「どうする家康」ついに今川を見限った元康。駿府の瀬名たちはどうなる?第3回放送「三河平定戦」振り返り

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「どうする家康」ついに今川を見限った元康。駿府の瀬名たちはどうなる?第3回放送「三河平定戦」振り返り

桶狭間敗戦の混乱に乗じて、故郷の岡崎に帰って来た松平元康(演:松本潤)。いよいよここから悲願の独立を取り戻し、織田信長(演:岡田准一)の盟友として天下獲りに乗り出すのかと思いきや、あくまで心は今川の駿府に。

前回吹っ切れて威風堂々と敵中を行進していたのは一体なんだったのでしょうか。「今度はわしがお前たちを守るんじゃ!」なかったのでしょうか。

NHK大河ドラマ「どうする家康」。第3回放送の「三河平定戦」では、強大な織田・水野信元(演:寺島進)らを相手に孤軍奮闘する松平勢が描かれます。

いつまで待っても主君・今川氏真(演:溝端淳平)からの援軍は来ず、もう織田に寝返るよりない……家臣たちは喧嘩をはじめ、酒井忠次(演:大森南朋)と石川数正(演:松重豊)が土下座で説得。

ついに翻意した元康は今川の同僚・吉良義昭(演:矢島健一)を攻め滅ぼし、信長の軍門に下るのでした。

となればもちろん、駿府にいる人質(家臣や妻子ら)の命はありません。次々と処刑されていく侍女たち。果たして瀬名(演:有村架純。築山殿)たちの運命やいかに……。

鳥居忠吉の“節約作戦”

いつか松平の御家再興を夢見て、コツコツと軍資金や武具兵粮を蓄え続けた鳥居忠吉(演:イッセー尾形)。年貢の管理を任されていたため、今川当局の目を盗んで蓄財に励んだのでした。

「これで戦ができるぞ!」

大いに沸き立ち、喜びの海老すくい踊りで盛り上がる三河家臣団。しかし当の元康は、何と言うか微妙な反応が気になりました。

ここは多くの徳川ファンに愛される名場面、もっと感謝を込めて欲しかったところです。

だって考えても見てください。これだけの蓄えをなすのに、忠吉たちがどれだけの危険を冒し(年貢の横領がバレたらただじゃすみません)、窮乏生活に耐え抜いたのか。

備蓄が増えれば、発覚のリスクも高まる(イメージ)

いつになるとも分からない(そもそも実現の保証がない)松平再興のため、目の前にカネがあっても使わず、米があっても食べずに我慢。そんな暮らしを十年ばかり続けたのです。

(米はそこまで保存がきかないため、定期的に古い米から金に換え、いわゆるローリングストックをしていたのでしょう)

どうですか。もしもあなたのおじいちゃんやひいおじいちゃんが苦しい中そこまでして、将来のため(例えば学費とか結婚費用など)にとお金を貯めてくれていたら。想像するだけで泣けそうです。

この感動は、是非とも後世に伝えていただきたい(そのためには、竹千代時代の苦難や絆がもっと丁寧に描かれるべきでした)。大河ドラマがそのような機会として活かされることを願っています。

水野信元との戦い、本田忠真「六度半の槍」

さて、三河平定に乗り出した元康の前に立ちはだかるのは、織田に与する母方の伯父・水野信元。戦場でもサイコロをもてあそぶチンピラ感が個人的に嫌いじゃありません。

元康はこの伯父としばしば戦いを繰り広げますが、それは今川と織田の代理戦争でもありました。せっかくなので、その中の一つを紹介します。

〇七日水野下野守信元ガ兵近郷ヲ侵シ掠ル故 神君再ビ刈屋ヘ発向セラル横根村石ガ瀬ニ於テ又合戦アリ先鋒石川伯耆守数正敵ノ隊長高木善次郎清秀ト槍ヲ合フ吾兵伴藤助先登シ奮戦ス清秀ガ為ニ討タル本多肥後守忠真植村荘右衛門忠安松井左近忠次槍ヲ合セ勇ヲ勵マス中ニモ肥後守一日に六度敵ヲ突崩シ疵ヲ蒙ル七度目ニ槍傷ニ立怺ヘケルガ敵進マズメ槍ヲ接ヘザレ■参河武士ノ吟味ニ六度半ノ槍ト称美シ世に其驍勇ヲ讃嘆スト云々

