2023ドラフト12球団「明暗」歴代ドラ1「その後」追跡15連発【画像】セ・リーグ/パ・リーグ「ドラフト採点表」

日刊大衆

写真はイメージです
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 今年も金の卵たちが球界入りする。意中の選手を獲得できた球団、そうならなかった球団の悲喜こもごも!!

 4年ぶりの“有観客”開催も話題となった、今年のプロ野球ドラフト会議。

 各球団の思惑が交錯する中、育成枠含め全122選手が、プロという大舞台への挑戦権を手に入れた。

「大学生投手が大豊作だった今回は、前評判の高かった“東都六人衆”がそろって1位指名。花巻東の佐々木麟太郎(18)の米国留学決断で、“目玉”不在となった会議自体も、おかげで大いに盛り上がった。

 独走Vを決めたセ・パ王者が、ともに“一本釣り”を成功させたのも印象的でしたね」(スポーツ紙デスク)

■王者の“余裕”を感じさせたリーグ3連覇のオリックス

 そんな王者の“余裕”を最も感じさせたのが、リーグ3連覇のオリックスだ。巷ちまたでは“坂本勇人2世”の呼び声も高い上田西の横山聖哉(18)を皮切りに、4位までは無限の可能性を秘める高校生がズラリ。

 生え抜きスター育成への強い自信を覗かせた。

「エースの山本由伸(25)が大リーグ挑戦。山崎福也(31)にもFA流出の可能性がある中での指名ですから、いかにも強気。

 大学生は一人も獲らず、社会人の即戦力は下位指名。契約金を極力抑える“カネ勘定”までしているあたりも、関西球団らしく強したたかです。王者の余裕を特に感じました」(前同)

■阪神タイガースは戦略勝ち

 一方の阪神は、競合を回避しつつ“六人衆”の一角、青学大の下村海翔(21)を押さえる戦略勝ち。

 無名に近い独立L・徳島の椎葉剛(20)を2位で獲る独自色も、目を引いた。阪神OBの藪恵壹氏が言う。

「1位の下村は、変化球が多彩で四隅を突ける村上頌樹(25)に似たタイプ。派手さはないが堅実、という部分でも岡田(彰布)監督好みです。椎葉は“ポスト岩﨑”候補。2位で行くぐらいですから“後ろで、すぐ使える”と、よほどの確信があったんでしょう」

■巨人の阿部慎之助新監督は「3000点」と満足顔も…

 その関西2球団からの覇権奪還を目指すのが、“盟主”巨人とソフトバンク。

 とりわけ、巨人の阿部慎之助新監督は、母校である中央大の後輩、西舘勇陽(21)をクジで引き当て、「3000点」と満足顔だったが、「西舘以外の支配下4人はいずれも大卒社会人。2位指名のホンダ鈴鹿の森田駿哉(26)は、岡本和真と同学年と、すぐの結果が求められる年齢でもある。V奪還が至上命令なのは分かりますが、超即戦力で固めたところに、焦りを感じましたね」(球界関係者)

■小久保裕紀新監督ソフトバンクも表向きは

 同じく“政権交代””で小久保裕紀新監督となったソフトバンクも、表向きは「満足な補強」と笑顔。

 確かに、高校生では断トツ評価の大阪桐蔭の前田悠伍(18)を“外れ1位”で射止めたのは収穫だが、「高1秋の快投と見比べると、ここ最近はプロ関係者の間でも“やや迫力に欠ける”“少し時間はかかる”と、厳しい見方も出ていた。一方のチームは、規定投球回クリアの投手がゼロと投手陣の再建が急務。“じっくり育てる”なんて悠長なことを言っている場合か、

疑問は残ります」(前同)

■中日ドラゴンズは迷走

 他方、迷走ぶりがことさら際立つ結果となったのが、球団初の2年連続最下位に沈んだ立浪中日だろう。

 外れ1位で“六人衆”亜大の草加勝(21)を指名したが、着手すべきは一も二もなく貧打線の改善のはず。2位、3位と続けざまに即戦力遊撃手という人選は不可解だ。

「同じ遊撃には、売り出し中の龍空(20)がいて、昨年も村松開人(22)、田中幹也(22)と大学生を獲っている。いったい、どんな将来像を描いているのか、さっぱり分かりません。

 同じ“勝負の3年目”という意味では、長年不在の正捕手候補を2位指名で確保した、日ハムの新庄剛志監督のほうが、よほどビジョンは明瞭ですよ」(前出のデスク)

 出そろった金の卵たち。ただ、ドラフト指名は、あくまでスタート。成功する保証など、どこにもないのがプロの世界の厳しさだ。

■根幹を揺るがせた江川卓

 ここからは明暗分かれた歴代ドラ1の“その後”を振り返ってみたい。ドラフトといえば、制度の根幹を揺るがせた存在でもある江川卓は欠かせないだろう。

 かの“空白の1日”を利用した江川事件は、1973年に阪急、事件前年の77年にクラウンの1位指名を、それぞれ拒否する前段があった。江川には、阪急黄金期、山田久志との“Wエース”の道もあったわけだ。そのすごさを現役時代にかいま見た愛甲猛氏が言う。

「もし江川さんが高校からプロに入っていたら、通算135勝の倍は、ゆうに勝てた。それぐらい、すごい投手だったよね。

 ただ当時のパ・リーグと巨人では、ブランド力が雲泥の差。元阪急の肩書きじゃ、引退後にタレントとして、あれだけ活躍できなかっただろうから、結果的には巨人を選んで正解だったとも思うけど」

