もったいない!高天神城の戦いで、岡部元信(田中美央)の首級を獲ったのは……【どうする家康】

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もったいない!高天神城の戦いで、岡部元信(田中美央)の首級を獲ったのは……【どうする家康】

今川氏真(演:溝端淳平)が駿河国を追われて以来、武田家に臣従していた岡部元信(演:田中美央)。

新参者は危険な最前線に回されるのが世の習い、ということで元信は駿河先方衆(武田家の先鋒を務める駿河衆≒今川旧臣)の一人として、高天神城(静岡県掛川市)の守備を任されます。

難攻不落の名城として知られた高天神城。元信の将器を評価されればこその配置でしたが、気づけば周囲にあった武田の城はすべて陥落、完全に孤立してしまったのでした。

武田勝頼(演:眞栄田郷敦)からの援軍も補給もないまま月日は流れ、天正9年(1581年)1月になると、元信は徳川家康(演:松本潤)に降伏を申し出ます。

しかし家康は元信の申し出を拒絶。あくまで「勝頼が高天神城を見殺しにした」形を演出したかったのです。

3月に入ると兵粮も完全に底を尽き、死を覚悟した元信は3月22日に夜襲を決行。壮絶な討ち死にを遂げるのでした。

「ちゃんと名乗ってくれれば……」彦左衛門の後悔

……天正九年辛巳三月廿二日之夜之四ツ時分尓。ふたて尓わけてきつて出る。あすけ。尾原。石河長土守之毛ちくちハ。いりゑの様成處奈れバ。城寄是をよ■見と忍て。きつて出け■バ。間ハ不り奈れバ。それへとへとへとく可け入られバ。三方よ里指こさせて打ける間。不りいつ■い。打ころ志て。夜明て頭をバ取。岡辺丹波と横田甚五郎者。林之谷へ。大久保七郎右衛門手へ出る。番之者六人指越候へハ御意奈れ共。七郎右衛門ハ大久保平助尓相そへて。こゝ■の者を十九騎指越ける。然間。城の大将尓て有ける。岡辺丹波おば。平助可”たち付而。寄子の本田主水丹。うたせたり。丹波と奈の里たらバ。よ里子尓ハうたせま志”けれ共。奈のらぬうへ成。……

※『三河物語』

夜の四ツ時(午後10:00ごろ)、元信たちは高天神城を包囲していた徳川勢の中で、最も手薄と思われる石川長門守康通(いしかわ ながとのかみやすみち)の陣を襲撃します。

待ってましたとばかりに岡部勢を迎え撃ったのは大久保忠世(演:小手伸也。七郎右衛門)や大須賀康高(おおすが やすたか)たち。その中には忠世の弟である大久保彦左衛門忠教(ひこざゑもん ただたか)がいました。

月岡芳年「皇国二十四功 大久保彦左衛門忠教」

「我こそは大久保彦左衛門、いざ尋常に勝負せぇ!」

「おう若造、相手してやる!」

彦左衛門は一団の先頭を駆ける老武者と太刀を合わせましたが、次々に敵が襲いかかってきます。

「おい主水、この老いぼれは任せた!わしは先に参る!」

「はっ!」

敵の大将はもっと後方にいるはず。まさか自分と太刀を合わせている老武者が岡部元信とは夢にも思わず、その始末を寄子(よりこ。家臣)の本多主水(ほんだ もんど)に任せました。

かくして彦左衛門は、図らずして本多主水に大手柄を譲ってしまったということです。

終わりに

これを知った彦左衛門、後から「岡部丹波(元信)は、この平助(彦左衛門)が最初に太刀をつけたのじゃ。しかし丹波と名乗らなかったゆえ、寄子に譲ってしまったではないか。名乗っておれば譲ったりしなかったのに……(岡辺丹波おば。平助可”たち付而。寄子の本田主水丹。うたせたり。丹波と奈の里たらバ。よ里子尓ハうたせま志”けれ共。奈のらぬうへ成)」などと愚痴をこぼしました。

奮戦する彦左衛門たち(イメージ)月岡芳年筆

果たして高天神城は陥落。元信と共に討死した城兵の数は実に700を超えたとか。また高天神城を見殺しにしてしまった勝頼の信望は大きく損なわれ、家臣の離反が相次ぐことになります。

一方の家康は、これまで自分たちを度々苦しめた強敵・岡部元信の死を悦び、その首級を安土城の織田信長(演:岡田准一)に送りました。

NHK大河ドラマ「どうする家康」では、岡部元信の最期がどのように描かれるのでしょうか。できれば彦左衛門が登場すると嬉しいのですが……どうでしょうね?

※参考文献:

『日本戦史材料 第貮巻 三河物語 全』国立国会図書館デジタルコレクション 平山優『角川選書 武田氏滅亡』角川書店、2017年2月 丸島和洋『武田勝頼 試される戦国大名の「器量」』平凡社、2020年3月 歴史群像編集部 編『戦国驍将・知将・奇将伝 乱世を駆けた62人の生き様・死に様』学研プラス、2007年1月

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