もはや「刑罰」?辞書編集という地味すぎる仕事 (2/2ページ)

新刊JP

のちにその編集者が出張の際に住所を頼りにその人に会いにいくと、そこは高い塀に囲われた刑務所だったという。

なぜその受刑者が漢字の字体に精通していたのかはわからない。ただ、当時の刑務所では受刑者に職業訓練として活版印刷の技術を学ばせていた。現在の印刷では電子組版が使われ、活版印刷はほとんど残っていないが、当時は原稿に出てくるすべての活字を揃える「文選」や、その活字を指定された体裁で配列する「植字」など、熟練と膨大な知識を要する技術がまだ必要とされていた。

その受刑者がこの職業訓練を通じて漢字の知識を身につけたのか、もともと漢字に詳しかったのかは定かではないが、神永さんによるとかつて辞書の印刷を発注していた印刷会社には、「どうやら植字の技術を塀の中で身に付けたのではないかと思われる方」がいたそうである。この人物についても、辞書編集部を感嘆させるほどの知識を職業訓練で身につけた可能性は否定できないだろう。

なかなか外部からは想像がつかない辞書編集という仕事。本書では、この仕事をめぐる逸話の数々がユーモアを交えて解き明かされていく。

方言や隠語はどのように扱われているのか、なぜ辞書編集者は言葉の誤用例まで集めるのか、インターネットが普及した今、紙の辞書はどのように扱われているのか。そもそもあんなに分厚い辞書をどのように製本しているのか。

よく考えると、辞書は謎ばかり。そんな謎が紐解かれる、知的好奇心をくすぐる一冊である。

(新刊JP編集部)

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