『鎌倉殿の13人』「ベストな死に様」6人を識者が選出!「つぶやかずにいられない」理由も徹底分析

日刊大衆

※画像はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』公式ツイッターアカウント『@nhk_kamakura13』より
※画像はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』公式ツイッターアカウント『@nhk_kamakura13』より

 最終章に突入している小栗旬(39)主演のNHK大河ドラマ鎌倉殿の13人』。11月6日放送の第42回では、市原隼人(35)演じる八田知家こと通称八田殿が隠居を決意。年齢が実は70代だったことも判明し、視聴者に衝撃を与えた。

 なぜかいつもびしょ濡れ、そして着物の合わせをはだけて胸筋を惜しげもなく披露する独特のキャラクター性が人気を博していた八田殿。そのため、視聴者からは「本当にこれで退場なのか…悲しすぎる」「これで完全退場なのだろうか。いやー寂しいな」と惜しむ声が、SNS上に多く寄せられていた。

「今後も鎌倉幕府3代目将軍・源実朝の暗殺や、ラストには小栗演じる主人公・北条義時の死も待っています。とにかく、登場人物がどんどん退場していくドラマなので、その消え方が大きなポイントになってきますよね。これまでも、菅田将暉さん(29)演じる源義経は、5月15日放送の第20回で討ち取られたんですが、最後まで楽しそうに戦闘を見つめる姿や、大泉洋さん(49)演じる源頼朝が義経の首桶を見て慟哭するシーンが印象的でした」(テレビ誌編集者)

 権力を確立するまでに、たくさんの政敵を退けてきた頼朝も、6月27日放送の第25回で病死。視聴者からは、頼朝・義経の兄弟の退場について「私過去一泣いた回は九郎退場回」(※注 九郎は義経のこと)、「これから本格的に身内で殺し合いだと思うとしんどい」など、物語に感情移入した視聴者たちが思い思いに語り合っていた。

 そこで本サイトは、『週刊新潮』(新潮社)で『TVふうーん録』を連載し、数多くの媒体でドラマ関連の記事を執筆している吉田潮氏に『鎌倉殿の13人』の登場人物たちの「ベストな死に方」を選出してもらった。

■心優しい人が死んでいく……『鎌倉殿』の容赦なさ

 吉田氏が真っ先に挙げたのは、新納慎也(にいろ・しんや=47)演じる阿野全成(あの・ぜんじょう)だった。全成は、頼朝の異母弟かつ義経の同母兄。仏門に入っていて権力争いからは距離をおいており、義時の妹で、宮澤エマ(33)演じる実衣と夫婦だった。

「全成は濡れ衣を着せられて殺されました。頼朝の弟ではありましたが、武士ではなくできるだけ穏やかに生きていこうと思っていた人。普段、占いは全く当たらないのに、死に際では暗雲が立ち込めて雷が落ち、彼の祈祷が奇跡を起こしたかと思いきや、その後殺され、天気は晴れるという劇的な死でした。

 さらに、実衣とは信頼し合っていた夫婦で、義時の義弟であってもこんな粛清のされ方をするんだ、というやりきれなさをすごく感じました。家族の中でダメンズ扱いされてはいましたが、気が弱くて風情のあることが好きな優しい性格なので、現代だったら生きていただろうなと思いますね」(吉田潮氏=以下同)

 心優しく、穏やかな人物だった全成の死を受けて、視聴者からは「全成かわいそうすぎる」「全成が癒し系だったので、歴史上来ると分かっていた出来事だけれども、辛かった」といった感想が寄せられていた。

 つづいて、吉田氏は「佐藤浩市さん(61)演じる上総広常の死は、義時が“この時代を生き抜くには”ということを意識したエポックメーキングな事件だった」と話す。

 広常は頼朝の挙兵に協力した、最も有力な坂東武者だった。しかし。そのリーダーシップが脅威とみなされ、御家人たちの謀反計画を知った頼朝が、広常のみを見せしめとして殺害することを決め、4月17日放送の第15回で殺害されてしまう。当時の義時は、この殺害計画に猛反対していた。

「佐藤浩市さんは、04年の『新選組!』出演時も死んでいたので、三谷幸喜さんの大河ドラマでは“死ぬ”のが定番ですね(笑)。広常はずっと頼朝と仲良くしてきて、これから鎌倉殿を盛り上げていこうと話していたところを殺された。“なんで?”という思いが伝わってくる佐藤さんの演技で、疑問と無念の死を迎えた広常のビジュアルが脳裏に残っています」

 視聴者からは「見せしめに斬られた上総広常が不憫すぎる」「可哀想で可哀想で泣いた。演じている大泉さんごと頼朝が嫌いになりそうな回でした」と、広常の退場を惜しむ声が送られた。

 そして、視聴者から恐れられていた、梶原善(56)が演じた暗殺者の善児の死も印象的だったという。善児は8月28日放送の第33回で山本千尋(26)演じる自らの弟子の暗殺者・トウに命を奪われた。

「今までさんざん手を汚してきた善児ですが、源頼家の息子に情が湧いて殺せなかった。人間らしい情が生まれた時に、手塩にかけて育ててきた弟子の殺し屋・トウに殺され、“因果応報”という言葉が真っ先に浮かびました。全成や広常の死のように“悼む”というよりは、善児の死には“やっぱりそうだよね”という納得感がありました」