※木村高敦 撰『武徳編年集成巻之五』永禄四年辛酉年 二月大

時は永禄4年(1561年)2月7日、元康は刈谷(刈屋)へ出兵しました。先鋒は石川数正、敵の大将は高木清秀(たかぎ きよひで)。一番槍で立ち向かった伴藤助(ばんの とうすけ)が返り討ちにされてしまいます。

「者ども怯むな、押し返せ!」

本多忠真らの突撃(イメージ)

劣勢を挽回するべく突撃したのは、本多忠真(演:波岡一喜)・植村忠安(うえむら ただやす。荘右衛門)・松井忠次(まつい ただつぐ。左近)たち。三河武士の意地を見せつけるべく奮戦する中、こと忠真の武勇は凄まじく、一日に六度も敵の軍勢を突き崩しました。

「本多殿、無理をなさるな!」

七度目の突撃で重傷を負ってしまった忠真はやむなく引き上げましたが、敵は恐れて追って来ませんでした。

これを本多忠真「六度半の槍」と呼んで敵味方ともに賞賛の声が贈られたそうです。

本多忠勝、まさかの討死?

しかし武運拙く松平勢は惨敗。大河ドラマでは刈谷城を攻めている最中、織田の軍勢に背後を衝かれて総崩れとなった様子が描かれていました。

「背中に気をつけろよ?甥っ子……」

うーん。流石にこの展開はあり得ないのではないでしょうか。籠城戦というのは外部からの援軍(これを後詰-ごづめ、と言います)が来るまで持ちこたえ、城の内外から挟み撃ちにするのがセオリーです。

もしもし、背中がガラ空きですぞ!(イメージ)

目の前の城を攻めることばかり夢中になって、後方に見張りすら置かない(接近するまで気づかない)というのは、いくら何でも不覚悟が過ぎます。

百歩譲って元康が不覚悟であったとしても、従軍経験のあろう松平家臣団の誰もそれに気づかぬはずはありません。

そして織田と聞いただけでガクブルうろたえてしまう元康。トラウマにも程があるというものです。

「坂部又三郎正彦……行方知れず。日影村、甚三郎……討死。長澤惣四郎……討死。竜泉寺村、利蔵……討死。日影村、周作……討死。坂部藤内……討死。野口茂吉……行方知れず。奥山田村、弥太郎……討死。市場村、直作……行方知れず。本多平八郎忠勝……討死」

続々と報告される死者行方不明者の中に、本多忠勝(演:山田裕貴)の名前を聞いて夏目広次(演:甲本雅裕)は動揺します。予告編にも出ていましたね。

視聴者の皆さんも「えっ、ここで死ぬの早すぎない!?」と思ったのではないでしょうか。あるいは「どうせ生きてたってオチでしょ?はいはい分かってますよ」と(筆者のように)スレた反応を示す方も少なからずいたでしょう。

落武者狩りの皆さんが忠勝の面頬に手をかけた瞬間に目を覚まし、みんな慌てて逃げて行きましたが、こういう時は念のためしっかりと殺して(頸動脈を切ったり、目から脳髄まで突いたりなど)から物色するのが基本です。

皆さんも、落武者狩りをする時は思わぬ返り討ちに気をつけて下さいね。

実はまだ死んでない!吉良義昭その後の話し

「おおっ、松平殿!まさに三河武士の誉れ!果敢に水野を攻められた時の御姿、この義昭(よしあきら)感服いたした!我ら吉良家は力の限り、松平殿をお助け申す!」

「今川様はすぐに立ち直られ、大軍勢を送って下さるに違いない!それまではこの吉良が、松平殿と共にこの三河を守り、織田勢を追い払う!」

今川の忠実な家臣として元康と共闘していた吉良義昭。初登場からハイテンションで飛ばしていましたが、いざ劣勢となるやだんまりになってしまいました。

……8月某日、松平・吉良連合軍 敗北……

そして織田方への寝返りを決めた元康にあっさり滅ぼされます。

吉良義昭の最期?(イメージ)

