「漫画のことならなんでも相談してください」小川満洋さん(53)「創業20周年を迎えた“漫画屋”の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます! (2/2ページ)
しかし、残念ながら採用には至らず断念。
卒業後は「絵を描く仕事がしたい」と、ゲーム制作会社の入社試験を受けるも不採用。失意の日々に、転機が訪れた。
「ある企業から“会社案内を漫画にしてほしい”と頼まれました。当時はお金がなかったし、時間はたっぷりあったので、お受けしたんです。そうして漫画を描いて納品すると、とても喜んでくださいましてね。“漫画は漫画雑誌以外にも需要があるんだ”と、気がついたんです」
■漫画が持っている力で世の中に貢献したい!
漫画を求めている人たちは世の中に、たくさんいる。だったら自分は、そのニーズに応えていこう――そう考えた彼は、ビジネスツールとしての漫画を受注制作する「漫画屋」になる決意をする。
「インターネットがまだ普及していない時代、とにかく人が集まっている場所を探して訪れて、名刺を配りまくりました。“漫画のご用命はございませんか”と。なんの実績もなかったですから、足で稼ぐしかなかったんです」
そうしたコツコツとした努力が実り、次第に注文が入るようになった。
「よく分からないから、全部、任せるわ」といった、ざっくりした委託から、セリフの1字1句、線1本1本まで細かいチェックが入るシビアな要求まで、オーダーは十人十色。そのすべてに対応するうちに、人間力も養われていったようだ。
「商品やサービスの価値や、必要性が伝わらず売り上げが伸び悩んでいる人たちを漫画で救いたい。漫画で世の中に貢献したいんです」
漫画家にはなれなかったが、新しい形の漫画で活躍する男が、ここにいる。
あなたも、諦めてしまった夢はないだろうか。小川さんのように視点を変えれば、達成できる道はあるかもしれない。
よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など