がんにならない体を作る黄金「生活習慣」20
今や国民病といわれる「がん」。国立がん研究センターによると、生まれつきがんになりやすい「遺伝性のがん」の体質を持つ人は、全体のわずか5%。残り95%は、生活習慣など他の要因があるのだ。新年を迎えたこの機会に、“日々の生活”を見直してみてはいかがだろう。
【第1部】日々の生活で簡単にできる予防法!毎日、何を食べてどんな運動をすべきか?
まずは、生活習慣の基本になる食事から見ていこう。農薬や食品添加物には発がん性のものもあるので、値段が高くても無農薬、無添加の食材をとるべきか? そんな疑問に、『詳しいことはわかりませんが、「がん」にならない方法を教えてください!』(文響社)の著書もある『健康増進クリニック』(東京都千代田区)院長の水上治氏が答える。
「食品に関して理想を言えば切りがなく、現実にできる範囲で選択しなければなりません。そもそも肝臓には強力な解毒作用が備わっているので、農薬や添加物が人体に影響を与えるまでは、いくつもハードルがあります。その悪影響より、バランスのよい食事を心がけ、不足しがちな野菜などをしっかり取ったほうがベターです」
「添加物がたっぷり」とも言われる出来合いの料理にしても、それで栄養バランスが補えるなら、その選択も別に悪いものではないというのだ。
■魚は危険なのか
野菜以外にも目を向けてみよう。発がん性のあるダイオキシン類は世界中に存在し、食物連鎖の中で、人間の脂肪組織に蓄積している。日本人は、摂取量の実に80%を魚介類から得ているが、養殖サケは天然サケよりダイオキシン濃度が10倍高いとの調査結果もある。では魚は危険なのか、といえば、さにあらず。『がんは8割防げる』(祥伝社新書)の著書もある新潟大学名誉教授の岡田正彦氏は次のように語る。
「環境汚染への取り組みで、食品全体のダイオキシン濃度はこの20年ほどで3分の1に減少しています。魚介類の濃度は養殖でもWHO安全基準以下。ですから、無理して高額な天然ものにこだわる必要はないです」
■肉のとり過ぎは
一方で、とり過ぎに注意したいのが肉だ。前出の水上氏は、牛、豚、鶏などすべての肉類の摂取量は、1週間に500グラムほどを限度にしているという。そのため、肉を食べる日は週1日以下に抑えているというのだ。
「もともと、日本人は肉を食べる習慣がありませんでしたが、食生活の欧米化が進んで食べるように。でも、日本人の体は肉を消化しづらいんです。だから近年、大腸がんや前立腺がんになる日本人が増えました。肉の摂取を抑えるぶん、発がんリスクを減らす、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸が豊富な魚を食べてください」
さらに、前出の岡田氏は、特に焼肉はできるだけ控えるようにと助言する。
「長時間、肉を高熱で調理すると、ある種のアミノ酸が“発がん物質”に代わります。その点、しゃぶしゃぶはお湯処理で100度を超えないからいい。また魚肉は、高温処理しても、肉にある発がん物質を含まないので大丈夫です」(岡田氏)
■塩分の多い食事に注意
また、塩のとり過ぎは、腎臓病や高血圧の原因だけではなく、がんのリスクも高めるという。
「塩分の多い食事をとり続けると、胃の粘膜が繰り返しダメージを受け、胃がんになりやすいんです。極論すれば、胃がんの原因は、ほぼ100%塩分と私は考えています」(前同)
その証拠に、米国ではかつて保存目的で塩漬けした肉を食べることが多く、当時は全がんの中でも胃がん患者がトップだったが、冷蔵庫の普及で現在は、劇的に減少したのだという。
「塩分の摂取は、1日10グラム以下に。みそ汁は野菜摂取などのプラス効果が大きいので毎日飲んでもいいですが、減塩みそに替えましょう」(同)
■ナッツ類に付着するカビ
また、『がんにならないのはどっち?』(あさ出版)の著書もある、『秋津医院』(東京都品川区)院長の秋津壽男氏が注意を促すのがナッツ。
「ナッツは健康にいいんですが、ローストしたナッツ類に付着するカビには、強い発がん性物質・アフラトキシンが含まれているから要注意です」(秋津氏)
■ニンニクやキノコ、リンゴがオススメ
では、がん予防効果のある食べ物は何か。水上氏が勧めるのはニンニクとキノコだ。
「米国の国立がん研究所が2000万ドルの予算をかけて、がん予防に効く植物性食品を調べた結果、最も重要度が高かったのがニンニクでした。また、キノコは我が国の国立がん研究センターなどの調査で、ベータグルカンという含有成分が免疫力を上げるという結果が出ています」(水上氏)
一方で、岡田氏が推すのはリンゴ。
「抗酸化作用のあるポリフェノールが豊富だから。この成分が豊富な果実は他にもありますが、リンゴの場合はポリフェノール分子がバラバラに存在していて、腸に吸収されやすいんです。皮には果肉の5倍も多く含まれるので、皮ごと食べるのがいいでしょう。目安は1日1個です」
■有効な運動を
運動も、がんにならない体を作る重要な習慣だ。前出の岡田氏は1日30分の運動を週3回以上やることを勧める。
「運動するとp53という発がんを抑える遺伝子が活性化します。その結果、がん細胞分裂を促してしまうインシュリンの分泌量が減るんです」
運動は有酸素・無酸素運動を問わず行うのがいい。ただし、脈拍数が上がらないと効果がないので、ブラブラ歩く程度ではダメとのこと。30分もやる時間はないという人は、1回15分、1日2回でもいいそうだ。これに対し、前出の秋津氏はヨガ、座禅、太極拳が特にいいという。
「深く長く、ゆったりした腹式呼吸をしていると、自律神経を整えて、免疫機能を高めるんです」(秋津氏)
食事と運動で体を整えたら、次のステップへGO!
