「2023年こそ特撮」!!“超特撮芸人”篠宮暁「戦隊・ライダーは大河に並ぶ上質なドラマ! 世界一アクションしています!!」【日本人「特撮完全補完計画インタビュー#1】

日刊大衆

『仮面ライダーBLACK』のポーズを披露する篠宮暁
『仮面ライダーBLACK』のポーズを披露する篠宮暁

 昨年2022年には映画『シン・ウルトラマン』が社会現象を起こしたり、テレビドラマ『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(テレビ朝日系、毎週日曜日朝9時30分から)が「ネット流行語100」(ピクシブ・ドワンゴ)にて4位にランクインしたり、ブームが起こりつつある特撮界隈。今年2023年は映画『シン・仮面ライダー』も控えており、いよいよ特撮の時代が来るのかもしれない。

 今回、当サイトでは、特撮好きが高じて特撮に関するコラムを執筆したり、東映公式の配信コンテンツ『ウラ仮面ライダー』のMCを任されたりと、自他共に認める特撮芸人である篠宮暁(39)に直撃取材を敢行。

 特撮をまだあまり知らない人、「これから見てみたい!」という人のために、『特撮完全補完計画』インタビューを試みた!(#1~3のうち1)

――篠宮さんは大の特撮好きとして知られています。まだ多くの日本人が気づいていない「特撮の面白さ」の根源の部分や、見どころを教えてください。

「そうですね、どの年代の作品をオススメするかで変わってくると思いますけど、最近の作品だったら“ストーリーの面白さ”が一番入りやすいんじゃないかなと。最近の作品は、単純な勧善懲悪ものじゃなくて、複雑であり面白いんです。しかも1年間かけてじっくりと放送されるのでいいんですよね。

 大河ドラマじゃないですけど、1年間で放送されているのって大河ドラマか、戦隊かライダーだけなんで……1年間通して上質なドラマを楽しめるのが、“魅力”のひとつですね。

 2つ目の魅力は、1年間通してずっとアクションをしていて、作品が変わっても(次の年も)ずっとアクションしていること。こんなアクションし続けている番組は世界レベルで見てもありません。世界一アクションしているのではないでしょうか」

――しかも、毎年アクションのタイプも少しずつ違いますからね。

「そうなんです。それって子どもの頃から当たり前のように見ているので全く違和感ないんですけど、よくよく考えたらとてもスゴいこと。アクション、しかもハイクオリティなアクションをやってくれているんです」

――戦隊ヒーローの場合は45年以上毎年ですものね。改めて考えるとすごい。

「あと、スゴく感じたのが、仕事で海外に行ったときのことです。

 海外でも、日本の戦隊が原作の『パワーレンジャー』が放送しているんですけど、『パワーレンジャー』はどこの国に行っても放送されていたり、されていなくても、みんなYouTubeの配信を観たりしていて。何なら、日本の戦隊作品を、現地で翻訳して観ていたりする人もいて。

 けっこうコミュニケーションツールとして浸透してるっていうのを感じます。戦隊は、日本人だけが熱狂するものだと思ってたら、そうじゃなかった。戦隊は、世界の人と共通の話題を持つための手段のひとつにもなりえるのかな、と思います」

■「歌舞伎の良さが子ども番組に45年以上前に反映されて、いいところが受け継がれている」

――戦隊は海外でも人気なんですね。

「もともと戦隊ヒーローはルーツが歌舞伎なんですよ。歌舞伎の良さみたいなのが海外に伝わってていいな、と思いますね。

 戦隊ヒーローでのいわゆる“名乗り”も、元は歌舞伎の『白浪五人男』からきていると言われていまして。

 日本人が戦隊ヒーローを観てなぜ気持ちいいかっていうと、歌舞伎のDNAが組み込まれてるところがあるからだと思うんです。日本人が好きな様式美によって見ていて気持ち良く感じるのだと思います」

――名乗って役割分担して協力して倒す、と。

「そうですね。海外に輸出したときに“ヒーローたちは何で名乗ってるの?”“名乗ってる間に攻撃されちゃう”って言われたらしいですが、“いや、ここは絶対にいるんです。日本の歌舞伎の中にはこういう口上がありまして、日本の子どもたちはここでグッとくるんです”と説得して、名乗りシーンを削らせなかったそうです」

