悪運強すぎ『ちむどんどん』黒島結菜&不可解スピンオフのウラを識者が分析!

黒島結菜(25)主演のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』のスピンオフ作品、『ちむどんどんスペシャル』が11月12日、BSプレミアムで放送された。同作は、11月6日には4Kチューナーがある環境で視聴可能なBS4Kで放送されていた。
竜星涼(29)演じる長兄・賢秀が主人公で、筧美和子(28)演じる千恵子に惚れたドタバタ劇『賢秀望郷編』と、上白石萌歌(22)演じる末妹・歌子が主人公で、前田公輝(31)演じる幼なじみで実家の豆腐屋を手伝っていた砂川智との青春を描いた『歌子慕情編』、黒島・竜星・上白石・姉の良子を演じた川口春奈(27)ら4兄妹のスペシャルトークが、およそ2時間にわたって放送された。
9月30日に本編の放送を終え、視聴者による「#ちむどんどん反省会」でのSNS上の投稿も落ち着きを見せつつあった中でのスピンオフの放送だったが、厳しい意見が再び集まってしまった。
視聴者からは、「ちむどんどんのスピンオフ、驚いてしまう位に何も中身なく本編でやってた事をもう一回やっただけって感じやった」「キャスト同士のドラマについてのトーク。凄まじいよそよそしさを感じる。これ、全員気乗りしてないだろw」といった声が、SNS上で見られた。
11月4日には、「#ちむどんどん反省会」が「ユーキャン新語・流行語大賞2022」にノミネートされたことが発表。歴史的ともいえる大不評を買った『ちむどんどん』のスピンオフ放送の意図とは――。
日刊大衆では今回、ライターとしてドラマやテレビ番組、書籍など幅広い分野について執筆する成田全(なりた・たもつ)氏に詳しく分析してもらった。
■『ちむどんどん』本編の嫌なところを思い出す
『賢秀望郷編』と『歌子慕情編』は、大不評だった本編と比べると面白かったのだろうか。『ちむどんどん』本編放送の当時と比べ、やや炎上の勢いは収まっているようだが――。
「歌子の話は、歌子の幼少期を演じた布施愛織さん(10)と上白石萌歌さんの絡みがあって微笑ましく、まだよかったのですが、賢秀は相変わらずな感じでした。
ただ『歌子慕情編』では、5月14日放送の第26話で賢秀がボクシングジムの仲間からお金を借りて逃亡した件、『賢秀望郷編』では6月6日放送の第41話で賢秀が手を出した“紅茶豆腐” なる詐欺まがいの健康食品などの金銭トラブルや借金がらみのエピソードがありましたし、やたらと過剰なBGMも本編と同じで、“面白いでしょ?”と無理やり押し付けられる作りは相変わらずでした。 テイストや演出はどちらも本編と同じで、“そうそう、この感じが毎朝嫌だったんだよなぁ”という悪夢が蘇りました(笑)。
また『#ちむどんどん反省会』などのタグで賛否両論となった本編の放送当時よりもSNSで炎上していないのは、朝ドラは生活習慣と視聴習慣が結びついていること、そして最終回がビックリ展開から約40年も時間を一気に飛ばすという“最後まで過程を描かなかった”ことが大きいですね。
本編が始まる前に〈“最終回がこうなる”ということを初めに決めてから、第1週の本を作るという新しい挑戦をしました〉とドラマの政策統括がインタビューで語っていたので、“そこまで言うなら、最終回はどうなるのか?”という思いだけで見続けた視聴者に呆れられて“もういいよ”となり、4KやBSでのスピンオフをわざわざ見る視聴者は少なかったのでしょうね」(成田全氏=以下同)
視聴者から大きく不評を買った借金問題がふたたびスピンオフでも登場していたようだが、本編とはまた違った試みもあったようだ。
「歌子は本編で沖縄民謡に加え『椰子の実』と『翼をください』の2曲を歌っていましたが、今回は『ひょっこりひょうたん島』のテーマソングや吉田拓郎さんの『結婚しようよ』、南沙織さんの『17才』の歌唱を披露していました。さらに、石丸謙二郎さん(69)演じる比嘉家の大叔父・賢吉おじさんが、賢秀から買った紅茶豆腐を見て激怒、“お前たち家族全員脳みそがないのか!”、“借金で首が回らんくせに、こんなもんに有り金全部つぎ込んで!”と絶叫する比嘉家叱責シーンは完全に振り切ったハイテンション演技で視聴者の声を代弁、溜飲が下がりました(笑)」
『ちむどんどん』本編の炎上は、日を追うごとに増していった感があったが、現在でも黒島に関して『クロサギ』(TBS系)の収録現場では、「『ちむどんどん』が大変だった」と受け取られないように、「大変だね」という言葉を発することが禁じられていると、11月11日配信のWEB版『女性自身』が報じるほど。今回放送された、メインキャスト4人のトークはどのような雰囲気だったのか――。
「やや腫れ物に触るような空気もありましたが、黒島さん、竜星さん、川口さん、上白石さんの4人は和気あいあいとしていました。
一つ驚いたのが、黒島さんが沖縄独特のクバの葉の扇“クバオージ”について話しているとき、“ずっとこれは結菜自身が馴染みのあるものだったの”と、一人称を自分の名前で話していた点です。これほどフランクに話すということは、約1年間、現場を共にしてきたキャストやスタッフ陣にすごく心を許していることの表れなのだろうな、と思いました」
■スピンオフ制作は既定路線だった?
