ジャムに和菓子…「超」甘党だった夏目漱石の嗜好と死因について

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ジャムに和菓子…「超」甘党だった夏目漱石の嗜好と死因について

病的な甘党

歴史上の人物で甘いものが好きだった人はいくらでも挙げられますが、かの文豪・夏目漱石の甘党ぶりはちょっと「引く」ほどのレベルです。

夏目漱石像(新宿区)

よく知られた話ですが、例えば彼は朝食のトーストにはバターと砂糖をたっぷり、紅茶にも砂糖をたっぷり。さらにシュークリームやアイスクリームなどの洋風菓子にも目がなく甘いお菓子の頂きものがあれば家族に内緒で独り占めしてしまうほどでした。

おそらく彼が甘いものにハマッたのは、イギリスへの留学中でしょう。

彼は留学中にストレスのため神経衰弱に陥っていますが、甘いものを食べることでストレスを発散していたと思われます。当地のイチゴジャムにドハマリして、スプーンですくって食べているうちにひと月で8缶も空けてしまったとか。

ちなみにブドウ糖は、精神を安定させるセロトニンという物質を作り出すのに欠かせない栄養素です。彼もまた、糖分によって精神の安定をはかっていたのでしょう。

おそらく『我輩は猫である』を読んで覚えている人もいるかも知れませんが、主人公の苦沙弥先生もいわばジャム依存症状態に陥って奥さんから叱られるシーンがあります。

作品にも登場するお菓子たち

漱石が甘党だったと聞いて、思い当たる人もいるかも知れません。彼の作品の中には和菓子が多く登場します。例えば『我輩は猫である』には銀座・空也の季節限定の貴重な和菓子・空也餅が登場します。

また、東京都荒川区にある老舗和菓子店・羽二重団子も同作の中で名前が出てきており、特にこのお店は正岡子規や泉鏡花など数々の文豪の作品に登場することでも有名です。

正岡子規像(愛媛県松山市)

そして、本郷の「藤むら」の羊羹もはずせません。『我輩は猫である』よりもだいぶ後になりますが、『草枕』の中でこの和菓子の魅力をこれでもかとばかりに描写した文章があるのです。

このように見ていくと、漱石の甘党ぶりはやや異常だったものの、甘いものに対する彼のその感性は、作品の味わいをより一層深くするのに役に立っていたと言えるでしょう。

ちなみに、現代でも勉強中などに集中力が切れたら甘いものを摂取するのがいい……とよく言われます。実際、甘いものには気持ちをリラックスさせ、一時的ではありますが集中力を増す効果があります。

その意味で、作品執筆のために集中力を切らすわけにはいかない文豪が甘いものを好むというのは、理に適っているところがあります。

「甘党」漱石の運命

しかし言うまでもなく、彼の超甘党ぶりは、医学的な観点から見れば決して褒められたものではありません。彼の死因は胃潰瘍にともなう腹部体内出血、あるいは胃癌とされていますが、これも彼の甘党が災いしたとも言われているからです。

漱石は1908年頃に糖尿病を患っています。そして糖尿病患者というのはピロリ菌を胃に保有していることが多いのですが、これが彼の胃を蝕んだ可能性があるのです。

一般的には「夏目漱石イコール胃潰瘍」というイメージが強いですが、これは近代文学が、作家が自らの神経症的な内面を描くことで成立していったという背景があるからでしょう。

しかし、漱石が胃をやられた経緯をもう少し掘り下げてみると、イギリス留学中の神経衰弱が原因で甘いものにハマり、そこから糖尿病に至って……というプロセスがあったことが分かります。

参考資料
曽野医院
現在.com
羽二重団子
雑学カンパニー

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