「鎌倉殿の13人」ついに鎌倉殿の鎌倉離れ?愛想を尽かした義時は…第44回放送「審判の日」振り返り

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「鎌倉殿の13人」ついに鎌倉殿の鎌倉離れ?愛想を尽かした義時は…第44回放送「審判の日」振り返り

「すべては、北条のためですか」

執権・北条義時(演:小栗旬)のあまりに強引な政治にほとほと嫌気が指した源実朝(演:柿澤勇人)。権力のために粛清を繰り返してきた北条一族への怒りは、ついに母・政子(演:小池栄子)にまで向けられます。

そんな鎌倉殿の北条離れがエスカレートし、ついに鎌倉離れさえも惹き起こしてしまいそうです。

鎌倉殿を頼仁親王(よりひとしんのう)にお譲りし、自分は京都・六波羅に御所を移す(予定)とのこと。

裏で糸を引くのはもちろん源仲章(演:生田斗真)。人の上に立って政治を意のままに操り、邪魔な執権を粛清しようと追い落としに躍起です。

実朝を狙う公暁(イメージ)豊原国周筆

一方、父の死について真相を知らされた公暁(演:寛一郎)は復讐に燃え、実朝の土下座謝罪にも暗殺の決心は揺らぎません。

そして鎌倉を捨てようとする鎌倉殿に愛想の尽きた義時は、公暁を止めないことに決めました。

「ここからは修羅の道だ」

今までも十二分に修羅の道だったように思いますが、今まさに殺されようとしている主君を見殺しにするというのは、やはりこれまで以上に過酷な決断です。

果たして義時は、この難局をどう乗り切るのでしょうか……NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第44回放送「審判の日」、ついに迎えた建保7年(1219年)1月27日。今週も振り返っていきましょう。

義時と白い犬の夢

大河ドラマの冒頭、闇の中で義時と向かい合った白い犬。これは前年(建保6・1218年)7月9日に義時が見た夢と思われます。

……御夢中。藥師十二神將内戌神來于御枕上曰。今年神拝無事。明年拝賀之日。莫令供奉給者。御夢覺之後。尤爲奇異……

※『吾妻鏡』建保6年(1218年)7月9日条

薬師如来を守護する十二神将の一柱・戌神(跋折羅大将)が夢枕に立って言うには「今年は無事だったが、来年の拝賀にお供してはならない」とのこと。

目が覚めた義時は薬師如来をお祀りする御堂を建立。この時、北条泰時(演:坂口健太郎)と北条時房(演:瀬戸康史)は民の負担が重くなるからと反対しますが、義時は自腹だから問題ないと決行しました。

薬師如来を守護する十二神将(画像:Wikipedia)。大河ドラマの北条ファミリーと比べてみよう!

そして12月2日に運慶(演:相島一之)の造った薬師如来像を安置します。大河ドラマでは「他のはこれから届く」ということだったので、すべての像が揃ったのが12月2日で、みんなで面白ポーズ大会が開かれたあの場面は11月下旬ごろでしょうか。

後に運命の1月27日、義時は鶴岡八幡宮で夢に見た白い犬と再会したことで具合を悪くし、拝賀における太刀持ちの役を仲章と交代してもらうのでした。

……去月廿七日戌剋供奉之時。如夢兮白犬見御傍之後。御心神違亂之間。讓御劍於仲章朝臣。相具伊賀四郎許。退出畢。而右京兆者。被役御劔之由。禪師兼以存知之間。守其役人。斬仲章之首。當彼時。此堂戌神不坐于堂中給云云。

※『吾妻鏡』建保7年(1219年)2月8日条

そうと知らない公暁は義時と思って仲章を斬ったのですが、この時に義時の守り神であった戌神は御堂の中にいなかったと言います。もしかしたら、あの白い犬は戌神の化身だったのかも知れませんね。

実朝、京へいく?

頼仁親王を養子に迎える準備を着々と進める実朝。この際だからと義時に京都へ御所を移す計画を明かしましたが、ご自分で何を言っているのか分かっていますか?

この前「鎌倉を源氏の手に取り戻す」と言って、今回も劇中で公暁にもそう言っていました。それなのに自身は京都に行くって、鎌倉を取り戻すのは公暁に丸投げ=勝手にやれという事なのでしょうか。

そもそも、鎌倉殿を鎌倉殿たらしめているのは鎌倉にあって坂東武者たちに君臨しているからです。この武家政権を確立するためにどれほどの血が流れたか、知らないとは言わせません。

東国に武家政権を樹立するまでの歴史や鎌倉殿の使命や存在意義などは、鎌倉殿として必修科目ではないでしょうか。

また源頼家(演:金子大地)暗殺については、遠く京都で慈円(演:山寺宏一)が日記『愚管抄』に書いているほどですから、ほぼ周知の事実だったのでは(今さら知ったみたいな演出に違和感を覚えました)……?