――そのやり取りに情熱を感じますよね。戦隊はある意味で現代版歌舞伎ですね。

「そこまで言っちゃうと歌舞伎ファンに怒られてしまいかねませんが(笑)。歌舞伎の良さが子ども番組に45年以上前に反映されて、いいところが受け継がれている感じですよね」

――時事ネタと伝統の良いところがくっついて、ということですね。

「それに、最新技術が加わってですね。あと、戦隊作品は、いかに“マンネリしないか”を念頭に置いてやってこられているので、そこも素晴らしい。毎回、新しいものを見せてくれるので、こっち(観る側)はどんな方向に行こうが、とにかくずっと楽しませていただくという感じです」

――篠宮さんは2児のお父さんです。特撮作品は子どもとのコミュニケーションツールとしての側面もありますが、それを実感することはありますか?

「そうですね。子どもと戦隊作品の話はしますし、いままで一人で行っていた映画やイベントも子どもと行ったりとかもするようになりました。

 で、面白いのは、子どもの意見と、ひとりでじっくり見たときの自分の感じ方が全然違ったりするんで、二度おいしいじゃないですけど、“こういう視点で見るんだ!”っていう驚きや発見があります。

 もう自分は大人になっちゃったので、フラットに観てるつもりでも、“前のあの感じに似てるな”とか邪念とかも入ってきてしまうんですが、子どもはそんなの関係なしに“カッコいい!”とか“どうなっちゃうの!?”とか、すごいピュアな意見があるので、そういう意見を聞いていて楽しいですね」

――子ども向け番組ではありますが、ストーリーがハイレベルで、たまに子どもには分からないシーンもありますよね。

「たしかにそうです。でも、よくよく考えたら自分が子どもの頃の作品も、“拉致されてしまう作品”がいくつかあったんです。おそらくそれらは、“中国残留孤児”とかがテーマに作られているもので」

(※中国残留孤児:戦後の混乱で親と別れて中国に取り残されてしまった日本人の子どもたちのこと)

――なるほど。

「子ども心に、“うわ連れ去られてる。めっちゃ悲しい……”って思っていました。当時はそれが何のモチーフかはわからなかったけど、“悲しい”だけ残っていて。大人になっていろいろな情報を知ってから見たときに“ああそういうことか”って。

 でも、それ抜きにいまだに心に残っているということは、4、5歳の自分にとってかなり衝撃的な映像だったわけで……ただ、トラウマ的にこんな映像を残すのも、それはそれでいい気がするんですよね」

■「合わせなくても、子どもはしっかり見ているもんなんです」

―ー連れ去りの場面なども、けっこうハードでしたか?

「かなりハードですね。『スピルバン』(※)って作品があるんですけど、スピルバンはクリン星って惑星があって。ここに敵がやってきて滅ぼされるんです。

(※『時空戦士スピルバン』:1986年放送の特撮ヒーロー作品)

 宇宙船で逃げるんですけど、どこの星に逃げればいいか分からない。宇宙をさまようなか、2か月くらいして、残りの食料も水もわずかになって。“この中で1人だけくじ引きで決めて、そいつだけ生き残らせよう!”となり、“ちょっと待ってください。子どもなら食料2人分いけます!”ってなって。

 それが主人公のスピルバンと、一緒に活躍するお姉ちゃん的な存在のダイアナなんです。

 母船から小さい宇宙船で地球まで避難するんですけど、出て行ったときに元の船が自爆するんですよ……」

――うわぁ……。

「爆発した船にお母さんとかもいるわけなんですが……星が攻め込まれる前にも父ちゃんと姉ちゃんが拉致されて、怪人に改造されたりもするのが、本当に悲しいんですよ。

 で、避難して十数年寝っぱなしで、身体も大きくなりました、地球着きました、となり、今度は地球に敵が攻めてきます。“さぁ戦いましょうか”ってなったときに“あれ見たことあるな?”ってなって、それが自分の父ちゃんや姉ちゃんだったんです。いやー、すごく悲しいですよ」

――いまだにそれが焼き付いている?

「焼き付いていますね~。そのときは、戦隊では『超新星フラッシュマン』(1986年)がやっていたんですけど、それも拉致されるんですよ。宇宙人が子どもを拉致して奴隷にしようとするんですが、そこでフラッシュ星の善玉の宇宙人に育てられて、宇宙で育って20年後に地球に帰ってくる。子ども心に、めちゃくちゃ悲しかったですね」

――そういうのを子どもの頃に観るのも大切なことなんでしょうね。

「子どもが分かるレベルに合わせるのは当然だし、子ども向けの作品として出すのはもちろん大事だと思うけど、合わせなくても、子どもはしっかり見ているもんなんです」

――令和になってから全体的に特撮は雰囲気が変わった感じがあると言われますが、どう感じていますか?

