日本人は表現下手…じゃない。日本の愛情表現の歴史や込められた意味あれこれ【前編】

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日本人は表現下手…じゃない。日本の愛情表現の歴史や込められた意味あれこれ【前編】

よく「日本人はシャイで愛情表現が苦手……」と言われることがありますが、みなさんは、どう思いますか?

実は、日本では古くからさまざまな愛情表現がなされてきました。ぱっと見ではよくわからなくても、意味に気が付けば彼らの表現力に驚くはずです。

そこで、今回の記事では、文学の歴史を紐解きながら、日本人の愛情表現についてご紹介したいと思います。

古代は歌で想いを表現

7世紀後半から8世紀後半にかけて、奈良時代末期に編纂されたとみられ、現存する日本最古の和歌集である「万葉集」。約4500の歌が収められているこの万葉集にも、恋愛にまつわるものがいくつもあります。

たとえば、万葉集の代表歌人・柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)は、次のような歌を残しています。

「石見のや高角山の木の間よりわが振る袖を妹みつらむか」

意味:石見国にある高角山に生えている木の間から、私が心を込めて振る袖をあの人(彼女)は見ただろうか

これは、柿本人麻呂が妻を亡くしたときに詠んだ歌です。「振る袖」は「魂振り(たまふり)」という行為で、旅の安寧を祈るために自宅で待つ妻の魂を呼び寄せるものだと言われています。

この歌の場合は、人麻呂が妻の魂を送るために「魂振り」をしたと考えられています。妻への静かな想いや愛が伝わってくるのではないでしょうか。

また、額田王(ぬかたのおおきみ)も次のような歌を残しています。

「茜さす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」

意味:紫草の生い茂る野をともに歩いているとき、あなた(大海人皇子)が袖を振っている姿を野守に見らてしまう

天智天皇の妻である額田王が、夫の弟である大海人皇子に対して詠んだ歌と言われています。

ここでも、先ほどの人麻呂の歌と同様に、「袖」が重要なポイントとなっていることに気が付くと思います。日本では最も古い愛情表現のひとつが、「袖を振る」というものだったのです。

ひらひらと袖を揺らして自分の想いを伝える、とは直接的な表現よりもぐっと趣を感じられるのではないでしょうか。

いかがでしたか?この記事が、みなさんが少しでも日本文化や歴史の面白さに興味を持つきっかけになれば嬉しいです。

次回、中編に続きます

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