永瀬正敏インタビュー「樹木希林さんが教えてくれたこと」「オファーを受けるのは、台本を読んでいて途中下車しなかった作品」 (2/2ページ)

日刊大衆

原田美枝子さんは、僕が宮崎の中学生の頃から、なんてステキな人なんだろうと憧れていた

 僕が演じたのは、認知症を患って記憶を失っていく百合子という女性が、かつて愛した浅葉という男です。

 作品では、認知症という病によって彼女の記憶が薄れていくわけですが、病気じゃなくても多かれ少なかれ、こういうことってあるような気がします。親から「あなたが子どもの頃、こんなことがあった」と聞いたエピソードが、いつの間にか自分の記憶になってしまっていたり……。記憶というものの不安定さ、あいまいさを、改めて考えさせられました。

 百合子を演じた原田美枝子さんは、僕が宮崎の中学生の頃から、なんてステキな人なんだろうと憧れていた方です。自分が俳優の仕事をするようになってからも、好きな作品に出演されていることが多かったり、まだ俳優がプロデュースや監督をするのが珍しかった時代に、自ら原案、脚本、製作、そして主演もされて映画を作られたりと、さまざまな意味で尊敬していました。

 あと、僕は原田さんが日本一……いや世界一、キスシーンが色っぽい女優さんだと思ってるんですよ(笑)。今回もいい作品で、素晴らしい出会いができたと思っています。

 僕は56歳になりました。世間的にはいい大人なんですが、実年齢と精神年齢の差はズレていくばかり。若い頃のイメージだと、もっとちゃんとした大人になっているはずだったのに、全然ちゃんとしていない(笑)。

 でも、せっかく“映画”という大好きな世界にいるのだから、この先もずっと関わっていたいと願っています。

 映画の魅力は、多くの言葉で語らなくても、映像で心情を伝えられることだと思っています。すごく引きの画で後ろ姿を見せているだけなのに、寂しさが表現できる。雨が降る様を見せることで、悲しみが伝わる。

 それが、僕の大好きな「映画」という世界なんですよね。

永瀬正敏(ながせ・まさとし)
1966年7月15日生まれ。宮崎県出身。1983年、相米慎二監督の映画『ションベン・ライダー』で俳優デビュー。1989年にジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』出演で注目を集め、1991年には『息子』で日本アカデミー賞最優秀男優賞と新人俳優賞を受賞。主な出演作は、映画『誘拐』『パターソン』『私立探偵濱マイク』シリーズ、『ホテルアイリス』など。

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