自然細胞よりも速く進化する人工細胞を作成。「生命は道を見つける」ことを実証
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「生命は必ず道を見つける(Life will find a way)」これは映画『ジュラシック・パーク(1993年)』の中で、メスしかいないはずの公園内に孵化した恐竜のカラがあることを知り、ハモンド博士がつぶやいたセリフだ。
『Nature』(2023年7月5日付)に掲載された研究では、そんなあり得ないはずのことが確認されている。
インディアナ大学などの研究チームは、生きるうえで最低限度の遺伝子しか持たない細菌を人工的に作り出した。
理論上、その人工細菌には突然変異が起こりえない。つまり進化できないということだ。それなのにたった300日で人間なら4万年分にも相当する進化を遂げていることが確認されたのだ。
その細菌はどうにかして「道を見つけた」のだ。この事実は生命の起源など、生物のさまざまな疑問を解明するヒントになるだろうとのことだ。
・進化できないはずの人工細菌が大幅に進化
インディアナ大学の進化生物学者ジェイ・T・レノン氏らの研究チームが確かめたのは、「生きるために最低限度の遺伝子しか持たない生物は進化できるのか?」ということだ。
進化の原動力となるのは、遺伝子の突然変異だ。突然変異によってたまたま有利な力を手に入れることができれば、その生物は繁栄し、その進化が子孫に受け継がれていく。
だが、突然変異は、ある遺伝子がそれまで持っていた機能が失われるということでもある。
ならば、生きるために不可欠なギリギリの遺伝子しか持たない生物は進化できないはずだ。突然変異のせいで、生命を維持するために絶対必要な機能が失われてしまうからだ。
レノン氏らはこれを確かめてみることにした。そのために「マイコプラズマ(Mycoplasma mycoides)」という細菌から遺伝子の45%を取り除いた。
取り除かれたのは、どれもなくても大丈夫なものばかり。そして残された493個の遺伝子は、どれも絶対に必要なものばかり。
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マイコプラズマの細胞を1万5000倍に拡大したもの。ここにはたった493個の遺伝子しかない/image credit: Indiana University
1つでも欠ければ、この人工マイコプラズマは生きることができない。これまでの常識によるならば、「突然変異の余地がないため、進化できない」はずだった。
ところが実際は、簡単に突然変異が起きることがわかったのだ。ただ普通に300日間育てただけで2000世代分、人間で言うなら4万年もかかるような進化を遂げていた。
最小限の遺伝子しか持たない人工マイコプラズマは、どうにかして「道を見つけた」のだ。
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最小限の遺伝子しか持たない細菌はどうやって進化するのか? その謎の解明は、生命そのものの起源を知るヒントになるかもしれない / image credit:Indiana University・人工細菌は自然の細菌より速く進化
そこで研究チームは、この進化した人工マイコプラズマ(進化人工細菌)の生命力を調べてみることにした。自然のマイコプラズマ(自然細菌)や、進化していない人工マイコプラズマ(未進化人工細菌)と”バトル”させてみたのだ。
やり方は簡単。進化人工細菌・自然細菌・未進化人工細菌のうち2グループを、試験管の中に同じ量だけ入れてみる。
しばらくすると、どちらかが多数派になる。その多数派は、それだけその環境にうまく適応できた、つまり強いということだ。
この結果、自然細菌は未進化人工細菌よりは強かった。ところが進化人工細菌は自然細菌を凌駕したのだ。
この人工マイコプラズマは、遺伝子をはぎ取られたおかげで、試験管内の環境に適応するための力を失っていたはずだった。それなのに進化を重ねることで、失われた力を取り戻していた。
ちなみにこの進化で一番大きく変貌をとげた遺伝子は、細胞の表面を作り上げるものだったという。だが中には機能がよくわからない遺伝子もあったとのことだ。
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自然の細菌より早く進化した人工細菌 / image credit:Indiana University・生物の適応能力の高さ
必要最小限度の遺伝子しか持たない生物は、どうやって進化をしているのか?
その謎の解明は、感染症の治療・共生菌の理解・人工細菌の開発ばかりか、生命そのものの起源など、生物に関するさまざまな疑問を解く重要なヒントになるとのこと。
この実験は、遺伝子的にもっとも単純な生物であってすら、速やかに環境に適応する自然選択の力が備わっていることを証明している。
すなわち「生命は必ず道を見つける」ということだ。
References:Evolution of a minimal cell | Nature / Artificial cells demonstrate that "life finds a way": 2023 news: News: News & Events: Department of Biology: Indiana University Bloomington / Artificial cells demonstrate that 'life finds a way' / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2023/07/09)誤字を修正して再送します。
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