東京ダイナマイト・ハチミツ二郎インタビュー「悔しいなんて感じない。それで業界が活性化すればいい」お笑いの未来を思う【人間力】

日刊大衆

ハチミツ二郎(撮影・弦巻勝)
ハチミツ二郎(撮影・弦巻勝)

 俺がこの前出版した著書『マイ・ウェイ』は“遺書”なんです。自伝ではない。この本で書いている通り、東京ダイナマイトは嘘を言いふらされたり、活動を妨害されるような目に遭ってきていて。それについて俺と相方の松田大輔は、ずっと黙ってきたけど、新型コロナへの感染も含めて、俺は何度も死を意識する経験をして「このまま死んだら誤解されてること、間違って伝わったことが訂正されないな」と思って、その事実をまとめたという意味でも“遺書”なんです。

 これまで、人との関係がこじれてしまったことはあるけど、それでも人との出会いに恵まれてきたと思ってます。15歳で岡山から単身上京して、誰も知り合いがいない中で、定時制高校や音楽やお笑いのライブに通って、そして芸人になったことで、いろんな人に出会うことができて、自分が形成されました。

 本に書いたような立川談志さんや太田光さん、松本人志さん、そしてビートたけしさんとの出会い、他にもサンドウィッチマンをはじめとする「二郎会」のメンバーや、長州力さん、相方の松田(大輔)さんなどなど、本に書いたエピソードはほんの一部。しかも、どの話もきちんとオチがついてるんですよね。松田さんだったら、M‐1の決勝のときにキセルで捕まったり、大事な舞台で松田さんが大トチリしたけど「やっぱり2人で頑張ろう」と話し合った直後に、一人芝居を始めたり(笑)。どの話も、人と出会ったからこそ生まれるエピソードだと思うし、同時に俺が俯瞰で物事を見るクセがあるから、そのオチに気づくのかなとも思うんです。

 俯瞰で物事を見るのは大事ですよ。それができないと、自分勝手なことをやったり、人の動きを邪魔したりしてしまう。たとえば、プロレスラーだったら「俺のためにこの試合がある」と思うのと、「相手を生かして自分や試合を生かす」と考えることの違いというか。芸人でも俺が若手の頃は前者のような、後輩を潰す人も多かった。だけど、そんなことをやるのは業界を潰すことと一緒だって、俯瞰して考えれば分かること。だから、サンドウィッチマンの伊達ちゃんには俺が持ってるノウハウは全部教えたし、結果、そこで月収で追い抜かれようが、悔しいなんて感じない。それで業界が活性化すればいいから。

■プロレスラーにたとえたら、カール・ゴッチになってしまった

 俺たち東京ダイナマイトを俯瞰して見ると、プロレスラーにたとえたら、大スターのハルクホーガンになるつもりが、道場で若手と技を磨くカール・ゴッチになってしまった感じかなと思うんです。プロとして同業者に舐められたくないからこそ、「何がなんでも楽しませる」という姿勢になれなくて、ひたすら自分たちの面白さを追求してしまった。

 ビジネスとしてはショーマンシップにあふれたホーガンを目指さないといけないのは分かっているけど、バカだから強さを追求して、薄暗い道場で若手に関節技を教えるゴッチになってしまった。もうちょっと割り切ってたら、ランディ・サベージぐらいにはなれてたと思うけど(笑)。でも、テレビにはなかなか出ないけど、今は劇場で大トリを務めることができているから、この道は間違ってなかったって思っています。

 M‐1で決勝まで進んで、ゴールデンで漫才ができて、子どもの頃から憧れてたNGKの舞台で単独ライブをやって、大仁田厚さんと電流爆破マッチをやって……と、夢だと思ってたことを40代半ばで全部かなえることができたから、正直、今は余生だと思ってるんですよ。俺に残された時間は3年、長くて10年あればいいほうだと思ってます。俺をかわいがってくれた先輩が何人も早逝しているし、特に前田健さんは、ウチで俺の作った鍋を食って「また来るわ」と言っていたその何か月後かに旅立たれた。だから余計に「自分の人生が長いなんて思ってちゃダメだな」と思ってしまうんです。

 俺は一生芸人だから、どんなことがあっても、ネタは続けていく。俺にも相方にも、これから何があるか分からないし、何も後回ししたくないから、なんでもすぐネタにしたい。テレビでお見せするような安全なネタではないからこそ、舞台で、“東京ダイナマイトの今”を見てほしいですね。

ハチミツ二郎(はちみつ・じろう)
1974年、岡山県出身。芸人。2001年に、松田大輔と東京ダイナマイト結成。M-1グランプリ2004、第8位。M-1グランプリ2009、第6位。THE MANZAI 2013、決勝進出。プロレスラーとしても活躍し、2017年には大仁田厚とも対戦。今年7月、双葉社より自伝的書籍『マイ・ウェイ』を刊行。

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