「令和というより、やはりがコロナがいちばん大きかったと思います。コロナで撮影が中止になって、4,5回総集編が続く異常事態になって、東映のスタッフさんも“こういうことにならないよう体制を整えないとダメだよね”となったようで、緊急事態宣言が出ても撮影を止めない方法を無茶苦茶考えて。そのなかでロケをしないとか、スタジオで少人数だけでも大人数に見えるような合成技術を『仮面ライダーセイバー』(2020年9月~2021年8月)ごろから考えられてきて。その技術が違和感なく馴染んできたのがここ最近の感じですかね」

■「“限界は超えないためにある!”が令和っぽいと思いました」

――コロナ禍を経て、変革を迎えている感じですね。

「作風で変わった点でいうと、『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)のときに、主人公の充瑠(演:小宮璃央)が言った言葉ですね。いままでヒーローは“限界は超えるためにある!”みたいな感じでしたけど、初めて『キラメイジャー』でレッドが“限界は超えないためにある!”っていうセリフを言ったのが、まさに令和っぽいなと思いました」

――そんなセリフがあるんですか!

「あるんです。そもそも『キラメイジャー』は、“自分がキラキラしてないと、人も助けられない”という話で、メンバーは俳優やお医者さんとか、いろいろな職業についているんです。

 で、敵が現れても“俳優の仕事が忙しいから……”“分かった。今日は俺たちだけで戦うから、そっち行っていいよ”って、仕事を優先させたりするんです。要は、心がキラキラしてないと戦えないから、ですね。ピンチのときに、限界超えて自分達が犠牲になるのはダメなんだと。だから“限界っていうのは、超えちゃダメ”なんです」

――働き方改革みたいですね。

「そうですよね。ここは俺らでやっとくから、みたいな。そこは令和っぽいなと思いましたね」

――2022年は、映画『シン・ウルトラマン』やAmazon Prime Videoで配信された『仮面ライダーBLACK SUN』(※)など超話題作がありましたが、そうした作品とは違う、“1年もの作品”の魅力はなんでしょうか?

(※『仮面ライダーBLACK SUN』:1988年に放送していた『仮面ライダーBLACK』をリブート。完全に大人向けの作品となっており、非常に重厚な社会はドラマとしても見ごたえがある作品)

「面白いところは、やっぱり“共有できること”じゃないでしょうか。最新回を見てツイッターでみんな感想を言ったりとか、作中にすごいキラーワードが出てきて、それがトレンド入りしたりとか。世の中の反応も含めて楽しんでいくのが、たぶん一番の魅力というか、楽しみ方じゃないかなと思います。

 サブスクで一気見するのも当然面白いですけど、特撮作品ってその時の世の中の空気感みたいなのも入ってたりするので……“あ、そういえばこの時こんなだったよな”っていうのが作品の空気感で思い出すことが多いんですよ。個人的な思い出だったりするし、時事ネタだったりもするので……最新の話をなるべく観るのが、面白いところなのかなと思います」

――今もリアルタイムで観てますか?

「もちろん。それって今しかできないことなので。後から見返すっていうのは年を取ってもできるわけじゃないですか。それこそ現代はサブスクも充実してるから、初代『仮面ライダー』も普通に見ることもできますけど、“当時の初代『仮面ライダー』をリアルタイムで観る経験”は絶対にできないわけじゃないですか。だからリアルタイムで観る経験は、何事にも代えがたいのかなと思います」

――普通の連ドラにも通じますけど、それが年間楽しめるわけですね。

「そうですね。年間どころか、ずーっと楽しめるわけですから、特撮は最高です」

篠宮暁(しのみや・あきら)

1983年2月8日生まれ。京都府出身。松竹芸能所属。屈指の“特撮大好き芸人”として『仮面ライダー』など特撮作品にかける情熱は凄まじく、毎週リアルタイムで感想をツイートしているほか、特撮コラムの執筆なども精力的に行なっている。また、日本漢字能力検定(漢検)準1級に合格しており、子供向け漢字ドリルも出版、多方面で活躍している。

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