「早苗饗」ってどう読むか分かる?失われつつある日本農業の伝統文化について

Japaaan

「早苗饗」ってどう読むか分かる?失われつつある日本農業の伝統文化について

豊作の神にかかわる「早苗饗」

皆さんは「早苗饗」の読み方はご存じですか? 実は「さなぶり」と読み、農村などで田植えなどの行事が終わったあとで、一息つく時期のことです。今も農協では「さなぶり」の時期にセールを行ったりします。

より厳密に言えば、早苗饗は単なるシーズンのことではなく、田植えを無事に終えたことを神様に感謝し、作業の従事者をねぎらう行事のことを指します。

こうして農民たちは、農作業後に一息つくと同時に、植えた苗が台風や病害虫の被害に遭わず、秋には豊作になるように神に祈るのです。

現代の田植え作業

一説では、まず田植え前に田の神である「さ」を招き寄せる「さ・降り」が行われ、田植えが終わるとそれを天に昇らせる「さ・昇り」が行われていたとも。この「さ・昇り」が「さなぶり」の語源というわけです。

実際、早苗饗は地方によって呼び方が異なるのですが、「さなぶり」と呼ぶのは主に東北や関東地方で、四国や九州では「早昇(さのぼり)」と呼ばれています。

また語源としては、苗代から田に移し植える稲の苗「早苗(さなえ)」を振る舞うのが変化して「さなぶり」になったという説もあります。

さらに北陸や中国地方では「シロミテ」と呼ばれており、「シロ」は植田で「ミテ」は完了、つまりは田植えが終わったという意味です。

では、早苗饗ではどんなことが行われていたのでしょうか?

失われゆく文化

行事の内容は地方によってまちまちですが、まず、田の神に田植えが終了したことを感謝し、農作を願って山へ送り出します。その後、田植えの従事者たちで無事に田植えが終わったことをお祝いするという流れが一般的です。

このお祝いで振る舞われるご馳走は、小豆飯、五目飯、炊き込み御飯、寿司、ぼた餅などさまざまです。

ぼた餅

昔は苗代作りから田植えが終わるまでの期間、農家は多忙を極めていました。田植えは一定の期間に行う必要がある上に、当時は裏作として麦を作ることが多く、田植えの途中で麦刈りや脱穀の作業も入っていたのです。

また、田んぼに馬鈴薯や玉葱を作ることもあり、その収穫後にすき起こしや畦塗りなど田植えの準備を行いました。

そして休む間もなく田植えが行われます。今でこそ大型機械で一気に作業ができますが(そのかわり現代は少数の農家が広大な田んぼで大規模に作業することも多く、時間を食うのですが)、昔はほぼ全てが人海戦術でした。

こうした農業の苦労が想像できないと、早苗饗というイベントの持つ意味はよく理解できないかも知れません。事実、農業の形態が大きく変化している現在では、農協のイベントくらいでしか「さなぶり」という言葉はお目にかからないことも多いです。

その意味では、早苗饗は忘れられ、失われていく文化と言えるでしょう。

参考資料
季語と歳時記
東白川村役場
JAcom 農業協同組合新聞
「早苗饗(さなぶり)」 の由来と語源

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

「「早苗饗」ってどう読むか分かる?失われつつある日本農業の伝統文化について」のページです。デイリーニュースオンラインは、早苗饗日本の農業日本語カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