【第2部】タバコ、酒、入浴… …健康な肉体を作るコツ
ここからは、食事と運動以外の生活習慣を紹介する。国立がん研究センターが発表する、“がんを遠ざける5つの健康習慣”では、イの一番に、禁煙が挙げられている。
「毎日ひと箱のタバコを20年間吸うと、肺がんのリスクが約5倍と言われています。ただ、70歳以上は、禁煙のストレスによるデメリットのほうが大きいので、気にする必要なし」(前出の水上氏)
●日本酒半合なら
また、飲酒は、適量なら問題ないという。 “酒好き医師”としても知られる、前出の秋津氏によると、「お酒をまったく飲まない人に比べて、1日15ミリリットルの飲酒をする人は、がんの死亡率が下がるとのデータがあります」
15ミリリットルのアルコールは、日本酒でいえばおよそ半合にあたる。
「もし、それだけでは我慢できなければ、日本酒なら1日1合、ビールなら大瓶1本が目安。過度な飲酒を控えてください」(前同)
■アルコール40度以上のスピリッツは避ける
その際に注意したいのは、酒の種類だ。
「アルコール40度以上のスピリッツ(蒸留酒)は、粘膜を刺激して、食道がんなどのリスクを高めるので避けましょう」(同)
また、飲酒による体調の変化にも目を向けたい。
「飲んだ翌日に下痢になる人は、すい炎の疑いがあり、ひいてはすい臓がんの可能性も。
また、“ある日突然、酒が飲めなくなった”“酔うのが早くなった”という人は、内臓が危険な状態だと、体が緊急信号を出しています。すぐに病院へ」(同)
■薬も過ぎれば毒になる
同じく、飲みすぎ厳禁なのが、栄養サプリメント。健康のためにと飲んでいる人も多いが、薬も過ぎれば毒になるのだ。
●鉄分やベータカロチン、ビタミンEなどの栄養も
「鉄分サプリを日常的に過剰摂取すると、鉄分が肝臓にたまって鉄肝症になり、肝臓がんのリスクを高めます。
その他、ベータカロチン、ビタミンEなどの栄養も、とりすぎはNG。もちろん、適量なら、毎日飲んでも問題ありません」(同)
■コーヒーは積極的に
「吸えない」「飲めない」と言われると、嫌気がさしてしまう向きも多いだろうが、朗報もある。日々のリフレッシュに欠かせない人の多いコーヒーは、積極的に飲むのがよいという。
「国立がん研究センターが、男女約9万人を調査したところ、コーヒーをほとんど飲まない人に比べて、ほぼ毎日飲む人は、肝臓がんの発生率が約半分。
さらに、1日5杯以上飲む人は、がんの発生率が4分の1にまで低下したことが分かりました」(水上氏)
■サウナと水風呂の交互浴は危険
飲み物以外で、がん予防になる生活習慣として、挙げられるのが、入浴だ。
「体温が低いと、体の代謝が下がって免疫力が弱まり、結果、がんのリスクが高まります。特に、冬場はシャワーだけでなく、湯船につかって、しっかり体を温めるのが肝心です」(秋津氏)
さらに、秋津氏いわく、「湯船に浸かると、血管が柔らかくなり、動脈硬化の予防にもなる」とのこと。一石何鳥もの効果があるので、ぜひ。ただし、注意点も。
「寒い季節は、急激な寒暖差で血圧が乱れてショック死を起こす“ヒートショック”のリスクがあるので、湯船は、40度前後の心地よい温度にしてください。また、サウナと水風呂の交互浴は、体に負担がかかり危険です」(同)
■ストレス解消、よい人間関係を
ストレス解消に焦点を当てると、前出の岡田氏から、こんなアドバイスも。
「70歳を過ぎて、大きな病気がない人は、がん予防を考えなくて大丈夫!
健康診断も必要ありません。これまで通り、のびのびと毎日を過ごしてください」
最後に、よい人間関係を築くのも忘れてはいけない。
「米国のハーバード大学が年間かけた追跡調査で、友人がいない孤独な人に比べて、友人がたくさんいる人は、がんのリスクが明らかに低いとされています」(水上氏)
名医の教えを実践し、健康な体を手に入れよう!