ドラキュラ公「ヴラド3世」が血の涙を流していた証拠を発見。手紙の科学分析で明らかに
[画像を見る]
ルーマニアとイタリアの科学者による研究チームが、ドラキュラ公、あるいは串刺し公としてして知られる、ルーマニアのヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ)が、血の涙を流す症状に苦しんでいた可能性があるとする証拠を発見した。
『Analytical Chemistry』誌(2023年8月8日付)に発表された論文の中で、ヴラドが書いた3通の手紙から、タンパク質とペプチドを採取し化学分析したところ、明らかになったという。
・ドラキュラ公、串刺し公の異名を持つヴラド3世
ヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ:1431年11月10日 - 1476年)は、ワラキア公国(現在のルーマニアの首都ブカレストがある地域)の君主で、通称ドラキュラ公、または串刺し公と呼ばれている。
ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』に登場する、「ドラキュラ伯爵」のモデルになったことでも有名だ。
15世紀、ワラキア公国の統治者だった彼は、国を守ることに徹底して厳格な君主だったされている。
そのため、敵であるオスマントルコ人を8万人も殺し、しかも、その多くを串刺しという残忍な方法で殺めたという。
この冷酷な統治者は、何かに苦しんだことはなかったのだろうか?
新たな研究では、ヴラドが何かの病にかかっていたかどうかを調べるために、彼が書いた3通の手紙を入手、詳しく分析した。
[画像を見る]
1475 年にヴラド3世が書いた手紙 / image credit: Analytical Chemistry、2023・血の涙を流すヘモラクリアの症状があった可能性
手書きの手紙の場合、書く者はその紙に必ず手を触れる。まず指で紙の表面に触れ、手のひらの下部を紙の上に置き、文字を書くはずだ。
その結果、皮膚からさまざまな化学物質の微粒子が紙に付着する。研究チームは、手紙になにが付着しているのかを探し、それらがどこからついたものなのかをたどった。
紙を損なうことなく、付着物を採取するために、手紙にエチレン酢酸ビニルのパッチを貼り付けた。
そして、得られた物質を質量分析してみると、500種以上のペプチドの残留物が見つかり、さらにその中から、ヒト由来のペプチド100種を絞り込んだ。
[画像を見る]
(a) 1475年8月4日付のヴラドの手紙。生物学的物質を採取するため、エチレン酢酸ビニル(茶色いパッチ)が 貼られている。 (b)UV照射にさらすと、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンがくっきりと浮かび上がった / image credit: Analytical Chemistry (2023).
ここから、細胞機能や臓器を損なう遺伝子疾患「繊毛病」や、気道や皮膚に支障をきたす可能性が高い炎症性疾患の証拠が見つかった。
もっとも興味深かったのは、涙管内の液体と血液が混ざって、血の混じった赤い涙が流れ出る「ヘモラクリア」と関係の深い物質が見つかったことだ。
ヘモラクリアは血の成分を含んだ涙を流す症状で、涙腺に出来た腫瘍、細菌性結膜炎や妊娠中の女性ホルモンの異常などによって発症する。
[画像を見る]
2通目の手紙も1475年のもので、左下にヴラド3世の署名が入っている。彼が血の涙を流す「ヘモラクリア」を病状を患っていたことが証明された / image credit: Analytical Chemistry (2023).
吸血鬼伝説と浅からぬ関係がある実在の人物が、血の病にかかっていた可能性があるとは、これはなにかの因縁なのだろうか。
References:Testing of Vlad the Impaler's letters show he may have had condition causing his tears to be mixed with blood / Vlad the Impaler may have cried tears of blood, chemical analysis of his letters finds / written by konohazuku / edited by / parumo
追記:2023年08月20日の記事を編集して再掲載してお届けします。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』