「どうする家康」本多正信の寝返りでますます泥沼化…第8回放送「三河一揆でどうする!」振り返り

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「どうする家康」本多正信の寝返りでますます泥沼化…第8回放送「三河一揆でどうする!」振り返り

一向門徒の権利(不入の権)を侵害して無理に年貢を取り立てたため、思わぬ抵抗に手を焼くことになった松平家康(演:松本潤)。

たかが坊主と侮っていたら信仰の力に圧倒され、忠義との板挟みになった家臣たちが次々と裏切る異常事態に。

もう誰も信じられない……動転する家康は瀬名(演:有村架純。築山殿)の手を引いて部屋に引き籠もってしまうのでした。

NHK大河ドラマ「どうする家康」第8回放送は「三河一揆でどうする!」。徳川家康の人生における三大危機と言われた三河一向一揆(永禄6・1563年~永禄7・1564年)の始まりです。

「三河はわしの家だ」だから何でも思いのまま、と思ったら大間違い。手痛いしっぺ返しに、家康はどうするのでしょうか。今週も気になる人物や事件をピックアップしていきましょう。

一向一揆に寝返った者たち

三河国における一向宗の勢力は強く、松平家中でもそのおよそ半数が寝返ったとまで言われる影響力を持っていました。

劇中では渡辺守綱(演:木村昴)や夏目広次(演:甲本雅裕)、そして本多正信(演:松山ケンイチ)らの裏切りに愕然とする家康。しかし、実際にはこんなもんじゃありません。

三河一向一揆の死闘。月岡芳年筆

石川康正(いしかわ やすまさ。石川数正の父) 伊奈貞平(いな さだひら。瀬名の侍女“たね”の兄弟?) 伊奈貞正(いな さだまさ。貞平の弟) 大原惟宗(おおはら これむね。家康祖父・清康の代から仕えた) 筧正重(かけい まさしげ。家康祖父・清康の代から仕えた) 加藤教明(かとう のりあき) 久世長宣(くぜ ながのぶ) 酒井忠尚(さかい ただよし。酒井忠次のおじか) 榊原清政(さかきばら きよまさ。榊原康政の兄) 高木広正(たかぎ ひろまさ) 鳥居忠広(とりい ただひろ。鳥居元忠の弟) 内藤清長(ないとう きよなが。家康祖父・清康の代から仕えた) 蜂屋貞次(はちや さだつぐ。劇中「半之丞」と呼ばれていたのは多分彼) 本多正重(ほんだ まさしげ。本多正信の弟) 松平家次(まつだいら いえつぐ) 松平信次(まつだいら のぶつぐ 矢田作十郎(やだ さくじゅうろう。家康父・広忠の代から仕えた)

……などなど。代々忠義を尽くしてきた家臣たちが次々と寝返り、家康に刃を向けます。

「鎗の半蔵」こと渡辺半蔵守綱。今後の大暴れにも期待。

また親子や兄弟が信仰と忠義に揺れながら、骨肉の争いを演じるさまは正しく地獄絵図だったことでしょう。

ちなみに石川数正(演:松重豊)も一向門徒でしたが、家康に忠義を誓うために改宗。父と戦いました。他にも多くの家臣たちが忠義を選んだことについて、家康はもっと感謝すべきです。

吉良義昭の調略に、家臣たちはどうする?

さて、相次ぐ裏切りに沈む家康陣営とは打って変わって、大盛り上がりの一向一揆陣営。奥座敷?で千代(演:古川琴音)がお酌していたのは吉良義昭(演:矢島健一)と松平昌久(演:角田晃広)。

史料を見る限り、三河一向一揆とほぼ同時期に叛旗を翻してはいるものの、連携した様子は見られません。でも話がとっ散らかっても何なので、共同戦線を張った説を採ったのでしょう。

「本来なら、吉良様こそが三河の主」

これは吉良家が松平や今川よりも家格が高い(吉良は清和源氏・足利氏の流れをくみ、今川の本家に当たる)ためで、世に「足利将軍家が絶えれば吉良が継ぐ」とさえ言われました。

しかしそう聞いて面白くないのは松平昌久。内心「家康を潰したら、次はお前の番だ」と言わんばかりの表情を覗かせていましたね。

父・鳥居忠吉(演:イッセー尾形)ともども、無二の忠節を尽くした鳥居元忠。

さて、そんな吉良義昭は松平家臣団に対して露骨な調略工作を展開。あの夏目広次に家老待遇を約束する他、榊原康政(演:杉原遥亮)・本多忠勝(演:山田裕貴)・平岩親吉(演:岡部大)・鳥居元忠(演:音尾琢真)なども動揺します。

ただ彼らの名誉を守るために付言すると、三河一向一揆に際して彼らが家康への忠義を忘れたとする記録はありません。

もちろん彼らが一切悩んでいなかったという証拠もないため、このような描写がされたのでしょう。しかし榊原・本多・平岩・鳥居らは松平家臣団でも一、二を争う忠臣としてファンに愛されているため、今回は少し残念でした。

土屋長吉重治の最期

各地で激戦が続く中、応援を求められた家康は形勢逆転を期して自ら出陣。『徳川実紀』によればこれは上和田城(砦)からの要請で、大久保忠勝(おおくぼ ただかつ)と大久保忠世(演:小手伸也)が守備していました。

大河ドラマでは一向門徒の拠点へ攻め込む演出となっていましたが、一揆勢に内通していた土屋長吉重治(演:田村健太郎)は家康を「北が手薄」と罠に誘い込みます。

家康、危うし(イメージ)

果たして絶体絶命の窮地に陥った家康(家臣たちは、みんな家康を放って逃げたのでしょうか?薄情ですね)。やはり決意が揺らいだ長吉は家康をかばって身代わりに。

それから何やかんやあって(あの状態から、どうやって脱出したのでしょうか?なぜ一揆勢は長吉一人に動きを止めたのでしょうか?)、家康は岡崎城へ生還。

息絶え絶えの長吉から「油断するな。まだ近しい家臣に裏切り者がいる」と聞かされ、疑心暗鬼に陥った家康。いくら自分をかばってくれたからと言って、人の話を何でも鵜呑みに信じてしまう悪い癖は、ずっと直りませんね。

ちなみに『徳川実紀』によれば、家康は一人で救援に向かい、窮地に陥ったところを土屋長吉重治が助け出したとなっています。

……正月十一日上和田の戦に賊徒多勢にて攻来り。味方難儀に及ぶよし聞しめし。御みづから単騎にて馳出で救はせ給ふ。その時賊勢盛にして殆危急に見えければ。賊徒の中に土屋長吉重治といふ者。われ宗門に與すといへども。正しく王の危難を見て救はざらんは本意にあらず。よし地獄に陥るとも何かいとはんとて。鋒を倒にして賊徒の陣に向て戦死す。この日御冑の内に銃丸二とゞまりけるが。御鎧かたければ裡かゝず。……

※『東照宮御実紀附録』巻二「土屋重治見家康危急内応」

最後に「御冑の内に銃丸二とゞまりけるが。御鎧かたければ裡かゝず(二発の銃弾を受けたが、装甲が堅かったため裏まで貫通しなかった)」とあり、これが劇中で描かれた兜(冑は鎧とも兜とも解釈可能)の鉄砲疵にアレンジされたのでした。

それにしても、激しい合戦の最中でしょうに、陣頭で指揮を執るべき重臣たちがずらりと並んで悲しんでいるシーンにはやきもきさせられます。

悲しむのは勝った後にしなさい、このあほたわけが!(戦さの原因を作った張本人が、戦さから目をそむけてどうする!)私が瀬名なら、そう家康のお尻をひっぱたいたかも知れません。

次週・第9回放送「守るべきもの」

さて、優秀な軍師・本多正信の寝返りによってますます泥沼化しそうな三河一向一揆。今まで散々いかさま師だの何だのと嘲り倒した報いと言えるでしょう。

家康を狙った凶弾(イメージ)

劇中ショックを受けていたようですが、よく裏切らないと思いましたね?服部半蔵(演:山田孝之)や女大鼠(演:松本まりか)らに家臣たちを監視させようとする猜疑心があれば、真っ先に疑いそうな人物ですが……。ともあれ、正信は新天地での活躍に期待大です。

かつて今川義元(演:野村萬斎)より受けた「民こそ天下の主であり、武士は民に生かされており、見放されたら死ぬ」という教えをすっかり忘れてこの体たらくです。

子貢問政。
子曰、足食、足兵、民信之矣。
子貢曰、必不得已而去、於斯三者何先。
曰、去兵。
曰、必不得已而去、於斯二者何先。
曰、去食。自古皆有死、民無信不立。

※『論語』顔淵第十二

【意訳】子貢(しこう)が孔子(こうし)に政治の要点を尋ねる。孔子は「民に食糧を与えて、軍備を整えて安全を保障することで、信頼を得る」と答えた。

子貢は重ねて「もし三つを揃えられねば、何から削るべきでしょうか」と問う。孔子は「その場合は、軍備から諦めよう」と答える。

子貢は更に「残った食糧と信頼も両立できねば、どちらを捨てましょうか」と問う。孔子は「食糧を諦める。たとえ餓死しようが、そもそも人間は必ず死ぬものだ。しかし信頼関係がなければ、絶対に社会は成り立たない(民、信なくんば立たず)」と答えた。

……もはや信頼関係もへったくれもない、瀬名の「一つの家が、ばらばらじゃ」そのもの。しかし、現実を受け止めなければ先がありません。

義元の教えを思い出した家康は「守るべきもの」のために決断を迫られます。果たして家康はどうするのか、また空誓上人(演:市川右團次)はどう受け止めるのか。次週の展開に注目です。

※参考文献:

『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 前編』NHK出版、2023年1月 『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション

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