「どうする家康」正信&半蔵の名コンビ始動、服部党の忍びたちの意地…第5回放送「瀬名奪還作戦」振り返り
さて、清洲から岡崎へ戻ってきた松平元康(演:松本潤)。そこへ母・於大の方(演:松嶋菜々子)と久松長家(演:リリー・フランキー)夫婦と子供たちがやって来て、今川討伐を急かします。
まずは鵜殿長照(演:野間口徹)の守る上ノ郷城から……しかしその前に、今川の人質となっている瀬名(演:有村架純。築山殿)らを取り返さねばなりません。
誰も良策の浮かばない中、大久保忠世(演:小手伸也)が推薦したのは本多正信(演:松山ケンイチ)。松平家中でもイカサマ師と悪評高い男ですが、その献策は「忍びの服部党に、瀬名たちを救出させる」というものでした。
さっそく正信は服部党の棟梁・服部半蔵(演:山田孝之)を説得。没落していた服部党28名を動員して任務を遂行します。
しかし急に連れ出す人数が3人(瀬名と子供2人)から5人(関口氏純、巴、家来2人に侍女のたね)追加されて8人に増えるわ、あまつさえその計画を漏洩するわで見事に失敗。
大鼠(演:千葉哲也)や穴熊(演:川畑和雄)ら熟練の忍びたちは鵜殿長照によって討ち取られ、正信・半蔵らは這々の体で岡崎へ逃げ帰ります。
関口家の出奔未遂に憤った今川氏真(演:溝端淳平)は、瀬名たちに死罪を申しつけるのでした。
こうなっては一刻の猶予も許されません。正信は次の策として、上ノ郷城を攻めるドサクサに紛れて長照の子である鵜殿氏長(演:寄川歌太)と鵜殿氏次(演:石田星空)を生け捕り、瀬名たちと交換することを進言します。
果たして次こそは上手くいくのでしょうか……という訳で、NHK大河ドラマ「どうする家康」第5回放送「瀬名奪還作戦」は来週まで続くことに(このペースで、一年間尺が足りるのかちょっと心配ですが)。
次週予告を見る限り、生け捕られた鵜殿兄弟と瀬名たちが人質交換される(史実に軌道修正される)ことが予想されるため、今回の奮闘は完全に空振りとなってしまいました。
果たして正信&半蔵による瀬名奪還作戦(鵜殿兄弟の生け捕り)、どんな形で成功するのでしょうか(あれ、主人公の影が薄すぎる気が……)。
それでは今週も気になった人物や事件をピックアップ、振り返っていきましょう。
岡崎城へやってきた母一家「余計な憂い事は忘れなされ!妻も子もすぐまた持てます!」……そう言って元康を励ます?於大の方。
孤独な元康の前で、幸せな家族を見せつける於大の方たち(イメージ)
自分は岡崎城へ再婚した夫とその子供たちをわんさか連れてきて幸せぶりを見せつけつつ、今にも妻子が殺されそうな(あるいはもう殺されているかも知れない)元康に、それを言いますか?
以前の「国や家臣のためなら……」までであれば、まぁ戦国時代に生きる君主としての厳しさと好意的に解釈できなくもありませんが、今回のセリフはさすがに無神経すぎるのではないでしょうか。
(だったら今すぐお前の夫と子供たちを皆〇しにしてやろうか!?どうせ「すぐまた持てる」んだろう?!)
