「ヒュ~ドロドロ」っていったい何の音?幽霊を表す定番の表現の数々
「幽霊」の歴史
漫画やテレビで幽霊が出てくる時の定番の音に「ヒュ~ドロドロ」というのがありますね。あれは一体何なのでしょう?
実はあの音の正体を探っていくと、幽霊の歴史そのものに行き当たります。厳密に言えば、「幽霊の描かれ方の歴史」でしょうか。
江戸時代には怪談が大流行しました。絵画や読み物をはじめ、能や歌舞伎などの芝居でもさまざまな怪談物が演じられました。
「ヒュ~ドロドロ」という音は、歌舞伎などで使われる下座音楽が由来です。下座音楽は舞台下手側で演奏される舞台音楽のことで、能や歌舞伎では、こうした効果音や音楽が欠かせません。
「ヒュ~」という音は隙間風を表現しています。竹で作られた横笛である能管によって奏でられる音で、昔から能や歌舞伎、寄席などさまざまなシーンで使われていました。
「ドロドロ」という音は大太鼓を小刻みに打つ音で、幽霊が登場する様子を表しています。幽霊だけでなく人魂など、人外の存在が舞台に現れた際にも使われます。
日本だけの効果音日本ではこの効果音が定着し、現在では芝居以外でも、お化け屋敷などのアトラクションや、日常会話の中で幽霊を表現する定番の音として使われています。
よって、この「ヒュ~ドロドロ」は日本特有の表現なので、海外ではほぼ通じません。
また「ヒュ~ドロドロ」以外にも、日本人にとって幽霊と言えばコレ! という定番のアイコンはたくさんあります。
例えば、幽霊が頭に白い三角巾を着けているのは仏教に由来する独特の死装束の一つですし、絵画で「幽霊の足を描かない」という描写も定番の表現と言えるでしょう。
足のない幽霊を初めて描いたのは円山応挙と言われていますが(諸説あり)、「幽霊に足がない」という考え方自体はそれよりも昔からあったようです。
「幽霊」は古い他にもあります。幽霊は柳の下に現れる、という表現が定着したのも江戸時代でした。当時の奇談集『絵本百物語』に登場する柳女が元になっていると言われています。
また幽霊の定番の台詞「うらめしや」は、「恨めしいなぁ」という意味の台詞ですが、これも日本の幽霊に独特のものですね。
もともと「幽霊」の概念はかなり古く、平安時代後期の文献にはすでに幽霊に関する記述が見られます。しかし、それが絵や彫刻で表現されるようになったのはもっと時代が下ってからです。
鎌倉時代には「幽霊」ではなくオバケ(今で言う妖怪)の絵がよく描かれていました。その後、室町時代に成立する能で幽霊が登場して一般的になっていき、江戸時代にさらにさまざまな媒体で描かれるようになったことで、幽霊の表現の幅が一気に広がっていったのです。
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