「幾多の別れに立ち会った青年の日常に迫る!」下駄華緒「火葬場のウラ側を知る男の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!
■遺体の数だけドラマがある…知られざる火葬場の実態とは?
人は誰しも必ず死ぬ。そして日本では遺体の99%以上が火葬される。しかし、火葬場について詳しく知る人はとても少ない。いつかは必ず、お世話になる場所なのに。
火葬技士1級の免許を持つ元・火葬場職員のユーチューバー、下駄華緒さん(38)。彼が原作を書いたコミックエッセイ『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』(作画:蓮古田二郎/竹書房)が5万部を超えるベストセラーとなっている。
「遺体はおよそ何分で焼けるのか」「骨壺に納めきれない残った骨は、どうなるのか」。知られざる火葬場の裏側や、現場で起きるトラブルなどを漫画で分かりやすく解説。好評につき先頃、第2巻が発売された。
■常に悲哀が行き交う火葬場は人生の縮図
「“火葬場って怖い”といったイメージや、火葬場職員に対する偏見を払拭したくてユーチューブをやったり、文章を書いたりし始めたんです」
彼自身も、差別された経験がある。お骨上げ(遺骨を骨壺に納める儀式)の際に、子どもがはしゃぎ、その様子を見た老人が、こう言ったのだ。
「おじいさんが自分の孫に“おとなしくしないと、将来は、あんな仕事をするようになるぞ”と、僕らを指さしたんです。そんな言葉を悪気なく言えることに、“これは根が深い問題だぞ”と感じましたね」
火葬場職員は、安らかな眠りを見届ける尊い仕事だ。蔑視されていいはずなどない。
ただ、大変な職業であることは間違いない。ペースメーカーを外し忘れた遺体を焼いて電池が破裂したり、骨まで水分をたっぷり吸った水死体が、なかなか焼けずに難儀したり、遺体の数だけドラマがあるのだ。
「骨になったご遺体の胸に刺さるように、手術に使う鉗子し(体の組織や臓器をつかむハサミのような器具)が出てきた経験があります。“手術後に体内にこんな大きなものを忘れてきてしまうケースが本当にあるんだ”とゾッとしました」
どんな事態にも冷静に対応すべき火葬場職員。それでも「胸が痛くなる」のが児童の火葬だ。
「子ども用なので、棺が小さいんです。その時点で気持ちが沈みます。だからこそ、できる限り淡々とお骨上げを進行します。そうでないと、悲しすぎますから……」
幾多の悲哀に立ち合ってきた彼。ついに「自分の祖母」の火葬を執り行う日が訪れる。
「祖母が病床で“知らない人に火葬をされるのが怖い。おまえに焼いてもらいたい”と言い、それが遺言となりました。祖母孝行ができたのではないかと思います」
親族がしんみりと故人をしのぶお見送りがあれば、遺産目当てで骨壺を奪い合う醜い争いもある。
火葬場は人生の縮図。さまざまな生き様の集大成の場を、滞りなく収めてくれる火葬場職員さんたちに、改めて感謝したい。
よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など