なんて暗い感情が芽生えたとしても無理からぬところです。これから岡崎城内に住む気満々のようですが、もし筆者が元康の立場であれば、城下に館でも与えてそっちへ住まわせると思います。
また、子供たちに対して父上(久松長家)よりも兄上(元康)の方が偉い、とかいちいち言うのもどうでしょうね。元康も長家も、お互い気まずいでしょうに。
長家が大人の度量で「そうじゃ、父が元康殿にお仕えいたす」と笑っていたものの、内心面白くないのは明らか。恐らく彼女は夫の尻を叩いて(出世するよう奮起を促して)いるつもりなのでしょうが……。
ちなみに永禄6年(1563年)に元康は「家康」と改名しますが、この家の字は長家から譲られたもの。元康が長家を義父として重んじていたことがわかります。
この時、長家は主君である家康に遠慮して久松俊勝(ひさまつ としかつ)と改名。こっちの方が有名でしょうか。
また、子供たちの中に久松源三郎(げんざぶろう)という名前が出てきましたが、彼はやがて成長して久松勝俊(かつとし)と改名。今川の人質に出され、その後に武田信玄(演:阿部寛)の元へ身を寄せるなど波乱の人生を送ることに。
最終的に松平の苗字を許されて松平康俊(やすとし)と改名。公式サイトでは「coming soon……」と表示されていましたが、誰がキャスティングされるのか、楽しみですね。
名コンビ誕生?本多正信と服部半蔵の活躍に期待「お方様とお子様方を、駿府からこっそり盗み出すのです」
うん、そうだね。それが出来たら苦労しないね……そう思ったのは、きっと筆者だけではないでしょう。
まさに言うは易しの典型ですが、では実際どのように行うのか、その手段として服部党の忍びを使うということでした。
半蔵は「忍びはやるなと、父の遺言がある」と固辞していたものの、何か出典(元ネタ)はあるのでしょうか。
押し問答の末に半蔵へ銭を押しつけ(半蔵は押しに弱い性格設定のようです)、いざやると決まったら、鉛玉?を穴に転がし入れてピタゴラスイッチ。
報せを受けた穴熊が、狼の遠吠えで雌伏していた仲間たちに再結集を促すシーンは、ちょっとワクワクしてしまいましたね。
しかし永らく盗みで糊口をしのぎ、ガラの悪い服部党の忍びたちを毛嫌いする半蔵に、「わしも、こいつらが嫌いじゃ」と聞こえよがしに同意する正信の態度はいかがなものでしょうか。
これから命を賭けて共に闘う仲間に対して、敬意や誠実さが何もありません。もし筆者が忍びの立場であれば「何だこの野郎、今に見ておれ」と何がしかの機会(それが何かは、その機会まで秘密です)を狙うようになります。
いくらバカにしていたって、そんな彼らを恃みにするしかない状況です(少なくとも劇中においては)。半蔵も正信も、そして岡崎で笑っていた家臣団も、もう少し配慮があって然るべきでしょう。
それにしても詐欺ばかりの正信はともかく、特に悪さもしていない(少なくとも劇中で言及がない)はずの半蔵まで「鼻つまみ者同士」と言われていましたが、どういうことでしょうか。
本作で「忍びは卑しい」という価値観があることは解りました。だから忍びを使う半蔵も卑しまれているものと考えられます。
しかし「アイツは忍びを使う」と大っぴらに知れ渡っていたとしたら、随分と仕事がやりにくかったはずです(それは遠回しな利敵行為につながるのですが……)。
「命懸けで働いておる者を笑うな!」
家臣団を叱りつける元康。かつて大高城で命懸けの家臣たちを見捨てて逃げようとした(第1回放送)彼ですが、その反省と成長が見られますね。
(言うまでもなく、元康が家臣を見捨てて逃げようとしたのは完全なフィクションです。念のため)
ところで、新キャラ登場に際して元康が自分の家臣を把握していないのはいただけません。15歳で岡崎へ久しぶりに戻って来た時点ならまだしも、初陣以降は誰一人として欠かせない貴重な戦力です。
そして「大高兵粮入の時も足の骨を折ったと仮病でサボった」などと言及されていましたが、『佐久間軍記』によると正信は桶狭間の合戦(丸根砦の攻略)で膝を負傷。以来足を引きずるようになっています(決して仮病使いでも臆病者でもなかったのです。念のため)。
