キンプリ・平野紫耀『クロサギ』“もっと見たい”誰かの幸せを願う穏やかで平和な姿

日刊大衆

※画像はTBS『クロサギ』公式サイトより
※画像はTBS『クロサギ』公式サイトより

 King & Prince平野紫耀(25)主演の『クロサギ』(TBS系)は、詐欺によって家族を失った男が「詐欺師を騙す詐欺師=クロサギ」になって詐欺師たちを騙し返すやり方で立ち向かっていくヒューマンドラマだ。

 第7話は、ひまわり銀行の執行役員・宝条(佐々木蔵之介/54)が真の宿敵だと確信した黒崎(平野紫耀)が「ひまわり銀行に騙された」と言う姉妹に出会う。罪のない人を陥れた銀行に怒りを燃やす黒崎は、悲しみを抱えた家族の前に舞い降りたヒーローそのものだった。

■優しくて強い黒崎を作り上げる平野紫耀

 黒崎は、ひまわり銀行の宝条の周辺を探っている中、優秀な実績をあげている支店長・牛山(山口紗弥加/42)に目をつける。そこで住宅ローン詐欺で家族を失った姉妹に出会い、話を聞くことにした。被害者が自ら命を絶っていることに自分の父親を重ねて「人の命を道具みたいに使い捨てるあいつらが許せない」と言った声は、腹の底から出ているように低くて強かった。

 そして、静かに怒りが湧き上がってくるその時、昼寝をしていた被害者の娘が黒崎に近づいてくる。「これがパパだよ」と紹介して手渡してくれたのは、紙粘土でつくった小さなパパだった。黒崎の手のひらに収まるぐらいに小さくて軽くて、遺影と同じすてきな笑顔をしているのが泣ける。こんなかわいい盛りの幼い娘がいて、自分の店も、この温かい家族が暮らす家もあきらめて、自ら命を絶つことしかできなかったなんて、黒崎が許すはずがない。

 ここで黒崎が自分の家族を重ね合わせたのは、言うまでもないだろう。黒崎の怒りに火が付いて、メラメラと炎が大きくなっていく表情の変化からのアバンタイトルへの流れが最高だった。小さなパパを見ている黒崎の眉間が徐々に深くなっていき、奥歯を噛むように口角が小さく動く。

 ここでアバンタイトルに使われているあのピアノ音が聞こえてきて、怪しい鳥の鳴き声が聞こえてくる頃には、目力が強くなっていた。そう、メガバンク・ひまわり銀行を喰うのが確定した瞬間だ。こんなワクワクする脚本と編集があるだろうか。

■穏やかで優しい黒崎に胸が痛む

 詐欺被害で家族を失った悲しみと、死を止められなかった自分への怒りや虚しさは誰もが同じだ。黒崎が届けた2000万円を、遺影の前に置いた時に、被害者の義妹がたまらず「でも生きていてほしかったよ。死ぬなんてダメだよ」と語ったが、それはお金を回収できたからたどり着けた思いだ。

 この赤い帯が巻かれた1000万円の束2つには、幼い娘の成長と家族の幸せを見守る温かい父親の愛と長い年月が詰まっている。黒崎が、2話で氷柱に「お金が戻ってくるからってなにをしたっていいわけじゃない」と責め立てられたときに「金で死ぬ人間がいるのに?」と冷たく言い放ったが、これがその“現実”なのだ。

 将来に絶望して命を絶つほど追い詰められている人がいること。それは黒崎の父親だけではないこと。残された家族の消えない悲しみが、この世の中には存在するということ。それを、黒崎はよく知っている。

 ところで、今回は黒崎が銀行という社会的地位を利用した詐欺に、ひと泡吹かせたのが痛快だった。融資額の10%のキックバックをマスコミにリークするという、銀行の社会的地位を揺るがすことに成功した。だが黒崎は、それを誰かに自慢することはしない。

 根岸家で、それぞれからお礼を伝えられた時も、とても控えめにしていた。一番大事な命までは取り戻すことはできないけれど、少しは自分も役に立ったという安堵感が感じられる表情をしていたのが印象的だ。

 せりふのない表情だけの芝居だったが、その複雑な感情を見事に演じていた。誰かの幸せを見ている黒崎がもっと見たい、そんな人生を歩んでほしいと思わせるような、穏やかで平和なシーンだった。(文・青石 爽)

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