大谷翔平とメジャー観戦が「10倍楽しくなる!」Q&A20【画像】2024年「日本人メージャーリーガー」選手名簿

日刊大衆

大谷翔平
大谷翔平

 日本人選手の相次ぐ渡米で、「今年は大リーグもじっくり見たい」と考えている読者諸氏も多いはず。

 そこで今回は、知るとより楽しめる大リーグの基礎知識を徹底レクチャー。

 大谷翔平(29)に、山本由伸(25)まで加わった名門ロサンゼルス・ドジャースの歴史から、日本と異なる大リーグ独自のルールまでQ&A形式でお届けする。

 なお、主な解説は本誌でもおなじみ、大リーグ評論家の福島良一氏と、データ分析の専門家、ジャパンベースボールデータ社の大南淳氏にお願いした。

Q.そもそもドジャースって、どんなチーム?

 人気と実力を兼ね備えた大リーグ屈指の名門チームで、前身球団の設立は野球創成期の1884年。

 ワールドシリーズ制覇7回、リーグ優勝24回は、40回でトップのニューヨーク・ヤンキースに次いで、ナショナル・リーグでは最多。昨季は383万人と、断トツの観客動員を誇る。

「初の黒人選手として知られるジャッキー・ロビンソらを擁した1950年代が最初の黄金期。55年にヤンキースを倒してワールドシリーズ初制覇。ニューヨーク・ブルックリンから現在のロサンゼルスへの本拠地移転は、その3年後のことでした」(福島氏)

Q.歴代の在籍日本人は大谷&山本で計11人。獲得に積極的なのは、なぜ?

 98年の球団売却まで長年オーナーを務めた、ピーター・オマリー氏が大の親日家だったことが大きい。

 日米の野球交流に尽力した故・アイク生原氏を会長補佐として起用したのも、そのオマリー氏だ。

 日本人選手のパイオニア、“トルネード”野茂英雄の獲得も、オマリー氏だからこそできた英断だった。

「2016年から指揮を執るデーブ・ロバーツ監督も沖縄・那覇出身で、母親は日本人。日本との縁は今もチームの伝統です」(前同)

Q.中日のユニフォームが似ているのも関係が?

 大谷移籍で“激似”と話題を集めた中日ドラゴンズのユニフォームは、故・星野仙一氏が1987年の監督就任時に、かねて親交のあったオマリー氏本人の了承を得て導入したもの。

 ちなみに、50歳まで現役を続けた大エース・山本昌の開花は、前出の生原氏と邂逅したドジャースへの野球留学がきっかけ。

 星野中日が“お払い箱”にした直後に近鉄で覚醒したラルフ・ブライアントも、元はドジャース傘下のマイナー球団で燻くすぶっていた若手選手の一人だった。

Q.現在のドジャースが「最強」と称される理由は?

 不動の1、2番のムーキー・ベッツ(31)、フレディ・フリーマン(34)。大リーグでは貴重な“フランチャイズプレーヤー”左腕クレイトン・カーショウ(35)と、現役のMVP経験者は、大谷の加入で実に4人。

 ポストシーズンへは目下、11年連続進出中で、そのうち10回は地区優勝。直近3年はいずれも100勝超えと、レギュラーシーズンでは圧倒的な強さを誇る。

 そんな“常勝軍団”に、大谷&山本が加入したとあれば、はっきり「最強」だ。

Q.ライバル球団はある?

 かつて同じニューヨークを本拠にし、58年の“野球空白地帯”西海岸への移転も同時だったサンフランシスコ・ジャイアンツが、今なお宿命のライバル。

「日本における巨人対阪神戦のような、最も盛り上がる対戦の一つ」(同)

Q.球団同士の“因縁”やライバル関係は他にも?

 同じニューヨークに本拠地を構えるヤンキースとメッツの対戦は“サブウェイ・シリーズ”とも称されるが、福島氏いわく「メッツはいわば新参者。熱心なヤンキースファンからは、あまり相手にされていない」。

 これは、件のドジャースと、同じ「ロサンゼルス」を冠する新興球団である大谷の前所属・エンゼルスとの関係とも相通じる。

「ヤンキースとの因縁という部分ではやはり、吉田正尚(30)も在籍する同じア・リーグ東地区のボストン・レッドソックスも。20年のベーブ・ルース移籍を端緒に86年間もの間にわたってワールドチャンピオンから見放された“バンビーノの呪い”でも有名です」(前同)

 ちなみに、同じシカゴに本拠を置くカブスとホワイトソックスは、北と南でファンも明確に住み分け。

鈴木誠也(29)や今永昇太(30)も在籍するカブスの宿敵は、昔も今も、ラーズ・ヌートバー(26)らのいるセントルイス・カージナルス。これは19世紀から続く、最も古いライバル関係なんです」(同)

 思い返せば、98年に熾烈な本塁打争いを演じたサミー・ソーサとマーク・マグワイアは両球団の主砲。

 この争いに全米が熱狂した裏側には、そんな長年続いた関係性もあったのだ。

Q.ナ・リーグ西地区の現況は?

