横柄な客やクレーマーをどうする? 商売繁盛に欠かせない「客を捨てる勇気」 (3/3ページ)
中谷:そうですね。うちも立地がいいわけではないです。昔は店舗経営は立地が勝負みたいなところがあったんですけど、今はどんな立地でも個性の出し方で勝負できると思います。
――本書で指摘されているように、多くのお店が常連客よりも初回客を大事にし、彼らを常連客に育てようとします。これはどういう心理からの行動なのでしょうか。
中谷:例えばトレンドを「流行」や「現象」として捉えると、基本的に人間というのは“飽きる動物”です。だからいつか飽きられれば捨てられるという恐怖がお店側の心理としてはあるんですよね。ゆえに無駄に奇をてらったり、新しいお客を集め続けることでその不安を埋めようとするわけです。
ところが実際にはトレンドの根底に息づくのは「流行」でも「現象」でもなく「文化」ですから、多くは取り越し苦労なんです。例えばジーンズの色やデザインに飽きたとしてもデニムそのものに飽きたわけじゃないし、パエリアやドリアに飽きたとしてもお米そのものに飽きたわけではないわけです。
ましてや毎年新しいトレンドを追っかける先行的な人たちというのは、実をいうとかなりの少数派です。特に日本人の多くは大きな変化を嫌う保守的な人たち。いつもの居酒屋のいつもの席でいつものメニューを注文するルーティンに安らぎを感じている人だって結構いるはずです。リーバイスの501だけを繰り返し履き続ける人、晩酌のビールはキリンラガーオンリーと決めている人、同じ銘柄のお米やお味噌、同じブランドの服を一生涯愛し続ける人だっています。
要するに僕たちお店側は、こうした常連の人たちを裏切らない努力のほうに目を向けながら、自店の「文化」を育んでいくことの方が大切だと思うんですよね。
――すごく合理的で、納得できるご説明ですが、これから開店していくお店がいきなりそれをやるのはかなり勇気がいるんじゃないかなとも思いました。
中谷:苦手なことを無理にやる必要はありません。自分が得意なものを打ち出して、そこに合ったお客様だけ集めていくのが、結果としてお店を繁盛させる一番の近道だとは思いますね。
たとえばラーメン屋さんであれば、あっさりもこってりも両方作る必要はなくて、自分がこってりが好きなら、そっちを作ればいいんです。オーナー自らが理想とする味に共感するお客さんが集まってくるお店の方が、少なくともやりやすいと思いますよ。
(後編につづく)