プロレス「史上最強の必殺技」BEST20!武藤敬司「四の字固め」長州力「サソリ固め」アントニオ猪木「延髄斬り」

2月に引退した“プロレスの天才”武藤敬司。ムーンサルトプレス、シャイニング・ウィザードなど、武藤がキャリアの節目で必殺技を生み出して名勝負を作ったように、プロレスラーと必殺技は切っても切れない関係にある。
そこで今回は、読者に答えてもらった「最強の必殺技」アンケートに、識者の見解も加えて「最強の必殺技」ランキングを作成。以下、ベスト20をレポート!!
■高田延彦やブルーザー・ブロディ!
13位以下は最終ページの表を見てもらうとして、本文では12位から発表する。12 位には、元横綱・北尾光司を一撃でKOした高田延彦の「ハイキック」が選ばれた。
新日本プロレス時代に高田と激闘を繰り広げ、強烈なキックを何度も受けた越中詩郎氏が明かす。
「高田は技巧派。目線を下げたからローキックだと思ったら、ハイキックを出してきたり……。戸惑うこともありましたが、僕は自分のスタイルを貫いて、彼のキックを受けたんです。前田日明のキックはズシリと重さがありましたが、高田のキックはキレがありましたね」
11位に選ばれたのは、ブルーザー・ブロディの「キングコング・ニードロップ」。
伝説のレスラーたちの試合を間近で見続けたリングアナウンサーの田中ケロ氏は、「見た目の美しさも必殺技に求められる要素。写真で“映ば える”ことも重要だ」と語る。130キロを超える巨体が鮮やかに宙を舞うブロディのニードロップは、その意味でも必殺技と呼ぶにふさわしい。
■NWA世界選手権のベルトを3度獲ったジャイアント馬場の大技
10位はジャイアント馬場の「ジャンピング・ネックブリーカー・ドロップ」。16文キックなど馬場の代名詞はいくつもあるが、馬場は、この決め技でNWA世界選手権のベルトを3度獲った。
9位には“破壊王”こと橋本真也の「垂直落下式DDT」がランクイン。
「体重を乗せた危険な技。正確には垂直落下式の“ブレーンバスター”なんですが、本人が言うので“DDT”になりました」(前同)
■ジャンボ鶴田のバックドロップは危険すぎた
8位はジャンボ鶴田の「バックドロップ」。鶴田は「(危険なので)相手によって落とす角度を変えている」と公の場では話していたが、天龍源一郎や三沢光晴に対しては、本気で放っていたという。
「五輪コンビ(鶴田&谷津嘉章)と龍原砲(天龍&阿修羅・原)のタッグ戦では、バックドロップを連続で喰らって立ち上がれない天龍の髪の毛をつかんで無理やり引きずり起こし、3発目のバックドロップ。天龍が失神した場面は強烈でした」(プロレス専門誌記者)
■リック・フレアーを手本に
7位には先だって引退した武藤の「足四の字固め」が入った。UWFインターナショナルとの対抗戦で、高田にドラゴン・スクリューからの足四の字固めで勝利したことで、武藤の必殺技の一つとなった。
武藤は、アメリカ遠征時代に対戦した“四の字固めの名手”リック・フレアーを手本にしたという。
〈毎日のようにフレアーと戦っていた頃、“足四の字固めひとつで試合を組み立てるなんてすごいな”と思っていたからね。高田戦で足四の字固めに説得力が生まれたおかげで、ムーンサルトプレスで膝にダメージが蓄積していた俺の選手生命が長持ちしたよ(笑)〉(『EX大衆』2023年3月号より)
足四の字固めの“元祖”はザ・デストロイヤーだが、「彼の場合は、クロスした足の上に自分の膝の裏を乗せて体重をかけていたので、より強力だったはずです」(前出の田中氏)
■馬場と猪木をフォールした“唯一のレスラー”
6位は天龍源一郎のパワーボム。天龍はこの技で馬場と猪木をフォールした“唯一のレスラー”になった。ただ、越中は天龍にはパワーボム以上に「“痛い技”がある」という。
「天龍さんのチョップは本当に痛かった! 最初は胸板を打ってくるけど、途中から喉仏を狙ってくるんです。あれはシャレになりませんよ」(越中氏)
5位は、長州力がデビュー戦から使っている「サソリ固め」がランクイン。
「メキシコから凱旋帰国して藤波辰爾との抗争が始まると、サソリ固めが必殺技になります。格闘技スタイルのUWFインターナショナルとの全面対抗戦では、サソリ固めで安生洋二をしとめ、試合後に“キレちゃいないよ”という名言を残しました」(前出の記者)
安生戦でのサソリ固めには、長州のプロレスラーとしてのこだわりがあったという。
「いつもの試合ではラリアットへの“つなぎ”としてサソリ固めを使うことが多かったんですが、Uインターとの対抗戦は3カウントではなくギブアップを奪うことで、新日本プロレスが上であることを示す必要があったんです」(田中氏)
■三沢光晴エルボーの凄まじさ
4位に入ったのは、三沢光晴の「エルボー」。その威力はすさまじく、鶴田の鼓膜は破れ、小橋建太の歯は根元から真っ二つに割れたという。三沢のタッグパートナーを務めた秋山準は、過去に本誌の取材で、こう語っている。
