新しいムーブメントは過去の音楽の「再流行」とともに生まれる?デジタルストリーミング時代の必読書、『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす』8月16日刊行。 (2/4ページ)
しかし、これまで折々に登場してきた「新しい」ポップミュージックの細部、あるいは周辺を改めてじっくり検分してみると、そこでは常に、過去の音楽が再解釈され新たな文脈とともに再生されるという現象もまた絶え間なく起こってきたのが分かる。
考えてみれば、あのビートルズがデビュー当時に奏でていたのは、その少し前に世を席巻したアメリカ発のロックンロールだったし、今や現代のポップミュージックの基盤的な存在として世界中に浸透しているヒップホップも、元は既存のレコードを素材にそれを再構築するという手法とともに産声を上げたものだ。また、同じく現代のポップミュージックにおいてなくてはならない「DJ」という存在/様式もまた、過去のレコードの再解釈という行為と切り離すことは難しい。
1960年代前半にアメリカで盛り上がりを迎えたフォークやブルースのリバイバル。1970
年代のグラムロック〜パンクロックにおける初期ロックンロールへの回帰。同じく1970年代イギリスのノーザンソウルシーンにおける1960年代ソウルへの偏愛。更には、レアグルーブムーブメントが推進した70年代のソウルやジャズファンクの再評価、「渋谷系」の時代におけるソフトロックやラウンジミュージックのリバイバル。シティポップブームに象徴される1980年代サウンドの復権。2010年代以降のニューエイジミュージックの再評価。そして、昨今の「Y2K」ブームと連動したポップパンクやドラムンベースなどのリバイバル。その他、その他、その他。この間のポップミュージックの展開の傍らには(あるいはその中枢には)、様々な過去の音楽の復権とそのブーム=リバイバルが常に存在している。
なぜ、「新しさ」を掛け金として進化してきたように見えるポップミュージックの歴史において、そのような過去の復権/リバイバルが度々観察され、それどころか、場合によっては折々の先端的な潮流そのものを形作るような役割を担ってきたのだろうか。しかも、どうやらこうした傾向は今世紀に入ってから更に加速しつつあるようだ。過去の音楽が日々新鮮な驚きとともに受容され、それが更に新たな実践へとインスピレーションを与えるという円環構造は、おそらくこれから先もより一層強大なものになっていくだろう。