びっくり!1cmほどの透明な小魚が銃声に匹敵する大音量を出していた(要音声)
[画像を見る]
ミャンマーの小川のせせらぎに耳を澄ませれば、強烈なノイズが聞こえてくるかもしれない。そこに生息する透明な小魚は、140デシベルもの音を発するのだ。
コイ科に属する透明なその魚の体長はほんの1cmほどなのに、銃声や空気ドリル、ジェット機の離陸音にも例えられる大音量を出す。
こんなに小さな体から、どうやってそんなに大きな音をだしているのだろう?脊椎動物の骨格の動きが筋肉に制限されるという従来の常識をくつがえすほどの小魚の秘密に迫ってみよう。
・自然界は結構騒々しい
人間も何かとうるさいが、動物たちだって負けていない。
ゼンケンベルク自然史コレクション(ドイツ)の魚類学者ラルフ・ブリッツ博士は、「テッポウエビは、そのハサミで最大250デシベルの破裂音を出します」と説明する
ニュージーランドの固有種である鳥のフクロウオウムは、交尾のために130デシベルの鳴き声を出すし、ゾウはその長い鼻で125デシベルの音を響かせる。
一方、魚は比較的静かな方だと思われがちだがそんなことはない。
たとえばトードフィッシュ(ヒキガエル魚といった意味だ)の仲間であるミッドシップマンフィッシュのオスは、メスを惹きつけるため100ヘルツの低音を130デシベルで響かせる。
フロリダ州に響き渡る怪音の正体は、ブラックドラム(Pogonias cromis)という魚が交尾するためにメスを誘う音だったことは記憶に新しい。
[動画を見る]
テッポウエビの激しい破裂音・1cmほどの小魚が出す140デシベルの大音量
今回ブリッツ博士らが注目したのは、脊椎動物としては脳がもっとも小さいことで知られるコイ科の仲間、ダニオネラ・セレブラム(Danionella cerebrum)だ。
2021年にミャンマーの濁った小川で発見された種で、1~1.3cmほどの小さくて透明な体を特徴としている。
小さくて可愛いと思ったら、びっくりさせられるかもしれない。
なんとこの小魚は、10~12mmの距離で140デシベル以上の大音響を出すことができる。そう、象の音よりも大きいのだ。
「これは、人間が100mの距離で感じる飛行機の離陸時の騒音に匹敵します」と、ブリッツ博士はプレスリリースで説明する。
ではその音声を聞いてみよう。
[動画を見る]
・どうやって音をだしているのか?
こんな小さな体でどうやって大音響を鳴らしているのか?
そのメカニズムを解明するために、ブリッツ博士らは、高速ビデオ・マイクロCT・遺伝子の解析など、さまざまな方法で調べてみた。
するとダニオネラのオスは、ドラムのような軟骨・特殊な肋骨・疲労に強い筋肉といったもので構成されたユニークなサウンドシステムを持っていることが明らかになったのだ。
この音発生器官は、ドラム軟骨を2000g以上の力で加速させ、それを浮袋に向けて発射し、急激な大パルスを発生させますこのパルスは連鎖し、筋肉の収縮をともないながら大音響となってぶっ放されるのだ。
[画像を見る]
2021年にミャンマーで発見された、ダニオネラ・セレブラム(Danionella cerebrum) / image credit:AngryBurmese / WIKI commons・濁った小川で生き抜くための適応か
なぜダニオネラは、こんなにも強力なサウンドシステムを進化させたのか? ブリッツ博士によれば、その理由は濁った小川という生息環境に関係しているようだ。
「この見通しのきかない環境でオス同士が競争したことで、音を使ったコミュニケーションを可能にする特別なメカニズムが発達したのでしょう」
その騒々しさは、脊椎動物の骨格が動くスピードは筋肉の動きに制限されるという従来の説をくつがえすくらい圧倒的だ。
こうしたダニオネラの進化は、動物の運動についての理解を深めるヒントになるとのこと。
ブリッツ博士は、ダニオネラ属のほかの仲間たちのサウンドシステムがどうなっているのか興味津々であるようだ。
この研究は『PNAS』(2024年2月26日付)に掲載された。
References:Miniature Cyprinid Fish Can Produce Sounds over 140 dB, Ichthyologists Say | Sci.News / Gills Aloud? Tiny fish found making very big noise - BBC News / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』