余りに悔し過ぎて…『後拾遺和歌集』を偽造した平安貴族・藤原伊房(これふさ)のエピソード (2/3ページ)
「……何だこれは!」
原稿を確認した伊房は怒りに震え出します。それもそのはず、自分の歌が一首しか入っていなかったのです。
(現代に生きる私たちの感覚で喩えるなら、皇室の歌会始で自分の詠んだ和歌が取り上げられたようなもの。一生に一度でも欣喜雀躍モノですが、伊房ほどの歌人ともなると、載るのは当たり前なのでしょうね)
しかも、ライバルたちは二首も三首も入撰しているではありませんか。これほど悔しいことはありません。
もちろん、下には下(入撰すらしていない者)がいるでしょうが、そんなものは目に入りません。ただ自分が一首で、ライバルたちよりも下回ってしまった事実があるのみです。
悔しいけれど、かと言って彼らの歌を消してしまう訳にも……そうだ!伊房は悪だくみを思いつきました。
お察しの通り、伊房は清書のドサクサに紛れて、自作の歌を二首ばかり書き加えてしまったのです。まったくしょうもないですね。
現代で言うなら公文書偽造でしょうか。とりあえずこんなにたくさん和歌があるからバレないでしょ……と提出してはみたものの、あっさり発覚してしまいました。当たり前ですね。
「まったくしょうもないことを……大至急、書き直すように!」
こっぴどく叱られた上、再提出を厳命された伊房。普通ならここで反省して、大人しく書き直すものですが、彼はこれを突っぱねて清書の役を辞退してしまいました。
けっきょく清書は他の者が行ったということですが、特に伊房が罰せられたという話は聞かないため、意外と同情されたのかも知れませんね。