 戦力的にはドジャースが頭一つ抜けているが、昨季は16ゲーム差の2位だったアリゾナ・ダイヤモンドバックスがワイルドカードシリーズを制してワールドシリーズに進出した。

 他に前出のジャイアンツも同地区。同じ西海岸のサンディエゴ・パドレスにはダルビッシュ有(37)や松井裕樹(28)が在籍する。

 残るコロラド・ロッキーズは、標高1600メートルの高地で打球がよく飛ぶ“打者天国”の本拠地クアーズ・フィールドが有名だ。

Q.ナ・リーグとア・リーグに大きな違いは?

 2022年からナ・リーグにもDH制が導入され、顕著な違いはほぼ消滅。

 レギュラーシーズン中に全29球団と対戦する昨季からの日程変更で、同地区対決も年間13試合ずつの計52試合に減少した。

Q.「ワールドシリーズ制覇」への道のりは日本と、どう違う?

 日本でのクライマックスシリーズ(CS)とは異なり、大リーグのポストシーズンは仕組みが複雑で、期間も約1か月と長丁場。

 まずは各リーグ・各地区優勝チームのうち、最も勝率の低い1チームと、各地区2位以下から勝率上位3チームが、3回戦制のワイルドカードシリーズへと進出。

 これを勝ち上がった2チームが、続く5回戦制のディビジョンシリーズ(地区シリーズ)へと駒を進め、シードされた残る2チームと、それぞれ対戦する。

 そして、その勝者が7回戦制のリーグチャンピオンシップシリーズを戦い、これに勝って、ようやくワールドシリーズの晴れ舞台。

 地区優勝を果たして、仮にワイルドカードは免除でも、最大で19試合。最低でも11 勝はしなければ、頂点には立てない計算だ。

「昨季のテキサス・レンジャーズとダイヤモンドバックスは、ともにワイルドカードからの勝ち上がり。両者は2年前にシーズン100敗を喫したチーム同士でもありました」(同)

 なお、年間100勝超のドジャースファンには“勝ち損”な気もするが、日本のような“不要論”は、こと米国では聞こえない。

「一発大逆転が大好きな国民性も多分にある。大多数のドジャースファンも、ポストシーズンは別物と考えているのでは」(同)

Q.経験者が口をそろえて言う「過酷さは日本の比ではない」。何が、どう大変?

 まずは、移動距離の長さ。アメリカの国土面積は日本の約25倍。トロント・ブルージェイズのようにカナダに本拠を置く球団もあり、

「チームによっては1シーズンの総移動距離が地球2周分(約8万キロ)に達することも」(同)

 そのうえ、日程は約180日間で、日本より多い162試合をこなす超過密。場合によっては、20連戦といった強行軍もザラにある。

Q.制度やルールに日本との違いは他にもある?

 試合短縮を目的に昨季から導入された“ピッチクロック”は、日本でも話題。

 マウンドの投手は、構えてから15秒以内(走者のいる場合は18秒以内)に投球動作を完了しなければ、ペナルティで1ボール。

 同時に、打者もピッチクロックの残り8秒以内に打席に入らなければ、1ストライクが勧告される。

「他に、極端な守備シフトやワンポイントリリーフの禁止。また、本塁を除くベースが大きくなりました。

 とりわけ後者により、大リーグ全体の盗塁数は激増。アトランタ・ブレーブスの主軸ロナルド・アクーニャJr.(26)に至っては、史上初の40本塁打&70盗塁を達成。ナ・リーグMVPに輝いています」(同)

 また、バッテリー間のサイン伝達には無線機器“ピッチコム”の使用も可能。ベンチでのタブレット使用も、厳格な管理下で許可されており、大谷も活用中だ。

Q.ダブルヘッダーがやたら多いのは、なぜ?

