3時間でそり立ち役目を終えると萎えていく。スッポンタケの生き様をタイムラプス映像で

[画像を見る]
スッポンタケというキノコを知っているだろうか?成熟すると傘の表面がベトベトし、そこから異様な悪臭を放つ。その形状はあまりにも息子スティックに似ており、親近感を覚える人間もいるとかいないとか。
その一生を30秒にまとめた貴重なタイムラプス映像が公開された。
たった3時間で力強く屹立したかと思うと、無数のハエにたかられ、やがて弱々しく倒れていく。その姿には、どこか人間の人生にも似た儚さや哀しさのようなものが感じられるかもしれない。
だが目的であるハエをおびき寄せ、胞子を分散させることに成功したのだから、スッポンタケ的には「我が生涯に一片の悔いなし」といったところだろう。
・異臭を放つ、アレに激似のスッポンタケ
このキノコは日本では「スッポンタケ」として知られている。オリーブ色をした傘の形がスッポンの頭に似ていることからつけられた名前だ。
英語では「スティンクホーン(stinkhorn:臭い角)」と呼ばれる。さらに学名「Phallus impudicus」は「不謹慎な男根」という意味だ。学者ですらこれがアレに見えるほど激似なのだ。
ヨーロッパ、アジア、北アメリカなど、世界の温帯地域に自生しするスッポンタケは、初夏から秋にかけて朽ち木などのそばに生え、長さは25cmにも達する。
傘の部分は、ぬめっとした粘液状のものでおおわれており、ここからえも言われぬニオイを放つ。
そのニオイは腐敗した肉や腐った便、下水のようだと表現される。
ただし卵のような幼菌の段階では、悪臭はまだしない。その内部にはゼリーのような物質に包まれた柄と傘が収納されており、成長するとそれが開いて、悪臭の元となるネバネバが出てくるのだ。
これはハエなどを誘き寄せて、胞子を運ばせるための工夫だ。
こんなに臭いのに、中華料理やフランス料理などでは食材として使わている。フロリダ大学のサイトでは、ヘーゼルナッツのような味がするとも報告されている。
[画像を見る]
photo by iStock
・スッポンダケの生き様がわかるタイムラプス動画
今回の映像は、スッポンタケが土から顔を出し、わずか3時間でむくむくと成長する様子がとらえられている。
[画像を見る]
映像は30秒ほどのものだが、実際には3週間かけて撮影された労作であるそうだ。
ドイツ東部のゾンエスト・ザウエルラント地方林業事務所の森林局職員は、「撮影するのに3週間かかりました。最初の2週間は何も起こらず、この映像が撮れるまでずっとカメラを覗き続けました」と説明する。
このスッポンタケが成長し、ネバネバし始めると、その腐敗臭に引き寄せられてハエが群がり、10時間にわたってそれを食べ続ける。
[画像を見る]
やがてオリーブ色の傘が剥がれると、「死体の指」と呼ばれる白い柄の部分が、数日かけてゆっくりと倒れていく。地面に横たわってからもさらに腐敗が続き、だんだんと消えていく。
[画像を見る]
儚い束の間の時間だが、スッポンタケが子孫を残すには、これで十分だ。
あとはネバネバを食べたハエが勝手に胞子をばら撒いてくれるからだ。風に胞子を乗せて飛ばす一般的なキノコとはまた違う、とてもユニークな繁殖戦略なのである。
[動画を見る]
儚い一生だったが、しっかりとその子孫となる胞子をハエたちに遠くまで運ばせることに成功したわけで、このスッポンタケは天命を全うしたともいえよう。
References:Watch slime-covered penis mushroom that smells like rotting flesh grow and decay in mesmerizing timelapse | Live Science / Phallic Mushroom Puts On A Show In Staggering Timelapse Video | IFLScience / written by parumo
追記(2023/09/27)本文中の誤字を訂正して再送します。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』