郷土料理「しもつかれ」の民俗学的な起源は?その栄養価と宗教的意味を解説
「しもつかれ」の奥深さ
北関東で「しもつかれ」もしくは「すみつかれ」と呼ばれている郷土料理があります。ご存じの方や、食べたことがあるという方も多いでしょう。
郷土料理と言うと、単純に地域の食材を使った素朴な料理というイメージがありますが、しもつかれはその出自がやや謎めいている点や、民俗とも深く関わりがある点、そしてその栄養価の高さなど、単なる郷土料理の枠には収まらない奥深さを感じさせます。
しもつかれはどのような料理かというと、正月に食べて残った塩引き鮭の頭の部分と、節分で播いた豆、そして大根のすりおろし、にんじんなどの根菜類や酒粕をまとめて煮込むものです。
つまり、しもつかれは余った食材を上手に活用するレシピで、上述の材料からも分かる通り、その栄養価もとても高いのです。
もともと鮭という食材は捨てるところがないと言われており、必須アミノ酸が豊富な上に、動脈硬化を予防する不飽和脂肪酸、高い抗酸化力を持つアスタキサンチンも多く含まれています。
豆まきで使う大豆にはタンパク質、ビタミン、ミネラルが詰まっており、根菜類は食物繊維も多く含まれています。そこに、肌の健康維持や疲労回復にも効く酒粕が入っているのですから、もう言うことなしです。
霊的な力を持つ料理?ところでこの「しもつかれ」、語源は栃木県の旧国名である「下野国(しもつけのくに)」に由来するとか、工程の「酢み漬け」が「すみつかれ」になったなど、諸説あるようです。
さらに民俗学的な興味を引くのは、しもつかれはお稲荷さんへのお供えでもあるという点です。旧暦二月の初午の日(現在の三月上旬あたり)に、しもつかれを赤飯と一緒に藁で包み、家内安全と無病息災を祈願する風習があるのです。
要するに「縁起物」なのですが、かつては、しもつかれは初午の日に作らないと縁起が良くないとすら言われていたそうです。ここには、しもつかれの栄養効果以外にも、特に重要視された宗教的な理由がありそうですね。
そもそも、しもつかれは江戸時代の天保の飢饉の頃に豊作祈願として作られたのが発祥とされており、材料もよく見ると、鮭の頭や大豆(福豆)など、悪霊や邪気を追い払う霊力があるとされているアイテムばかりです。
こういった点を見ていくと、しもつかれはただの残り物を使った郷土料理ではなく、最初から霊的な意味を込めて作られた料理だったのかも知れないと考えさせられますね。
参考資料
うちの郷土料理:農林水産省
にっぽんの郷土料理観光事典
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan