史上最年少の名人&七冠!藤井聡太、プロ棋士が語る「20歳の怪物」“強さ”の秘密20

日刊大衆

写真はイメージです
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 藤井聡太(20)が、4月から第81期名人戦に挑み、「新名人」、そして「七冠」が誕生。すでに竜王、王位、棋王、叡王、王将、棋聖のタイトルを保有。将棋界の8大タイトルのうち、2つを残すのみだったが、中でも最も伝統がある「名人位」は、やはり特別だ。今回は、この稀代の天才棋士がなぜ、これほど強いのか、その裏側を探っていく。

■小学校の文集で

「小学生時代の文集で、すでに“名人をこす”と夢を書いていたのは有名な話。本人は“もう時効にしてほしい”と笑っていましたが、“名人は子どもの頃から大きな存在”と、改めて思いを語っていました」(前出の文化部記者)

 そこには、こんな裏話も。幼少期に将棋を学んだ『ふみもと子供将棋教室』(愛知県)の塾長・文本力雄氏が語る。

「聡太が小4で教室を卒業するとき、私は“名人を目指すなら応援しない。名人を超える棋士になれ”と言ったんです。彼なら、もっと上に行けるだろうと」

 つまり、文集に書いた言葉は、この発言を受けたものだったのだ。夢の実現に向け、名人戦で、その強さを見せつけた。

「名人戦前から“藤井さんの4勝1敗”と予想していましたが、その通りになりそうですね」

 こう語るのは、過去に名人戦を戦った経験もある森雞二九段だ。さらに続ける。

「藤井さんの負けを分析すると、“敗着”というより“うっかり”が原因。渡辺名人に負けた第3局も、名人が仕掛けたトラップに迷ったあげく、早く勝とうとしてミスしただけ。そういう負け方なら心配ありません。今後、その迷いがなくなるときが来れば、もう誰にも負けないでしょう」

 本誌「詰将棋」でもおなじみの佐藤義則九段は、名人戦第4局で強さが光ったと語る。

「この対局で藤井さんは、渡辺さんの猛攻撃を受け切って戦う、まさに“横綱相撲”で勝利しました。そういった老獪な戦い方は、経験豊富なベテラン棋士の専売特許。それを20歳の若さで、しかも将棋界トップの渡辺さんを相手に行うなんて、本当に驚異的です」

 では、その驚異的な強さは、どう培われたのか。佐藤九段はまず、「AI(人工知能)研究に長ける」という点を挙げる。

■まるで“人間コンピュータ”

「将棋で大切なのは、いくつもの道筋から、相手の王将を詰むためのルートを探し当てる能力。それを瞬時にはじき出すのがAIなわけです。藤井さんは、そんなAIを相手に研究を重ねてきたので、それに近い領域まで達している。ゆえに、王将を詰む嗅覚がズバ抜けているんです」

 それが、不利な状況からでも逆転できる「無類の勝負強さ」に、つながっているという。

羽生善治九段もよく勝負強いといわれますが、彼の場合は、難局を打開するひらめき意表を突く手で、流れを持ってくる勝負勘に優れています。対して藤井さんは、相手の王将を詰むまでのルートを、ミスなく正確に見極められる“完璧さ”が要因です」(前同)

 まるで“人間コンピュータ”のようだが、それを裏づけるような逸話も。

「対局中、最善手を探るとき、“符号”で考えるそうです。符号とは、3一銀といった駒の位置や動きを表す文字のこと。頭の中で盤面をイメージする棋士が多い中、かなり異質ですが、それが読みの速さと深さを生んでいるのかもしれません」(将棋関係者)

■「詰将棋力」も強さの秘密

 読みと言えば、かつてプロも参加する大会で5連覇した「詰将棋力」も、強さの秘密の一つとなっている。

「藤井さんの詰将棋力は、アマチュア時代からプロ顔負け。30手詰めでも読めていたなんて伝説が残っているほど。つまり、局面の解析力はAI並みと言っていい。ゆえに、終盤まで持ち込まれたら、誰もが敗北してしまうということです」(前出の森九段)

 一方、永世名人でもある谷川浩司九段は、過去の本誌インタビューで、その強さを、こう分析した。

■“頭の体力”がケタ外れ

「(対局で)最も強く感じたのは、“頭の体力”がケタ外れということ。対局時間が12時間以上になっても、藤井さんはずっと考え続けることができるんですよね」

 自分の手番はもちろん、谷川九段が長考しているときも考え続け、食事休憩でも、食べ終えたらすぐに対局室に戻ったという。

「たいていの人は、それだけ長考を続けたら、頭を休めたいと思う。でも、藤井さんは違いましたね」(前同)

