最強生物「クマムシ」がヒトの命を救うかもしれない。特殊なタンパク質を利用し、医薬品を安全保管

カラパイア

最強生物「クマムシ」がヒトの命を救うかもしれない。特殊なタンパク質を利用し、医薬品を安全保管
最強生物「クマムシ」がヒトの命を救うかもしれない。特殊なタンパク質を利用し、医薬品を安全保管

[画像を見る]

 カラパイアに何度も出演してもらっている緩歩動物(かんぽどうぶつ)のクマムシは、地上最強生物として知られている。

 クマムシは、ほぼあらゆる過酷な環境に耐えることができる。さらに銃で射出され、砂に叩きつけられても死なないことが明らかとなった。

 クマムシの強さの秘訣は、極限の環境下では「乾眠(かんみん)」と呼ばれる休眠状態になれるからだ。

 クマムシはDNAの損傷を修復するための特殊なタンパク質を持っており、休眠状態下でも自分の細胞が壊れないよう体を守ることができる。

 米ワイオミング大学の研究者たちは、そんなクマムシのタンパク質を利用することで、冷蔵庫がなくても医薬品を保管できることを発見したそうだ。

 これまで届けることが難しかった国や地域にまで安全に薬を安運べるようになり、わたしたちの医療をさらにいいものにしてくれる、そんな可能性がある発見だそうだ。

・極限状態を耐えるクマムシのスーパーパワー
 「クマムシ」は、4対8本のずんぐりとした脚でゆっくり歩く姿から緩歩動物(かんぽどうぶつ)、また形がクマに似ていることからクマムシと呼ばれている。

 およそ1000種以上(うち海産のものは170種あまり)が知られており、どれも小さく、体長1mmもない超小型生物だ。

 体は小さいが、そこには大きなスーパーパワーが秘められている。。クマムシは、高温、低温、真空、放射線、高圧、乾燥、酸、アルカリ、有毒物質など、あらゆる環境に耐えることができる。

 100度の熱さに耐えられるかと思えば、ほぼ絶対零度の凍える寒さにも耐えられる。それどころか、空気がなく強烈な紫外線が飛び交う宇宙に連れて行っても死なないのだ。

 その理由は、DNAの損傷を修復するための特殊なタンパク質を持っているからだ。

[画像を見る]

photo by iStock

・クマムシの特殊なタンパク質を利用し、医薬品を乾燥保存
 そして今回、ワイオミング大学の研究チームが注目したのは、クマムシの乾燥に耐える力だ。

 ひどく乾燥したところでは、クマムシは「乾眠」というすべての代謝を停止させる休眠状態(仮死状態)に入って身を守る。

 このときクマムシの体はパリパリに乾燥してしまうが、そのかわりに特殊な「タンパク質」を作って、自分の細胞が壊れないよう守っている。

 研究チームのアイデアは、このタンパク質で暑さに弱い薬を守ろうというものだ。

 ワクチン・血液・抗体・幹細胞といった「生物製剤」は、生き物から作られるので、冷蔵庫に入れておかないとすぐダメになってしまう。

 たとえば「血液凝固第VIII因子」もそうした生物製剤の1つ。これは血が固まりにくい血友病の患者などに使われるが、ある意味な生モノなので保管するには冷蔵庫が必要だ。

 そこで研究チームは、まず血液凝固第VIII因子を乾燥させて、それからクマムシのタンパク質などを混ぜてみた。すると特に冷蔵庫に入れることなく、うまく保存することができたのだ。

 10週間後、その血液凝固第VIII因子を水分でまた元に戻しても、薬の効果はそのまま残っていたとのことだ。

[画像を見る]

photo by iStock

・クマムシが医療や宇宙開発に貢献
 この冷蔵庫いらずの乾燥保存ならば、これまで薬を届けにくかった途上国や都市から遠く離れた地域にも、大切な薬を届けられるようになると期待されている。

 またそれだけでなく、地球から遠く離れた宇宙探査などでも、宇宙飛行士の健康を守ることができるようになるかもしれない。

 小さなクマムシには、我々人類を守ってくれる大きな力が秘められているのだ。

References:UW Scientists Use Tardigrade Proteins for Human Health Breakthrough | News | University of Wyoming / The world's toughest animal could one day help save your life / written by hiroching / edited by / parumo




画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
「最強生物「クマムシ」がヒトの命を救うかもしれない。特殊なタンパク質を利用し、医薬品を安全保管」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る