「とにかくエルボーが効きました。最初はアゴの骨がズレましたけど、アレって、(受けるときに)引いちゃダメなんですよね」
一方で、三沢の右肘も深刻なダメージが蓄積し、晩年は日常生活にも支障をきたしていたという。
〈右腕の肘の辺りは砕けた軟骨、いわゆる関節ねずみが散らばっている。肘を回す度にガリゴリと音がする〉(『三沢光晴外伝 完結編』主婦の友社より)
■カール・ゴッチから伝授されたドラゴン・スープレックス
3位の藤波の「ドラゴン・スープレックス」は、カール・ゴッチから伝授された究極の必殺技だ。
「ニューヨークで行われたカルロス・ホセ・エストラーダとのWWWFジュニアヘビー級王座戦で、藤波がドラゴン・スープレックスを初披露すると、観客は総立ちで熱狂したんです」(プロレス専門誌記者)
しかし、藤波が控室に戻ると、レスラーたちは冷ややかだったという。
「受け身の取れない危険すぎる技だったため、当時の米マット界でタブー視されたんです」(前同)
田中氏は、「藤波のドラゴン・スープレックスが返されたところを見たことがない」と述懐する。
「1985年12月の宮城大会では、ドラゴン・スープレックスで猪木会長にフォール勝ちしています。手のグリップがしっかりしていて、肩からではなく首から落ちるので、レフェリーは3カウントではなく、“ギブアップ勝ち”を判定することもありました」
越中氏は藤波のドラゴンロケットにも驚いたという。
「ヘビー級の体でロープの2段目と3段目の間から飛ぶなんて、藤波さん以外にできる人はいませんよ」
■モハメド・アリ戦に向けて開発
2位に選ばれたアントニオ猪木の「延髄斬り」は、モハメド・アリ戦に向けて開発された必殺技だった。
「公開スパーリングで延髄斬りを見たアリ側は、猪木の延髄斬りに戦慄。“ハイキック禁止”を求めたので、試合で出すことはできませんでした」(専門誌記者)
あのアリが恐れた延髄斬り。後年、他の選手も延髄斬りを使うようになったが、本家である猪木のそれは一線を画したという。
「猪木会長の延髄斬りは刀でスパッと斬るように放つんですが、他の選手がやるとパーンと当てる“延髄蹴り”になってしまう。そこは大きな違いだと思います。猪木会長の延髄斬りの練習相手をしていた後藤達俊さんは、首にゴムのマットをつけていたのにフラフラになっていました。それだけ威力があったんです」(田中氏)
■ウエスタン・ラリアットはダンプカーにぶつかった衝撃
さあ、いよいよ栄えある1位を発表したい。“燃える闘魂”アントニオ猪木を抑え、堂々の「必殺技の中の必殺技」に選ばれたのは、スタン・ハンセンの「ウエスタン・ラリアット」だ。
「ハンセンのラリアットは、“人間発電所”ブルーノ・サンマルチノの首を折った殺人技という触れ込みで、一気に有名になりました。この技でWWWFのトップレスラーになったハンセンは、新日本プロレスに移るや、坂口征二や長州力をラリアットで欠場に追い込み、トップ外国人の座を射止めます」(専門誌記者)
ハンセンのラリアットが“真の必殺技”なのは、「ハンセンはラリアットを“つなぎ技”には使わず、フィニッシュでのみ使うことにこだわった。ラリアットを出す前のルーティンとして、彼が左腕のサポーターを直した瞬間、ファンは試合が終わると悟ったんです」(前同)
試合後に暴れるハンセンと対峙したことがある越中氏は、こう述懐する。
「当時は入門3年目。試合後、いきり立ったハンセンを止めに行ったら、ラリアットを食らったんです。あれはダンプカーにぶつかったような衝撃……。そのまま担架で運ばれ、しばらく意識を失いましたね」
ラリアットも多くの選手がコピーしているが、田中氏はハンセンのラリアットは別格だと指摘する。
「ハンセンは腕にすべての体重をかけて押し倒すので、腕だけで打つレスラーとは違う。プロ経験もあるアメフトのタックルからヒントを得たんでしょう」
■最強の座を射止める新たな必殺技は?
昭和時代は、プロレスといえば必殺技だった。だが、平成、令和と時代が移り変わる中で、必殺技の存在は次第に薄くなっている。
「現代のプロレスは、一発で試合が決まる技がないんです。受け身の技術が向上したこともありますが、お客さんが大技の応酬を求めるようになったことも理由の一つでしょう」(前同)
昭和のレスラーは、必殺技でしとめるために逆算して試合を作っていた。
「足四の字固めで極めるなら、じっくりと足を攻め、スタミナを奪ってからフィニッシュに持っていく。地味な攻防が続くからこそ、必殺技が出たときのカタルシスがあるんです。
猪木会長はカウント2が連続する試合が嫌いで、“一発で決めろ”という方でした」(同)
令和に入っても根強い人気を誇るプロレス。最強の座を射止める新たな必殺技は、誕生するか!?
■昭和・平成・令和のプロレス!「最強の必殺技」13〜20位まで