 視聴者からは「トウは善児を恨んでたのかーってかそらそうか」「善児死んで悲しくなるとは最初の頃思いもしなかった」「残忍な暗殺者の最期、まさに因果応報とはいえ、堪えるよ……哀しい」と、善児の死について一言では表すことのできない複雑な思いを抱えている声が多くあった。

■中川大志・畠山重忠はもっとも武士らしい死に方

 そして、中川大志(23)演じる畠山重忠の死に方も、非常に印象的だったと吉田氏は話す。

 9月18日放送の第36回で、坂東彌十郎(66)演じる義時の父で執権の時政と重忠が衝突。重忠は戦を好んでやりたいわけではなく、畠山家の名誉のために戦うのだと横田栄司(51)演じる和田義盛に宣言。最終的に、歴史ドラマでは非常にレアな一騎討ちの対決を行った後、敗走した先で討ち取られたことが後に語られた。

「もっとも武士らしい死に方でした。本当は戦いたくないのに、家が悪く言われていることを後世に残すわけにはいかない、という思いで戦っていた重忠。義時も、ものすごく長い間一緒に鎌倉殿を支えてきて、お互いそれを望んでいないのに討たなければならなくなった。一騎討ちも刀の斬り合いとかでなく、もう素手でボコボコに顔を殴り合うという、ある種“男の友情”的なものも感じました」

 中川演じる畠山にはファンが多く、視聴者からはその死を悼んで「明確な死亡シーンが無くて良かったけどつれぇよ!?」「畠山殿が退場してから、鎌倉殿の続き見てない…。ダメージでかかったんだな」と、「畠山ロス」に陥った人もいたようだ。

 また、佐藤二朗(53)演じる比企能員(ひき・よしかず)の死にざまも、登場人物の性格がよく表れていたという。比企家は北条家と激しい権力争いを繰り広げてきたが、8月14日放送の第31回で死んだ。

「比企は卑怯で人間臭い、小心者なんだけど憎めないキャラクター。殺されるときも丸腰で北条家に話し合いにやってきたかと思えば、実は着物の下に鎧を着ていたという……(笑)。そして皆に捕まって脱がされて刺されて死ぬ。もともと“小心者のおじさん”だったのに、義時と同様に時代を生き抜くために策略をめぐらせなければならなくなった。もともと佐藤さんは柔和な印象ですが、憎たらしい表情を見せるなど、ちょうどよく“悪い二朗”、“優しい二朗”、“ずるい二朗”の持ち味が出ていたと思います」

 比企の死にあたって、視聴者からは「比企能員の死亡シーン、100万点」「比企殿、堂々たる退場だった」といったコメントが並んだ。

 そして、10月31日放送の第41回で全身に矢を浴びて死んだ横田栄司演じる和田義盛もファンから、その退場を惜しまれている。視聴者は「とうとう和田殿も退場してしまった…しかも、あんな…酷い」「和田殿の壮絶な退場に凹みまくってた」と悲しみの声をSNS上に寄せている。

「めっちゃいい男なのにおバカキャラなんです。仁義を通す人物で、3代目鎌倉殿の実朝も絶大な信頼を寄せる人物でした。いまドラマに残ってるのは、山本耕史さん(46)演じる三浦義村や義時のような悪い人ばかりですよね。おバカキャラだけどまっすぐな和田殿が退場して、つらかったですね」

■視聴者はなぜ感想をつぶやかずにはいられないのか?

 『鎌倉殿の13人』は登場人物も多く、さらに鎌倉時代を舞台にした大河ドラマは同作以外では1979年『草燃える』、1991年『太平記』、2001年『北条時宗』の3作品のみ。

 視聴者にとってややなじみの薄い時代ながら、熱狂的なファンがSNS上で数多く感想を寄せている。なぜ、視聴者たちは、登場人物の死について「つぶやかずにはいられない」のだろうか。

「物語の本筋は『半沢直樹』(TBS系)のような、北条義時がぼんやりした青年から、政(まつりごと)を行う大政治家になっていくストーリーです。大河ドラマは話数も多いですし、登場人物が多いので、視聴者それぞれに感情移入しやすいキャラクターがいるのではないでしょうか」

「有能だが悪い政治家」に成長していく義時と、周辺で相次ぐ暗殺について、視聴者は現代にも通じる構図を感じとっているようだ。

「本来は、武士たちがまとまってみんなで戦うはずなのに、櫛の歯が抜けるようにどんどん殺されていく。“人が権力を握る”という部分で、たとえば今の政治家たちの集金の仕方や支援者の集め方にぞっとしながらも、リアルな政治についてツイートしにくいから、『鎌倉殿の13人』にその匂いをかぎ取ってつぶやくというか……。

 それから人はたくさん死んでいるのですが、フィクションがゆえに、重苦しいだけでなく、視聴者に死についての感想をつぶやかせる、一種の軽さもあるのではないでしょうか」

『鎌倉殿の13人』は、900年ほど前の話だが、権力を手にした者が保身に走ったり、政敵を消し去ろうとしたり、自分たちにとって都合の良いことだけを行ったりする姿は、現代人にも身近に感じられるのかもしれない――。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、コラムニスト、イラストレーター。『週刊新潮』(新潮社)で『TVふうーん録』を連載中。『週刊女性PRIME』や『文春オンライン』、『PRESIDENT ONLINE』などのメディアでもテレビドラマ関連の記事を執筆している。

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