■プリンスホテルの“囲い込み”

 その愛甲氏も、大学球界のスターだった原辰徳と人気を二分した、80年の目玉選手。

 同年のドラフトは、高山郁夫(秋田商)と川村一明(松商学園)が、阪急、日本ハムの1位指名をともに拒否して、社会人の強豪プリンスホテル入りしている。当時、問題となった西武グループによる“囲い込み”が原因だ。

「その差配をしていたのが、プリンスホテル総支配人で、俺も“オヤジ”と慕っていた幅(敏弘)さんでね。

 実は俺にも“今年は石毛(宏典)で行くから、おまえは獲れない”“その代わり、何年かしたら拾ってやるから”という話が、事前にあったんだよ。

 あの年は中尾(孝義)さんもプリンスから1位で中日に入ったけど、あの人も最後は西武に行った。やったことの是非はあるにしても、口約束だけじゃなく、実際に面倒見もよかったことだけは確かだね」

■小池秀郎の“拒否”事件

 そんな愛甲氏が主軸のロッテが激震に見舞われたのが、90年のドラフト。

 前年の野茂英雄(新日鉄堺→近鉄)と並ぶ最多8球団が競合した、亜大の小池秀郎の“拒否”事件だ。

「俺のときもそうだったけど、“指名しない”と明言しておきながら当日、それをひっくり返す、というのは当時、よくあった。小池に関しては、まず間違いなく当時の金田(正一)監督が悪いよね(苦笑)。

 後に中日で一緒になったときは“愛甲さんに会ったら絶対、殴られると思ってました”なんて言ってたけど、本人はとてもいい奴で。それだけに時機を逃したのは惜しいよね」(愛甲氏)

■掛布雅之“31”の重圧

 一方、周囲の期待の大きさに、本人が押し潰されてしまうパターンもある。

 その顕著な例が、小池拒否事件の翌91年。初出場・初優勝で夏の甲子園を沸かせた大阪桐蔭の萩原誠だ。

 同じ阪神のドラ1でもある前出の藪氏が振り返る。

「彼は2年先に入っていたけど、年齢は大卒社会人の自分より5歳下。傍目から見ても、与えられた掛布(雅之)さんの“31”の重圧に苦しんでいるのは分かったよ。

 背番号で野球をやるわけじゃないのに、その“呪縛”みたいなものに囚われる。チームが暗黒時代だったし、かかる期待が必要以上に大きかったのもあったしね」

■“大化け”した藤川球児

 その阪神でつながった首の皮一枚から“大化け”したのが、98年の藤川球児だ。

 2003年のリーグ制覇時は蚊帳の外。それどころか、整理対象リストにすら名前が挙がっていたという。

「当時、2軍監督だった岡田さんの“もうちょい見たれや”がなかったら、その後の彼はおそらくない。彼に限らず、プロで成功できるか否かは、多分に運の要素もあるんだよね」(藪氏)

■ハンカチ王子とマー君の違い

 他方、甲子園のスターでもあった愛甲氏が「最も惜しい」と挙げるのが“ハンカチ王子”こと斎藤佑樹

 早実から直接のプロ入りを決断していれば、「あそこまで伸び悩むことはなかった」と、藪氏は言う。

「誤解を恐れずに言えば、大学の4年間で、いろんな意味でラクを覚えた。それに尽きるんじゃないかな。

 高校時代はほぼ互角だった田中(将大)と、あれだけの差がついたのは、結局のところ、高卒1年目からプロで揉まれ続けた田中との“場数の違い”でもあるからね」(前同)

■契約金10億円でほぼ決まりと言われていたが

 最後は、表に出ない札束が飛び交った“逆指名”時代のエピソードを一つ。

 最も象徴的なのが、新監督としての手腕にも大注目、00年の阿部慎之助だ。

「当時の阿部は、分割払いの契約金10億円で西武にほぼ決まり、と言われていた。そこに巨人が、7億円の“現ナマ”を直接持参して、大逆転の逆指名を取りつけたとか。“遠くの10億より、近くの7億”ってやつですよ(笑)。表に出ていないだけで、あの頃は、そんな生々しい話ばかりでしたよ」(事情通)

 ドラフトをめぐる悲喜こもごも。プロ1年生たちは来シーズン、どんな活躍を見せてくれるのか。

■「伝説のドラ1選手」振り返り!!

大谷翔平(日本ハム・2012年)メジャーからもオファーが。事前にメジャー球団と話し合い、NPBのドラフトへ。

長嶋一茂(巨人・1987年)ヤクルトと大洋が1位指名。巨人も裏工作で獲得を目指したが、長嶋監督が拒否した。

岡本和真(巨人・2014年)スカウト部は即戦力投手をドラ1推薦も、原監督の鶴の一声で急遽、1位指名された。

松井秀喜(巨人・1992年)4球団が1位指名も、この年、指揮官に復活した長嶋監督がクジを引き当て巨人入り。

吉田正尚(オリックス・2015年)青学大からプロ入り。NPB7年で通算打率.327と打ちまくった。現レッドソックス。

一場靖弘(楽天・2004年)自由獲得枠での1位指名。プロ通算16勝で6年で引退。現在は少年野球の指導者だ。

鍬原拓也(巨人・2017年)清宮幸太郎村上宗隆の抽選を外した結果、1位指名に。今オフに戦力外通告される。

辻内崇伸(巨人・2005年)巨人とオリから1位指名も、ケガに泣き、1軍登板なしでプロ引退。現在は現金輸送業。

【画像】セ・リーグ/パ・リーグ「ドラフト採点表」

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