武士道バイブル『葉隠』が説く、人の上に立つ者の心得!部下のやる気を引き出すには…

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武士道バイブル『葉隠』が説く、人の上に立つ者の心得!部下のやる気を引き出すには…

「いつも元気よく挨拶してくれるから、気持ちがいいよ」

「はい。挨拶はタダで気持ちよくなれるので、どんどんしないと損ですからね」

かつて職場でそんな会話を耳にしたことがあります。挨拶をはじめとするコミュニケーションは人間関係の潤滑油となりますから、積極的に図って損はありません(もちろん常識の範囲内で)。

いつ、どこで、誰がしてもプラスの効果を生みやすい挨拶。特に人の上に立つ者にとっては、部下に対する声かけがより大きな威力を発揮します。

それはいつの時代も変わらなかったようで、今回は江戸時代の武士道バイブル『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』より、大将の心得を紹介。

いざ有事となれば共に命を預け合う武士なればこそ、平時からの心がけがより強く求められたことでしょう。

さてもよく仕えたり……その一言が大事なり

篤き主従の絆は、一朝一夕に結ばれるものではない。義経と弁慶もまたしかり。月岡芳年「芳年武者无類 九郎判官源義経 武蔵坊弁慶」

一三一 義経軍哥に、「大将は人に言葉をよくかけよ。」とあり。組被官にても自然の時は申すに及ばず、平生にも、「さてもよく仕えたり、爰を一つ働き候へ、曲者かな。」と申し候時、身命を惜まぬものなり。兎角一言が大事のものなり。

※『葉隠』第一巻より

【意訳】義経軍歌(ぎけいぐんか)に「大将は 人に言葉を よくかけよ」という川柳が収録されている。組被官(くみひかん。自分の直臣ではなく家臣の家臣。陪臣)であっても有事はもちろん、日ごろから声をかけるのだ。

「いつもありがとう。いざ有事にはお前が頼りだからね。お前は見どころがあるよ」

そんな何げない優しさに、彼らは「自分のこともちゃんと見て、評価してくれている」と励み、身命を惜しまぬ働きをしてくれるだろう。

とにかく人の上に立つ者にとって、この一言が大事なのだ。

……よく相手との力関係によって「コイツには声をかけなくていい。向こうからかけてくるべきだ」などとふんぞり返っている残念な方に、ぜひとも聞かせてあげたいですね。

戦場に出れば、偉かろうと卑しかろうと、みんな平等に殺し合うのです。何なら身分が高いほど、標的にされる可能性が高まります。そんな時、日ごろの怨みとばかりに裏切られては目も当てられません。

現代のビジネスでは、さすがに命のやりとりなどしないでしょう。しかしここ一番でサボタージュ(妨害工作)でもされて数千万、数億円の取引がパァになった……そんなことがないとも限らないのです。

終わりに

結局、合戦でもビジネスでも、事業を成功させるには人間の働きが一番大事。その原動力は、人間の心にかかってきます。

苛烈な性格で知られた信長も、人使いは意外に細やかだったという(イメージ)

かつて織田信長(おだ のぶなが)が「人は心と気を動かすを以てよしとする也」と言った(『備前老人物語』)のはまさにそれで、彼もまた部下への信頼を示すため、こまめに声をかけていました。

もちろん声をかけるのは「こまめ」が肝要。台本みたいな名文句を一度かけてそれっきり、では嘘を見抜かれてしまいます。横着してはなりません。

仲間の絆は一朝一夕で出来上がるものではなく、永い歳月をかけて地道に築き上げていくもの。最初は誰でもぎこちないですが、照れずにコツコツ続けることです。

「よぅ田中(仮名)。いつもお疲れさん、あまり無理すんなよ」

こんなセリフが自然と(心から)言えるようになったら、田中さんも少しずつあなたに心を許し、本来の実力を発揮してくれることでしょう。

相手を変えるのは大変ですが、自分が変わるのは今からでも出来ます。もし人間関係にお悩みなら、まずは自分から変えてみるのも一策です。

※参考文献:

古川哲史ら校訂『葉隠 上』岩波文庫、2011年1月 笠谷和比古『武士道 サムライ精神の言葉』青春出版社、2008年8月

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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