穴熊、大鼠……服部党の忍びたちが見せた「プロの意地」忍装束に身を包んだ、ステレオタイプないかにもな忍者(イメージ)劇中でもカッコよくアクションしていましたが、「大河ツアーズ」において「そのイメージは後世の創作」とバッサリでした。
さて、瀬名奪還作戦を請け負った伊賀者たち。穴熊については未詳ですが、大鼠についてはモデルが実在するようです。
大鼠の二つ名で呼ばれた神谷権六(かみや ごんろく)。この時点ではまだ登場せず(後の高天神城攻めで活躍)、当然この時点では死んでいません。
せっかくならもっと活躍して欲しかった(と言うより、実在モデルがいるのだから当然活躍すると思っていた)のですが、あの口ぶりから早くも退場のようです。
次週予告では大鼠の娘(演:松本まりか)が「お前が次の大鼠(女大鼠)だ」と告げられていたようなので、一縷の望みも残されてはいないでしょう。
ところで、瀬名たちが軟禁されていた関口邸について、劇中では「表と裏に2人ずつ、中に2~3人」の見張りがいると言われていました。
合計6~7人とのことですが、伊賀者が28名いるなら強行突破できそうなものです(もちろん逃走ルートや手段などの確保もあるため、一度に全員ではかかれないでしょうが)。
しかし途中で「連れ出す人数を3人(瀬名と子供2人)から8人(関口氏純、巴、家臣2人に侍女たねを追加)にして欲しい」と無茶なリクエストが入ります。
そんなの無理だ……拒否する半蔵に対して、出世欲に目が眩んだ正信は「彼らも武士だから、内にも味方が出来たと思えば……」なんて言いくるめて強行してしまいました(どうも半蔵は武士という言葉に弱い設定みたいです)。
でも武士とは言っても、戦力になる可能性がある男性は氏純と家臣2人。しかも事前の打ち合わせもなく当日ぶっつけ本番で、どれだけ連携できるとも思えません。
更には大鼠が「出来るかどうかは考えない。やれと言われたことをやるまでだ」なんてカッコよげに言っていたものの、果たしてそれがプロフェッショナルなのでしょうか。
どんな無茶ぶりも「命令だから(やるにはやるけど、その結果については知らないよ。命じたお前の責任だよ)」と安請け合いするよりも、無理なものは無理と諫言できる方がよほどプロフェッショナルに相応しいと思うのですが……。
まして失敗すれば仲間が命を失う場面ですから、なおさら慎重であるべきところ。
現代でもよく「これくらいの事も出来ないで、それでもプロか!」なんて言う方がいるものの、出来ることはきっちりやり遂げ、出来ないことはきちんと見極めてこそのプロフェッショナルではないでしょうか。
終わりにせっかくの脱出計画を「お別れが言いたいから」とお田鶴(演:関水渚)に漏らしてしまい、死罪を申しつけられてしまった瀬名一家。
お田鶴も「どうか寛大なご処置を」なんて言っていましたが、前回「死一等を減じて情けをかけてやる」と氏真に言われたのをお忘れでしょうか。もう後がない状況で出奔を図ればどうなるか、巴(演:真矢ミキ)ともども考えが足りません。
一つ態度を誤れば殺されかねない状況下にありながら、物語を展開する都合によって色々すっこ抜けているのが散見されるせいか、今一つ緊迫感に欠ける展開が続きます。
いざ脱出に際して仏像を持ち出す場面もその一つ。そんな余裕があるのか!とツッコミたくなりますが、これは前作で「こんな事なら仏像を持ってくりゃよかった……」などとぼやいていた某佐殿のオマージュでしょうか。
次週の予告ではいよいよ元康の上ノ郷城攻め。第6回放送のサブタイトルは「続・瀬名奪還作戦」。このペースで、家康が死ぬまで残り約半世紀が年末までに終わるのか、ちょっと心配になってしまいます。
ちなみに半蔵はこの時点で16歳。『寛政重脩諸家譜』によると上ノ郷城攻めで忍び6~70名を率いて大活躍するのですが、大河ドラマではどうアレンジされるのか、次週も忍者活劇に注目ですね!
※参考文献:
『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 前編』NHK出版、2023年1月日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan