「どうする家康」織田・徳川の同盟、藤吉郎の尻、氏真のゲスっぷり…第4回放送「清州でどうする!」振り返り

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「どうする家康」織田・徳川の同盟、藤吉郎の尻、氏真のゲスっぷり…第4回放送「清州でどうする!」振り返り

前回、泣く泣く駿府の家臣や妻子を見捨てて織田信長(演:岡田准一)との同盟を選んだ松平元康(演:松本潤)。

少年時代のトラウマが消えず、完全に気圧されて妹のお市(演:北川景子)を娶らされかけますが、駿府に残した瀬名(演:有村架純)の窮状を知って奮起します。

瀬名を傷つけた旧主・今川氏真(演:溝端淳平)を決して許さない。「わが妻と子を、この手で取り戻しまする!」元康は毅然と宣言しました。

愛する妻子を取り戻すため、再び戦いの場へ赴く元康(イメージ)

NHK大河ドラマ「どうする家康」第4回放送は「清州でどうする!」どうすると言ったって、清州まで来た以上、なすべきは信長の使い走り……もとい盟友として並び立つまでのこと。

「やっかいごとは、白兎殿に押しつけなさるがよろしいかと。そして大切になさいませ。兄上が心から信をおけるお方は、あの方お一人かも知れませぬから」

やがて信長と背中を預け合い、東の強敵(今川、武田、北条など)と戦う日々が幕を開けるのですが……さっそく今回も振り返っていきましょう。

実際には和やかだった(であろう)織田・徳川の同盟

まずは今回放送で言及された時代背景から。

今回は家康が信長と同盟を結び、打倒今川を誓う場面が描かれました。このくだりについて、江戸幕府の公式記録『徳川実紀』では以下の通り記しています。

……君清洲へ渡らせたまへば信長もあつくもてなし。是より両旗をもて天下を切なびけ。信長もし天幸を得て天下を一統せば。   君は旗下に属したまふべし。   君もし大統の功をなしたまはゞ。信長御旗下に参るべしと盟約をなして後。あつく饗応まいらせて帰し奉る。これは永禄四年なり……

※『東照宮御実紀』巻二 永禄四年-同七年「永禄四年元康與信長同盟」

本書によれば「共に力を合わせて天下を切りなびき(征服し)、お互い先に天下をとった方へ従うようにしよう」と盟約したと言います。時に永禄4年(1561年)、これがいわゆる「清州同盟(清須同盟、織徳同盟などとも)」です。

史料に照らし合わせると今回の話はここまで。お市との婚約や過去の思い出、氏真の暴挙もろもろは基本的に一切合切フィクションとなります。

現代の清洲城(模擬天守)。当時はどんな姿だったのだろうか(イメージ)

また中国・紫禁城を思わせるだだっ広い清州城や、お市に案内されて清州城下を見渡す場面なども、基本的にはフィクション。現地にそのような山はなかったはずです。

あるいは筆者が不勉強なだけで、信長の時代はそのような山があったのを、後世まったいらに均して現代のようになったのかも知れません。

まるで北京の紫禁城を思わせる壮大な清州城も、近年の研究成果によってそれを裏づける遺構が発見された……という話も聞きませんが、そうなのでしょうか。

他にもお市が当時日本にはいなかったと思われるオウムを飼っていたり、信長が舶来物のテーブルで酒を酌み交わしていたり等々、本作は時代考証より「信長はとにかくスゴい」というムードありきのため、あまり細かいことは気にせず楽しむのがおすすめです。

誰が言ったか岡田准一の扮する信長を「第六天魔王」ならぬ「V6天魔王」と呼んでいましたが、言い得て妙かも知れません(個人的には面白く感じます)。

乱世は愉快?民の悲しみを顧みないお市の発言

時をさかのぼること15年前、川で溺れたところを救われて以来、ずっと元康(当時は竹千代)に恋心を抱いていたお市。

武芸や馬術に達者な男勝りの姿は、とかく悲劇のヒロインとして描かれがちな彼女のイメージを変える斬新な試みだったのではないでしょうか。

ただちょっと気になったのは、お市の年齢。物語(清州同盟)の時点で永禄4年(1561年)、竹千代に助けられた15年前と言えば天文15年(1546年)。

お市が生まれたのは一般に天文16年(1547年)と言われるため、彼女はまだ生まれていません。よって今回のエピソード一連はフィクションとなります。

まぁ細かなことはさておいて、さらに気になったお市のセリフ。

高野山持明院蔵・お市の方(浅井長政夫人)像

「乱世は愉快。力さえあれば何でも手に入る。ただし男であれば(要約)」

仮にお市(および彼女に多大な影響を与えたであろう信長)に「今は乱世だ」という神の視点があったとしましょう(誰が言ったか「時代というのは虹みたいなもので、当事者にはその色がなかなか見えない」ものですが)。

確かに力さえあれば、欲しいものは何でも手に入るでしょう。でも、片方が「手に入れた」それは、もう片方にすれば「奪われた」ものです。

力で手に入れるとは、すなわち戦って敵を殺し、民を蹂躙すること。その痛み苦しみ悲しみを顧みることなく「愉快」と断じる姿は、21世紀にもなってなお他国を侵略し、少数民族を弾圧する独裁国家に通じます。

戦国時代と言っても、みんながみんな天下取り(いわば世界征服)の野望に戦っていた訳ではなく、多くの大名たちはただ貧しい暮らしの中で生きるための奪い合いを繰り返していたに過ぎません。

実際にお市たちが発言したならともかく、こういう思想の表現にはもう少し慎重であるべきか?と、一視聴者として感じました。

あなたなら蹴飛ばす?藤吉郎の尻

「さぁ、どうぞ!」

家中のみんなから尻を蹴飛ばされて「ありがとうごぜぇやす!」と卑屈に笑う木下藤吉郎(演:ムロツヨシ)。後の豊臣秀吉ですが、その目は笑っていません。

あれはきっと誰が何回蹴飛ばしたかしっかり覚えていて、後日必ず復讐するタイプです。実際に蹴飛ばした柴田勝家(演:吉原光男)は、早くも死亡フラグを立てていました(勝家は後に秀吉の手で滅ぼされます)。

「さぁどうぞ!」……ちょっと蹴りたくない(イメージ)

もし元康たちも蹴飛ばしていたら、きっと滅ぼされていたことでしょう。そういう(秀吉が天下を獲るという)お約束をみんなが知っているからこそ、恐ろしさが引き立つ演出ですね。

しかし……物語としては興味深いし、演技も絶妙でしたが、見た瞬間「これ、子供が見たら絶対マネするよね?」と嫌悪感を抱きました。

もしこれが筆者の子供時代なら、さっそく月曜日にも被害を受けていたことでしょう。絶対やるでしょ猿ごっこ。「ホラ、笑って『ありがとうごぜぇやす』って言えよ!」かつて意地悪していた同級生たちの顔が目に浮かぶようです。

皆さんの楽しい気分に水を差したくないのですが、野暮を承知で言わせて下さい。こういう人の尻を蹴飛ばすような「いじめ」って面白いですか?

面白いよ!と心から思われるなら、これ以上言うことはありません。ただ、元康には「こんなのおかしい!」というメッセージを発して欲しかったと思います。

立場上、柴田勝家に抗議しろとまでは言いませんが、藤吉郎に対してフォローの一つもできなかったのでしょうか。

ともあれ、これが後に伏線となって「そなた(家康)はわしの尻を蹴らなんだから、悪いようにはせぬ」などと恩情をほどこす展開が予想されます。

嫌がる瀬名を無理やり……氏真ゲスっぷりは本当か

一方の駿府では、元康の裏切りに対する見せしめとして、その瀬名が氏真の夜伽役に堕とされました。

劇中でも言及された通り、関口家は今川家に連なる名門。その娘にこんな仕打ちをすれば、さすがに関口氏純(演:渡部篤郎)も黙ってはいなかったでしょう。もし事実であれば。

もちろん諸々フィクションで、氏真がそんなゲスな振る舞いに及んだ史料はありません(近年の研究で発見された、とかなら別ですが)。

一族のために氏真の寝所へ赴きながら、これ見よがしに(第一回放送で元信があげた)木彫りの兎を持っていたことで、火に油を注いでしまった瀬名。

氏真は脇差で瀬名の指を切り、血文字で「たすけて せな」……あえて仮名遣いにはツッコみません。これは視聴者への配慮というものです。

また駿府から清州へ運ぶまでの間に血が乾いて変色しないのか、などとも言いません。やっぱり血は鮮やかに赤い方が怖いですからね。

きっと家臣の誰かが気を利かせて、赤い染料でも上塗りしたのでしょう。でも、脅迫したいならもう一押し足りない感じ。

こういう時は耳か鼻を切り落として書状と一緒に送りつけるのが効果的。でないと血が本当に瀬名のものか、リアリティが出ません(ドラマ的にNGなら、髪をバッサリ切って添えるとゲス感が高まります)。

しかしこんなわざとらしい手口で動揺するくらいなら、最初から「たまたま勝っただけ」の(将来的な安定性に欠ける)織田に寝返るべきではありません。

罠じゃないの?と疑ってかかるまでもなく、一笑のもとに破り捨てるくらいのメンタルでないと、たちまち詐欺の餌食です。

今川家滅亡後、紆余曲折あって家康の下で安らかな余生を送った氏真。もし瀬名を手籠めにしていたら、絶対に許されなかったはず(画像:Wikipedia)

それはさておき、氏真の名誉にかかわる大事なことなので二度繰り返しますが、氏真が瀬名を手籠めにしたような事実はどの史料にも記されていません。

関口氏純についてはこの件に関連して永禄5年(1562年)に切腹を命じられたとあり、妻の(演:真矢ミキ。関口夫人)も後を追って自害したと伝わります(『松平記』による)。

ただし氏真が永禄7年(1564年)・同9年(1566年)に関口伊豆守(氏純。ほかに伊豆守を称した者はいない)について言及した文書を発行しているため、元康の裏切りからしばらく後まで生きていたようです。

なお血文字と言えば元康の幼少期、於大の方(演:松嶋菜々子)が竹千代(元康)の無事を願って、自分の血で阿弥陀経を書いて奉納したエピソードがあります。今回の暴挙は、それが元ネタになっているのでしょうか。

次週・第5回放送「瀬名奪還作戦」

一度は捨てた妻を凌辱され、我が子がどうなっているかも分からないけど(普通なら竹千代は殺され、亀姫は売り飛ばされていてもおかしくない)、とにかく取り返すべく立ち上がった元康。

服部半蔵正成。忍者のイメージが強いが、武士としても多くの武勲を立てた豪傑。これからの活躍が楽しみ。「徳川十六神将図」より

まずは何とかして瀬名たちを奪還しないと……というわけで、次週の第5回放送は「瀬名奪還作戦」。予告編を見る限り、本多正信(演:松山ケンイチ)と服部半蔵(演:山田孝之)が初登場&活躍するようです。

ところで、オープニングに名前を見かけて興奮したのですが、岡部元信(演:田中美央)ってどこにいました?最後に氏真が気勢を上げていた場面に紛れていたのでしょうか。

筆者が見落としていただけかも知れませんが、桶狭間では義元の首級を奪還した猛将だけにもったいなかったですね。でも、今後の活躍を楽しみにしています。

果たして元康は、愛する瀬名を奪還できるのか……次週の放送も、目が離せませんね!

※参考文献:

経済雑誌社『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション 小和田哲男『詳細図説家康記』新人物往来社、2010年3月 二木謙一『徳川家康』ちくま新書、1998年1月 『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 前編』NHK出版、2023年1月

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