 いくらプロの棋士とはいえ、考え続けることは容易ではないのだ。

「小学生の頃から、考えることが大好きな子どもでした。当時から持ち時間が長い将棋に強かったし、詰将棋もずっと解いていましたね」(前出の文本氏)

■“負けず嫌い”勝利への執念

 さて、谷川九段と言えば、当時小学2年生の藤井少年とイベントで指導対局。敗色濃厚となった藤井に号泣されたことも有名だ。

「師匠である杉本昌隆八段によると、幼少期には、負けると悔しさのあまり、目の前の将棋盤を抱きかかえ、よく大泣きしていたとか。今も“負けず嫌い”を公言していますし、それが勝利への執念を生んでいるのかもしれません」(前出の将棋関係者)

■切磋琢磨ライバルの存在

 そんな“負け”を力に変える藤井七冠にとって、切磋琢磨するライバルの存在も見逃せない。

「17年から永瀬拓矢王座と“研究会”を行っています。永瀬王座も、現在の将棋界でトップクラスの実力者。そんな棋士を相手に、これまで100局以上も指しているそうですから、まさに“鬼に金棒”ですよ」(文化部記者)

 その研究会の様子が、さらにすごい。

「朝10時に集合して、顔を合わせると雑談もせずに、すぐ対局。それから、お昼休憩の時間以外、夜の8時すぎまで、ずっと指し続けるそうです」(前同)

■史上初の8大タイトル制覇を

 そんな将棋漬けの生活でも、まったく苦にならない。それは「何より将棋が好き」、この一点に尽きる。

「藤井さんは、20歳になっても“飲む・打つ・買う”には一切、興味なし。人生に遊びは必要ですが、やりすぎもまずい。その点、“将棋こそ”という藤井さんの姿勢は、いい方向に向かうでしょう」(森九段)

 これには、佐藤九段も同意する。

「藤井さんは、いわば“追求者”。常に最善手を指し続けようと盤上を見つめて、将棋の真理を追求しています。その姿勢が、なによりプロの棋士たちを驚かせているんです」

 将棋の真理を追い求める藤井七冠が先に見据えるのは、当然「八冠」だろう。今年秋、前述のライバル・永瀬王座に勝利すれば、「史上初の8大タイトル制覇」となる。

「藤井さんは八冠を制覇し、さらに全冠の“永世”を獲得すると思います。将棋界の歴史は、中原誠さんから羽生さんの時代になるまで20年、そこから藤井さんの時代になるまで20年かかりました。つまり、今後20年間は、“藤井天下”が続くということでしょうね」(森九段)

 天才の行く末やいかに!

■まだある!天才・藤井「強さの秘密」

すさまじい記憶力 記憶力に優れる棋士の中でも特に優秀で、対局の指し手は、すべて鮮明に記憶。昨年の王将戦、渡辺名人は感想戦でスラスラと手が出てくる藤井竜王のことを「エグい」と評した。

頭脳明晰 小学生当時、授業が簡単すぎて「どうして5分で分かることを45分もかけて教えるのか」と愚痴をこぼした。また、将棋中心の生活の中、特に受験勉強もせず、難関校に合格した。

読書家ゆえの知識量 少年時代、自宅にある本を片っぱしから読み、知識を吸収。小学校高学年で新田次郎『劒岳〈点の記〉』や沢木耕太郎『深夜特急』、司馬遼太郎『竜馬がゆく』などを読破したとか。

気配り上手 2020年順位戦、格上が座る上座を避け、あえて下座に座った谷川九段の「心配り」を察知し、何も言わずに上座に着席。二冠だった藤井に上座を譲った大先輩の気持ちを立てた。

パソコンオタク パソコンの性能に非常に詳しく、将棋のAI研究で使うパソコンを、わざわざ自分で作るほど。100万円を超えるパーツも惜しみなく使い、その総額は200万円以上とも。

鉄道旅行で気分転換 大の鉄道好き。新潟での対局には、憧れの特急しらゆきに乗るため、遠回りの長野経由。旭川での対局には、札幌から在来線を乗り継いで移動した。余暇には鉄道ゲームも楽しむ。

実は運動神経バツグン 中学時代、50メートル走で6秒8を記録した俊足。「小柄でも弾丸のように早かった。体を動かすのが大好きで、将棋の後には仲間とプロレスごっこをしていました」(文本氏)

優れた「おやつセンス」棋士が対局中に食べるおやつ。藤井竜王が選んだスイーツは、軒並み完売商品となり、プロも絶賛する目利きぶり。味もさることながら「見た目もかわいい」と女性に評判。

ご当地ラーメンを堪能 子どもの頃からラーメン好き。対局で訪れる各地で名物ラーメンを楽しんでいるようで、徳島県でのタイトル戦の際には、「徳島ラーメンが食べられなかった」とガッカリしていたという。

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