入浴中は要注意!源頼家だけじゃない、お風呂が命取りになった源氏の者たち【鎌倉殿の13人】

確かに義時はじめ北条のせい(に見えるこれまでの経緯)で多くの血が流れてきたのは確か。うんざりする気持ちがわからないことはないものの、あなたはその結果として鎌倉殿の座にあるのです。

決して北条だけが悪いのではなく、御家人たちがそれぞれ生き延びるために権力を求め争い、ただ義時が勝ち残っただけのこと。

だから「いつだって私たちは正しかった」のです。仮に正しくなかったとしても、それで滅びては元も子もありません。

北条が生きる地は鎌倉をおいてなく、鎌倉を捨てようとする鎌倉殿など、もはや愛想が尽きたと口にする義時の気持ちは共感できます。

ちなみに『吾妻鏡』などの史料には、実朝が京都へ御所を移そうとした事実や意思は記されていないのでご安心ください。実朝の心は、最期まで鎌倉と共にありました(そのはずです)。

泰時が勧めた腹巻(鎧)

さて、万が一の備えとして束帯の下に腹巻(鎧)を着込んでおくよう勧めた泰時。実朝はこれを断りますが、ならばせめて脇差だけでも「太郎のわがまま」を聞いて下さいと食い下がります。

自分に対する(恐らくは恋愛対象から側近としての)好意を知った上で手札を切った泰時の可愛さと、仕方なくわがままを受け入れた実朝のやりとりが印象的でしたね。

ちなみに『吾妻鏡』だと実朝に腹巻を勧めたのは大江広元(演:栗原英雄)。成人してこのかた一度として涙を流したことのない広元が「かつて頼朝様が東大寺供養に臨んだ時のように、今回も腹巻をして下さい」と懇願します。

腹巻。束帯の中に着込む時は、邪魔になる袖(肩を保護するパーツ)を外す。『国史大事典』より

しかし仲章がこれを一蹴。脇差だけでも……というのは大河ドラマの創作です。

……覺阿成人之後。未知涙之浮顏面。而今奉昵近之處。落涙難禁。是非直也事。定可有子細歟。東大寺供養之日。任右大將軍御出之例。御束帶之下。可令着腹巻給云々。仲章朝臣申云。昇大臣大將之人未有其式云々。仍被止之……

※『吾妻鏡』建保7年(1219年)1月27日条

なお、出発に際して髪を結ってくれた宮内公氏(くない きんうじ)に対し、自分の髪を一本抜いて記念として渡します。そして庭先に咲く梅の花を愛でつつ詠んだのがこちら。

出ていなば 主なき宿と なりぬとも
軒端の梅よ 春を忘るな

【意訳】私が出て行ったら、もう二度と戻らない。それでも梅よ、春を忘れずに咲いておくれ。

完全に殺されることを分かっている口ぶりです。南門から出発する際には八幡様のお使いである鳩がやたらとさえずり、牛車から降りれば太刀を引っかけて折るなど縁起の悪いこと尽くし。まさに死亡フラグの大売り出し状態でした。

直衣始の遅れ

さて、乳父として公暁を焚きつけた三浦義村(演:山本耕史)。北条を排して三浦がのし上がる最後のチャンスと言っておきながら、いざ計画を感づかれるとただちに兵を留める機転は流石です。

ちなみに泰時が三浦勢の参列を止めさせる理由に挙げた直衣始(のうしはじめ)とは、前回放送の最後に実朝が石段を上っていた場面。建保6年(1218年)7月8日のことでした。

いざ出発しようと思ったところ、義村が三浦一族の長老である長江明義(ながえ あきよし)と序列についてもめていました。

何かと胡散臭い平六だが、年長者を敬う一面も(イメージ)

と言っても喧嘩ではなく、義村が「自分は官職を持っているが、官職を持っていなくても年長者である長江殿の方が上位であるべきではないか」と言い出したのです。

しかしこういう場面は長幼の序よりも官職や位階の方が大事……互いに譲り合っていたら出発が遅れてしまいます。

だから義村は「身内のちょっとしたことだ」と言ったのですが、泰時は譲らず、感づかれたことに気づいた義村は実朝暗殺計画より手を引きました。

確かに『吾妻鏡』を見ても義村の名前はなく(ただし長男の三浦朝村は随兵として泰時と共に参列)、こうしたやりとりがあったのではないかと思わせますね。

ちなみに先ほど紹介した直衣始の譲り合いは、実朝が「年老いた長江にはこれが最後になるかも知れないから」と長江明義を上位にしてあげたということです。

御家人たちも序列が大事。異議を唱える三浦義村に源実朝の判断は【鎌倉殿の13人】

今週も憎たら素晴らしい源仲章

何とか義時を失脚に追い込むネタを探ろうと、のえ(演:菊池凛子。伊賀の方)に接近する仲章。頼家暗殺について「聞きたいな……♪」と迫ってみるけど、腐っても義時の妻、決して口は割りません。