「なぜじゃ……元康殿……」

大河ドラマ的には恐らくここで退場でしょうが、実際の吉良義昭はもう少し生き延びます。

『徳川実紀』によれば今川を裏切った松平家と敵対、互角の勝負を繰り広げていたところ、酒井正親(さかい まさちか。忠次の父)が調略をもって義昭の弟である荒川頼持(あらかわ よりもち)を味方に引き込みました。

兄弟は元々不仲だったようで、弟の離反により勝機を失った義昭は降伏、元康への臣従を余儀なくされます。

しかし今川を裏切った怨みを忘れた訳ではなく、後の三河一向一揆(永禄6・1563年~永禄7・1564年)に乗じて再び叛旗を翻しました。

この時、松平昌久(演:角田晃広)らも蜂起したものの連携せず、めいめい勝手に戦ったため各個撃破されて逃走。歴史の表舞台から姿を消すことになります。

悪い人じゃなさそうだったので、出来たらまた顔を見せて欲しいですね。

裏切ったな元康!氏真の命で斬られた女性たち

ラスト2分、元康の裏切りによって次々と斬られていった女性たち。このエピソードは史実に元ネタがあり、殺されたのは以下の女性たちです。

処刑される女たち(イメージ)

浅羽三太夫(あさば さんだゆう)の妻と娘 大竹麦右衛門(おおたけ むぎゑもん)の妻 大竹兵右衛門(おおたけ へいゑもん)の妻 奥平貞能(おくだいら さだよし)の妻 西郷正勝(さいごう まさかつ)の妻 設楽貞通(しだら さだみつ)の妻 菅沼貞景(すがぬま さだかげ)の妻 菅沼定盈(さだみつ)の妻 松平清善(まつだいら きよよし)の妻 松平家広(いえひろ)の妻 水野藤兵衛(みずの とうべゑ)の妻

時に永禄4年(1561年)、彼女たちは龍拈寺(りゅうねんじ。愛知県豊橋市)で処刑され、中野新田の十三本塚に葬られました(人数および塚の場所については諸説あり)。

家族を駿府に残している≒松平が独立すれば見殺しにせねばならないのは、何も元康だけではないのです。忠次や数正はじめ、家臣たちも多かれ少なかれ今川に人質をとられた状態だったはずです。

その多大なる犠牲を乗り越えてでも、松平の独立回復は三河人の悲願でした。そういうところの描写をすっ飛ばしているから、何となく元康だけ可哀想に見えてしまいますが、そういう背景にも思いをいたして貰えたらと思います。

次週!第4回放送は「清州でどうする」

初めて元康からアプローチを受けたものの、無礼としてその書状を踏みにじった武田信玄(演:阿部寛)。「聞かなかったことにしてやる」とは、なんて寛容なお方なのでしょうか。

と言うより、あれだけ今川大好きな元康であれば、そもそも主君・氏真を介さず他大名に援軍を求めるなんて越権行為はしないと思いますが……。

あと、画面的に映えるし個人的に激推しの阿部寛が引き立つから嬉しいのですが、信玄公の背後がオープンなのが気になります。信玄公の性格からして、背中をがら空きにして座るのはちょっと不自然に思えました。

そして初回退場が惜しまれていた今川義元(演:野村萬斎)が元康の夢に再登場。これも推しとしては嬉しいのですが、もっとドラマチックな(例えば今川との訣別が決定的になった際「そなたの道をゆけ」と背中を押すような)場面でとっておきの登場でもよかった気がします。

でもこれはもしかしたら、どこぞの法皇様とか上皇様のように「わしだよ。太守様だよ」などと、今後ちょくちょく出て来てくれる展開の前触れかも知れません(個人的には嬉しい)。

トボトボと清州へ(イメージ)

さて、話を戻して織田の軍門に下った元康は、盟約のため尾張は清州へ向かいます。そこで彼らを待っていたのは、織田家の愉快?な仲間たち。

羽柴秀吉(演:ムツヨロシ)に柴田勝家(演:吉原光夫)そしてお市の方(演:北川景子)などなど。彼らを束ね上げる信長との再会に、元康はどう臨むのでしょうか。

NHK大河ドラマ「どうする家康」、来週も楽しみですね!

※参考文献:

『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション 『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 前編』NHK出版、2023年1月

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