NHK朝ドラ「らんまん」のモデル・牧野富太郎は本当に「雑草という草はない」と言ったのか? (2/3ページ)
その手掛かりを残してくれたのは、小説家の山本周五郎です。
1928年頃の話ですが、周五郎は雑誌記者をしており、著名人インタビューの企画で富太郎に会う機会があったのです。
そのインタビューの中で、周五郎が「雑草」という言葉を口にしたところ、富太郎は「世の中に雑草という草はない。どんな草にもちゃんと名前がある」といった趣旨のことを言ったというのです。
これには、周五郎も「ガツンとやられた」気持ちになったとか。
まあ、富太郎は専門家なので、今風に言えば草木や草花について解像度が高かったということですね。
2022年、発見に至るしかし、この後が少しややこしいのですが、どうやら周五郎のこのインタビュー記事は、雑誌に載ることはなかったようです。
時代が下って2022年4月、帝国データバンク史料館でこの周五郎の体験が記録された本が発見されました。それは木村久邇典の『周五郎に生き方を学ぶ』という本で、同館の企画展の準備が進むなかで発見されたそうです。
著者の木村は山本周五郎研究の第一人者で、そこに上述のエピソードが書かれていたのだそうです。
つまり、周五郎からの又聞きという形ではありますが、「雑草という草はない」という言葉を富太郎が確かに口にしていた(らしい)ことが分かったわけです。