(演:金子大地)に。少しずつ、世代交代が始まりつつあるのを感じます。

富士の巻狩り。大猪と格闘する仁田忠常。ほかドラマで登場する御家人の姿も。歌川国久「源頼朝公富士裾野牧狩之図」

雄大な富士の裾野を舞台に繰り広げられる狩猟の描写、そして曽我兄弟の仇討ちはどのようなアレンジが加えられるのでしょうか。

ただ「十郎は討死、五郎は生け捕られて処刑」ではないでしょう。次回予告から頼朝の死(誤報)が告げられ、鎌倉が大混乱に陥ることは想像に難くありません。

そして動揺する政子たちを「鎌倉はそれがしがお守りします」と励ました範頼に謀叛の容疑がかかる……これまで好感度が高まり続けてきただけに、心配ですね。

果たして頼朝の運命やいかに……コラそこ「やっちまえ」とか言わない!

日本三大仇討ちの一つ「曽我兄弟の仇討ち」父の復讐に生きた兄弟の結末は…【鎌倉殿の13人】

※参考文献:

伊藤邦彦『「建久四年曾我事件」と初期鎌倉幕府 曾我物語は何を伝えようとしたか』岩田書院、2018年7月 坂井孝一『物語の舞台を歩く 曽我物語』山川出版社、2005年2月 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』NHK出版、2022年6月

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