「いつか帰ってくることを信じて」キンプリ平野紫耀『クロサギ』桂木との決別で見せた「台本にない涙」

日刊大衆

※画像はTBS『クロサギ』公式サイトより
※画像はTBS『クロサギ』公式サイトより

 King & Prince平野紫耀(25)主演の『クロサギ』(TBS系)は、詐欺によって家族を失った男が「詐欺師を騙す詐欺師=クロサギ」になって詐欺師たちを騙し返すやり方で立ち向かっていくヒューマンドラマだ。第9話は、警察に逮捕された黒崎(平野紫耀)だったが、宝条(佐々木蔵之介/54)の差し金であることを察知し、釈放されたその足で桂木(三浦友和/70)の店に向かう。宝条を倒すために、桂木と決別する黒崎の本気に鳥肌が立った。

■台本を超えた黒崎を演じる平野紫耀の涙

 桂木と決別する、それも黒崎のほうから告げるときがきた。桂木と決別すること、それは命を懸けた戦いになると分かっていても、もう後戻りはできない。だけど、桂木から「宝条を喰って、最後は俺なんだろう?」と言われてしまったら、覚悟を決めて来たのに心が揺らいでしまう。黒崎にとって、桂木は詐欺の仕事を教えてくれた師匠であり、仕事の取引相手であり、自分の家族を奪った仇でもある。

 6年前の雨が降る夜、決死の覚悟で土下座をして魂を売った人なのだ。刃物を出して顔の表面に傷をつけることはできたが、本当の意味でやり返そうとするなら、真っ当に戦えるだけの力をつけなければならない。だから、桂木の言うことには従ってきたし、期待に応えるだけのスキルを教えてもらった恩義がある。

 そして、そんな黒崎の気概を買い、詐欺を教え、情報を売って報酬を受け取れるまで育てた桂木にとっても、黒崎の成長は少なからず喜びだっただろう。いつか自分はこの黒崎に喰われるかもしれない、そう思いながらもそばに置いていたのだから、かわいがっていたことがうかがえる。

 これまで、黒崎が桂木と話をしているときには、瞳に涙をいっぱい溜めて悲しみに満ちた表情をしていることはあっても、涙を流すことはなかった。だけど、決別するとなると複雑な感情が入り混じって、言葉では説明がつかない心境になったのだろう。その黒崎の心情を、平野が体現していたのが素晴らしかった。

 このシーン、台本では淡々としたやりとりが書かれていたのだが、平野の涙が溢れ出たカットが採用されたという。涙については、解釈が違うと判断されたらNGになる。だけど、黒崎を体に染み込ませ、溶かしている平野にしか出すことができない涙には、台本を超えた尊い感情が表現されていた。アドリブの最上級ともいえる、この涙の演技。作品の中で語り尽くしたい名シーンになった。

■黒崎はひとりじゃない、あなたを待っている人がいる

 黒崎は壮絶な人生を歩んできたが、桂木と決別したことで、本当にひとりになってしまった。桂木の腹心である早瀬(中村ゆり/40)に「おかえり」と言ってもらえることもなくなってしまった。だけど、隣の部屋に住む氷柱(黒島結菜/25)は、黒崎がどこへ行こうと、なにか難しいことを成し遂げようとしていても、待っていてくれる存在となっていた。

 黒崎と氷柱は生きる世界も違うし、描く未来には存在しない人。それでも、自分を理解しようとしてくれる人がいるというだけで強くなれるし、生きて帰りたいと思うだけの力をくれるものだ。アパートを出る黒崎の荷物は、スーツケースにボストンバッグと小さいものだった。だけど、中身は、黒崎の人生すべてを詰め込んだ、重くて大きなものだ。

 メガバンクの役員という社会的地位のある人間を喰うなんて、生半可な気持ちではできないし、もはや桂木の恩恵を受けることもなくなった。

 それでも、やると決めたら、とことんやる。次回、最終回がどんな結末になろうとも、黒崎の生き方を応援していきたい。ブレない信念を持って、努力を重ねて、スキルを上げて成功する姿を見たいし、一緒に悲しんだり喜んだりしたい。遠くへ行ってしまい、音沙汰もなくなって、元気かどうかもわからない人になってしまっても、いつか帰ってくることを信じて待っていたい。そう、何の確約もないのに「戻ったら、フグな」と未来を約束してくれた優しいあなたを、ずっと待っている。(文・青石 爽)

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