そもそも、視聴者から大不評を買っていたにもかかわらず、スピンオフが放送された理由は何だったのだろうか。成田氏は、「作品の人気関係なしに、そもそもスピンオフ制作は決まっていたのではないか」と話す。
「竜星さん、上白石さんをはじめとする、多忙な出演者のみなさんのスケジュールをあらかじめ押さえておかないと撮影はできません。さらに、基本的に朝ドラはセットを組んだらそのセットを使用するシーンを撮りだめし、解体して次のセットを組み立てるというサイクルで撮影しています。
今回のスピンオフでは、本編に登場した比嘉家、やんばるの共同売店、砂川とうふ店、銀座のフォンターナ、東洋新聞社、鶴見のあまゆと下宿先、なぜか登場人物が吸い寄せられる謎の路地など、お馴染みのセットがほとんど登場していました。スピンオフのためだけにわざわざセットを組み立てなおしたとは考えづらく、もともと制作は決まっていたのだと思います」
さらには11月11日、『ちむどんどん』視聴者の心をざわつかせる事態が起きた。宮沢氷魚(28)演じる新聞記者で暢子の夫・和彦の父、史彦を演じた戸次重幸(49)の所属事務所が、2023年1月3日に放送されるという『ちむどんどん 総集編 前編・後編』に出演予定だと発表したのだ。
「まだNHKから『総集編』の放送予定が公式発表されたわけではないのですが、戸次さんの事務所の”フライング”ともとれる告知の日程が2023年の正月ということから、『NHK紅白歌合戦』(以下『紅白』)に『ちむどんどん』のテーマ曲『燦燦』を歌った三浦大知さん(35)の出場に合わせてキャストが一緒に出演し、総集編の放送をアピールする可能性は十分に考えられます」
清原果耶(22)主演の21年度前期作品『おかえりモネ』や、窪田正孝(34)主演の20年前期作品『エール』は、その年の『紅白』で朝ドラ関連の企画にキャストが勢揃いして出演。さらに、どちらも12月28日・29日というタイミングで『総集編』が放送され、『紅白』出演に向けた予習としてバッチリ、という流れだった。
様々な爪痕を残していった『ちむどんどん』という朝ドラがやりたかったことは一体何だったのだろうか。
「沖縄の本土復帰50周年というタイミングで、沖縄を舞台にした朝ドラを制作したこと自体は、大変意義があることだったと思います。ただあまりにも大風呂敷を広げすぎて、しかもその風呂敷が穴だらけで、最後は急に畳んでおしまいだったことから賛否両論が渦巻くドラマとなりましたが、なんだかんだ“持ってる作品”ではあるんです。『ちむどんどん』本編の放送終了は9月30日でしたが、10月3日から始まった丁寧な作りの朝ドラ『舞いあがれ!』に朝ドラファンの心がようやく浄化され始めた翌週の10月13日というタイミングでスピンオフの制作発表があり、ここでまた“#ちむどんどん反省会”が蒸し返されました。
さらに11月4日、“#ちむどんどん反省会”が流行語大賞にノミネートされるという予想外のニュースで再び蒸し返されたその2日後にBS4Kでのスピンオフの放送が控えていたなど、ようやく鎮火しそうなところにわざわざ油を注ぐような話題が投入され、なかなか忘れさせてくれないことが続きました。そして正月の総集編放送が本当なら、ある意味、悪運の強~い作品だと言えるんでしょうねぇ……。
神木隆之介さん(29)主演、浜辺美波さん(22)がヒロインの次回作・23年前期作品『らんまん』には期待しています。『ちむどんどん』での視聴者の声をNHKがどう活かすのか、注目したいですね」
今後、『ちむどんどん』は、朝ドラ史を語る上では欠かせない作品になりそうだ――。
成田全(なりた・たもつ)
ライター。ドラマ、映画、芸能など、さまざまなジャンルの知識を横断して活躍しており、ドラマのレビュー、インタビューや書評の執筆も数多く手がけている。