「僕の家系は江戸時代から長男が50歳まで生きたやつがいないんです」【俳優・山路和弘独占インタビュー】(4)

日刊大衆

山路和弘さん
山路和弘さん

 俳優・山路和弘の活躍は幅広い。テレビを見ていれば、一度はその声を耳にしたことがあるはずだ。アル・パチーノやジェイソン・ステイサム、ゲイリー・オールドマンといった名だたる海外俳優の吹き替えを務め、声優としても『SPY×FAMILY』『ONE PIECE』といった作品に参加。
 かと思えば、俳優として2022年上半期のNHK連続テレビ小説ちむどんどん』で、主人公一家の良き隣人・前田善一役、10月からの『エルピス-希望、あるいは災い-』(フジテレビ系)では、長澤まさみ眞栄田郷敦の前に立ちはだかる大門雄二副総理を演じている。
 人の心を動かす俳優の深奥にあるものはーー。【第4回/全4回】

『ちむどんどん』では善人そのものの前田善一を演じた山路さんは、『エルピス』では悪役・大門雄二副総理を演じた。善人よりも悪人のほうが演じるのが楽だと告白する山路さんだが、その理由は――。

――2022年、山路さんは俳優としてミュージカル『ジャージー・ボーイズ』やアニメ『SPY×FAMILY』(テレビ東京系)などに出演されていましたが、特に注目作だったテレビドラマ『ちむどんどん』での善人・前田善一と、『エルピス』の大門副総理という極悪人、かなり両極端な印象でした。

 善人って舞台でもあんまりやったことがなくて、ものすごい悩んだことがありますね。“これでもなんか裏あります?”とか、”最後はどうなります”とか、何回聞いても“いや、あのーいい人ですね”、って言われて”じゃあ、俺は何をすればいいんだ”ってなったことはありました。ものすごい悩まされた。

――悪人を演じることの良いところはありますか?

 善人って、すごいこう気を張らなきゃならないんですよね。“あの人が今これをやって、あの人はこれやってる”って、それをこういちいち反応してやるところってあるじゃないですか。悪人って、ドンと構えてそこまで気にしなくていいところがあるから全然楽は楽なんですよね。

■『エルピス』悪役・大門副総理は「得な役」

――『エルピス』では、大門副総理という悪役でしたが、いち視聴者としても、出演していなくても大門の存在が作品全体に影を落としているような印象がありました。

 名前ばっかり言われるから、それは得な役なんですけどね(笑)。出番が少なくても、ずっと出てるみたいに思われますよね。

ーー2023年1月からは舞台『時をちぎれ』に主演されることが決まっているそうですが、今回は善人ですか、悪人ですか?

 1月20日から劇団青年座第250回公演『時をちぎれ』、池袋の東京芸術劇場で公演します。

 脚本家の土田英生さんならではの軽快な話です。サプリメントを扱う会社の社長が将軍って呼ばれていて、その人が室町時代マニアなんです。室町幕府のシステムをそのまま持ってきて、社内には公方、侍所、問注所というセクションがあるちょっと変わった会社の社長です。

 悪役なのか、善人なのかはご覧いただいて。ポスターでは悪そうな顔してるんですけど、元々の顔だからしょうがないですね。以前、磯部勉さん(※)が“ものすごく悪そうな顔してる”って、人に突っ込まれていたことがあって。磯部さんは、“いやいや、俺だって、昔はこんな顔してなかったんだよ、悪役ばっかやってるとこういう顔になるんだよ。お前もわかるよな、山路!”って言われたことがありまして……。これ、もう顔自体がしゃあないですよ。

※磯部勉さん=俳優。NHK大河ドラマ『篤姫』、『軍師官兵衛』などに出演。声優、ナレーターとしても活躍しており、ハリソン・フォードやブルース・ウィリス、メル・ギブソンなど多数の洋画の吹替を担当。

■山路さんの「死」の捉え方

――悪役としての経験や、演技の表情の作り方なども影響しそうですね。

 そう、だから善人をやるときが大変なんですよ。今回の『時をちぎれ』では、かっこいい将軍様をやろうと思ったら悪そうになっちゃいましたね。コメディなんで将軍様はそんなに悪いやつじゃないですけど、ただ悪く見えます。山路将軍の黒いところも白いところも全部出てますので。

 で、現代にありながら“室町幕府のシステムを模している会社の中で起こる出来事だったり、現代のハラスメントっていう問題もテーマになっていますね。楽しいお芝居になる予定です。

――俳優、声優としてたくさんの「死」を演じてこられたと思いますが、山路さんご自身は死についてどうお考えでしょうか。

 死ということに関して、僕の家系には江戸時代から長男が50歳まで生きたやつがいないんですよ。だから、じいさんもやっぱ45歳で死んで、僕の親父は39歳で死んでるんですよね。

 そういうのがあって、子どものころから"お前も絶対早いからね”って親戚に言われて育ってきて。親父の年を越したときとか、50歳を越すか越さないかのときに、本当に毎日毎日嫌でしょうがなくて……。今度、自分の番はいつ来るんだぐらいに考えてたんですけど、それを過ぎてからはすごい楽になったんですね。生きるというか、生きていくしかないんだなみたいに思うようになって。それまで、若い頃は割と自暴自棄でいた。死ぬということより、生きることを意識しだしたのは、たぶん50歳以降かもしれないですね。

――ありがとうございました。

■プロフィール
山路和弘(やまじ・かずひろ)
1954年6月4日生まれ、三重県伊賀市出身。1979年、劇団青年座に入団。俳優、声優、ナレーションなど幅広く活躍。2010年度第36回菊田一夫演劇賞の演劇賞を受賞。2017年度毎日芸術賞を受賞。また、2021年3月、第15回声優アワードで外国映画・ドラマ賞を受賞している。吹替の担当俳優はジェイソン・ステイサム、ウィレム・デフォー、アル・パチーノ、ゲイリー・オールドマンなど多数担当している。

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