「一滴の水の粒」を主人公とした物語『ひとしずく』はどのように生まれたのか (2/3ページ)
主人公の「ひとしずく」はどのようなキャラクターだと思いますか?
今明:純真で真っすぐなキャラクターですね。透明な身体に、どんな色も反映する。自分の体の下に葉っぱがあったら緑色になれるなど、無限の可能性を持っている存在だと思います。
「ひとしずく」が持つ可能性を、彼自身は気づいていないけれども、実はすごく多才ですし、この子の持つ純真無垢な透明さを抱きしめたくなるような、愛おしい主人公にしたいと思っていました。
――「ひとしずく」を描くうえで気を付けたことはありますか?
今明:「ひとしずく」は考えすぎてしまう性格で、放っておくとモノローグのようになってしまうので、その部分は一言のセリフにまとめてしまおうという意識で書きました。あまり難しく書き過ぎないように、シンプルさを心掛けています。
また、内的な部分を長く書いてしまいそうになったときは、水の滴である「ひとしずく」の身体を描写することで客観的に表現するようにしました。無限に表現できるので、その部分は頭を使いましたね。
――ストーリーの規模はとても小さいですが、「ひとしずく」の成長がしっかりと表現されていますね。
今明:空に行って、雨になって、降り注いで、誰かと出会ってというように、「ひとしずく」に大冒険させることもできました。ただ、それだともう既にありそうだなと思ったんです。
ここで描くことは「ひとしずく」の始まりの始まりであって、「この子は今この瞬間、次は何をしたいんだろう」という思考をその都度積み重ねました。そのゴールがクマザサの葉っぱを登りきることだというイメージは早い段階でできあがったので、そこに向けて物語を進めていった感じです。
――クマザサの葉の上だけで展開されますが、それが逆に壮大さを感じられる余韻を残しているように感じます。
今明:私は宮沢賢治や小川未明、こども向けの世界文学文集といった古き良き児童文学や多くの絵本に育ててもらったという自覚があって、同じように私も、主人公を描くということを丁寧にしたいと思っていました。