「北条政子は、タイタンの太田光代社長ですね」三谷幸喜が最初に描きたかった人物は?【松村邦洋が徹底解説する傑作NHK大河『鎌倉殿の13人』】(2)
2022年、最も話題になったドラマのひとつであるNHK大河『鎌倉殿の13人』。小栗旬演じる主人公・北条義時を中心に、苛烈な権力闘争と鎌倉武士の壮絶な生き方を三谷幸喜脚本で描いた作品は、多くの視聴者の心を揺さぶった。本サイトは、日本列島を1年間熱狂させた『鎌倉殿の13人』について、芸能界随一の大河&日本史マニアである松村邦洋氏に取材。そこで明らかになった新たな事実とはーー。(第2回/全4回)
『鎌倉殿の13人』の見事な脚本を仕上げた三谷幸喜。松村さんと交流があり、『鎌倉殿の13人』が決定する以前から「主人公にしたかった人物」を明かしていたという。
――松村さんは三谷幸喜さんとご交流があると伺いました。三谷さんが脚本を担当された大河ドラマは、04年『新選組!』、16年『真田丸』に続いて3作目です。『鎌倉殿の13人』の主人公を北条義時にするという構想はいつ頃生まれたのでしょうか。
2013年くらいかな。映画『清須会議』のBlu-Rayの特典として、僕と三谷さんがオーディオコメンタリーを収録したんですよね。その前後、楽屋であいさつしているときにお話しまして。もちろん、当時は『真田丸』よりも前だし、今回の『鎌倉殿』の話なんて何も決まってなかったんですけど。
■北条泰時では大河ドラマの題材として「綺麗すぎる」?
「次、大河ドラマで何をやりたいですか」って僕が聞いたら、北条泰時って三谷さんが言ってたんですよね。僕も好きな人物なので「面白いですね」と。
もうそろそろ鎌倉時代をやりたいと思ってたんでしょうけど、三谷さんとしては、泰時はやっぱりいい人で、かっこいいんですよね。人物として綺麗な人って、描けない。たとえば、乱世を生き抜いて平和な世を作ることをやり遂げて、息子・秀忠にバトンタッチするから徳川家康のストーリーが面白いんです。
けど、徳川秀忠や徳川家光で1本大河ドラマを作るとなると、ちょっと難しいなとは思うんです。だから、北条義時をしっかり描くことと、1979年の大河ドラマ『草燃える』と同じ年代を追いかけていく方が、やっぱり面白みがあるでしょうね。
■「政子はタイタンの太田光代社長」
――小池栄子さん(42)演じる北条政子は、義時が床にこぼれた薬を飲もうとしたところを着物の袖で拭って、そのまま義時は息を引き取りました。政子と義時のラストを松村さんはどう思いましたか。
最後のところも含めてなんですけれど、僕の中で政子が悪女っていうイメージが全くないんですよね。『草燃える』で育った人間としては本当に政子はいい人ですよ。岩下志麻さん(81)も、小池さんも本当いい人。
確かに『義経』の財前直見さん(56)演じる政子とか、あの辺は悪女に描かれてますけど……。政子は苦労して苦労して、言ってみれば爆笑問題さんの事務所のタイタンの太田光代社長(58)みたいなもんでしょうね。
政子は、伊豆に流されていた頼朝と結婚しました。光代社長は、太田プロを辞めたばっかりの爆笑問題の太田さんと結婚して。光代社長は「あんた私がパチンコで稼ぐから、あんたネタをしっかり作っててよ」って、パチンコで儲けたお金で生活してたんですよね。
で、あるときからその太田光さん(57)が仕事に目覚めて頭角を表して……。ついに今年、自分たちの事務所・タイタンからM-1グランプリの優勝者、ウエストランドが出たわけです(笑)。
■プロフィール
松村邦洋(まつむら・くにひろ)
1967年8月11日生まれ、山口県田布施町出身のお笑いタレント。ビートたけしをはじめとする芸能人の“形態模写”ものまねで人気を博す。日本史、野球、相撲などにも詳しく、著書に「松村邦洋 今度は『どうする家康』を語る」「松村邦洋『鎌倉殿の13人』を語る」(どちらもプレジデント社)、「愛しの虎 松村邦洋の阪神タイガース応援日記」(太田出版)ほか多数。