しかし「手も握っていません」という弁解に「そんなことはどうでもいい!」という義時のリアクション。妻としてほとんど愛されていないことが浮き彫りになってしまい、ちょっとかわいそうでしたね。

また、冒頭の仏像ポーズ大会に参加しようと挙手していたのをかき消されてしまう辺りも「北条ファミリーに溶け込めていない感」が実に沁みます。

もう結婚してから十年以上経つのに……半ば(義時を出世の道具としか思ってこなかった)自業自得とは言え、せっかく輪に入ろうとしているのだから、入れてあげて欲しいですね(たぶんみんな純粋に気づかなかった様子)。

それはそうと「人の上に立ちたい」という欲望のために謀をもてあそぶ仲章。痛いところを衝かれた義時が焦って雑色のトウ(演:山本千尋)を派遣するも、失敗してしまいました。

「雑色を使うと聞いていたが、女子(おなご)とはなぁ……」

来週はどんな憎たらしさを魅せてくれるのか、とても楽しみ(イメージ)

憎たらしくほくそ笑む仲章。絶対に吐かせてみせると息巻いていますが、彼女は拷問に耐えられるのでしょうか。

なお「血に穢れた誰かより、よほど(執権に)ふさわしい」なんてほざいていた仲章。しかし彼の初登場って、確か頼全(演:小林櫂人。阿野全成の息子)の暗殺じゃありませんでしたっけ?

ともあれ極めつけには「太刀持ちを代われ」とばかり差し出された手。まさに色悪(いろあく。歌舞伎用語で、カッコいいけど性根が悪い役どころ)の真骨頂ですね。

源の なんかムカつく 仲章
顔はいいのに 顔はいいのに

詠み人知らず

SNS上で詠まれていた狂歌が傑作だったので載せました。生田斗真さんの絶妙な演技が光っています。

次週第45回放送「八幡宮の石段」

実朝暗殺について、大河ドラマの筋書きを整理するとこんな感じでしょうか。

義村が公暁を焚きつける→その動きに北条が感づく→感づかれて三浦は手を引く→しかし公暁は諦めない→それを知った実朝が真相を知って公暁に謝罪→しかし公暁は騙されない→義時は実朝に愛想を尽かし、黙殺→そして当日。

久しぶりに登場した母・つつじ(演:北香那。辻殿)が必死に説得するも、公暁の決意は揺るぎません。

暗君として殺された父の怨み、日陰者として生きて来た母の悔しさを抱きしめる公暁。実朝の土下座謝罪に心揺らいだかと思えば、「そなたの気持ちはよくわかる」の一言に感情を逆なでされます。

悪意がないのは百も承知、でもだからこそより一層腹が立つというもの。お前なんかに何が解る!そう怒鳴りつけてやりたかったのではないでしょうか。

泰平の世であれば、名君で終われたかも知れない(イメージ)

それにしても、本作の実朝は一つ一つの言動を見ると温厚で誠実そうなのですが、全体を俯瞰するとちぐはぐな印象が拭えません。

先ほどの「鎌倉を取り戻す」にしても、そう言えば公暁が納得すると思ったのか、しかし後鳥羽上皇(演:尾上松也)に申し訳ないから鎌倉殿は頼仁親王に。

どっちにもいい顔をしようとする人間が、一番信用ならない……そりゃ公暁も「騙されるものか」となるわけです。

果たして義村が黒幕かと思われた実朝暗殺は、三浦の手を離れて公暁の単独犯行となり、そこへ実朝を見捨てた義時もそこはかとなく共犯となる展開。

「ここで終わり?今週(実朝が暗殺される)覚悟をしていたのに!」

そんな視聴者たちの声が聞こえて来そうですが、いよいよ来週こそ本番。第45回放送は「八幡宮の石段」。

結果は知っているものの、どんなアレンジに彩られるのか、一週間のお預けを頑張って耐えましょう。

※参考文献:

三谷幸喜『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 完結編』NHK出版・2022年10月 五味文彦ら編『現代語訳 吾妻鏡8 承久の乱』吉川弘文館、2010年4月

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