 ズバリ、あらかじめ決まっている閉幕日に合わせて日程の消化を優先するため。

 地区優勝やポストシーズン争いに影響するといった特段の事情がない限り、未消化の試合はキャンセルされるのが通例で、複数のチームが“完走”できなかったシーズンも実際ある。

Q.個性豊かな大リーグ球場。そのトレンドは?

 日本での知名度でいえば、左翼にそそり立つ

「グリーンモンスター」で知られるレッドソックスのフェンウェイ・パークが出色。

 ドジャースとの関係の深さでは、同地区ジャイアンツの本拠地オラクル・パークは、右翼後方の湾に直接飛び込む

「スプラッシュ・ヒット」が代名詞。

 ダイヤモンドバックスのチェイス・フィ―ルドは、右中間後方に完備のジャグジープールも大人気だ。

「美しい球場として知られるドジャースタジアムも今や3番目に古い。近年は、外野の後方にビル群を望む街中にボールパークを作るのがトレンドです」(同)

Q.“三冠王”獲りに立ちはだかる選手は?

 最大のライバルはやはり、アクーニャJr.や、昨季打点&本塁打で二冠のマット・オルソン(29)を擁するブレーブスの強力打線。

 だが、本気で“三冠王”を狙うなら、マーリンズのルイス・アラエス(26)も避けて通れない難敵だ。

「“フライボール革命”以降の大リーグでは珍しい安打製造機タイプで、一昨年はミネソタ・ツインズ、昨季はマーリンズと異なるリーグで2年続けて首位打者を獲得。率にして、わずか5・5%と三振数が極端に少ないというのも、本人も憧れを公言する、イチローを彷彿とさせます」(大南氏)

Q.大谷以上の身体能力を秘める“怪物”もいる?

 身体能力の高さでは、球速97・9マイル(約157・6キロ)の“鬼送球”でも話題となったシンシナティ・レッズの内野手エリー・デラクルーズ(22)が断トツ。

「MLBが集計しているスプリントスピードでも、彼は秒速30・5フィート(約9・2メートル)と、全583選手中、堂々の1位。今季、さらなる活躍が期待される一人です。

 同じ内野手では、ピッツバーグ・パイレーツのオニール・クルーズ(25)も面白い。身長2メートルの強肩遊撃手なんて、日本ではまず、いませんしね」(前同)

Q.打者大谷の“キラー”になりうる投手は?

 大谷の弱点を強いて挙げるとすれば、どんな好打者でも反応するのが難しい160キロ近い豪速球。

「試合によってはストレートの平均球速が100マイル(約161キロ)を超えるレッズのハンター・グリーン(24)は注目したいところ。

 ちなみに、昨季100投球回以上を投げた投手のストレート平均球速は、大谷とは同僚であるボビー・ミラー(24)の99・1マイル(約159・5キロ)が全体でもトップです」(同)

Q.2年連続3度目のMVP。可能性は?

 DH専任のMVP受賞者は、大リーグが持つ長い歴史の中でも、いまだゼロ。また、チーム内に前出の強力な“ライバル”も多数いるのが逆風になるだろう。

Q.MVP投票で重視される“WAR”って何?

 DH選手のMVP獲得を難しくしているのが、記者投票の決め手ともなっている、セイバーメトリクス指標“WAR”の存在だ。

「野球で何より重要なのは、より多く得点を取って試合に勝つこと。つまりチームの勝利に、どれだけ貢献したかを測るために最適化された指標が“WAR”です。

 打撃、走塁、守備、投球の総合評価のため、守備に就かないDH選手は、どうしても評価が低くなる。昨季の大谷でいえば、投打で稼いだ10・0のうち、投手での2・4が単純になくなるわけですから、ハードルはかなり高いでしょう」(同)

Q.知ると楽しめるセイバーメトリクス指標は?

 日本でもコアな野球ファンには、すでに浸透済みの守備指標“UZR”は、新たな見方ができて面白い。

「大リーグでは“OAA”という指標が使われていますが、“その選手が守ることで、いかにチームの失点を減らしているか”という基本的な思想は“UZR”ともほぼ同じ。“守備がうまい”イメージで語られる選手の評価が意外に低いことも多々あるので、知るとより楽しめるはず」(同)

Q.今年は韓国での開幕も話題。日本でも生で見られる?

 今年の韓国開催は“MLBワールドツアー”と称した、大リーグが推し進めるプロジェクトの一環。

 シーズン中には、昨季に続いて、4月にメキシコシティ、6月にロンドンで、それぞれヒューストン・アストロズとロッキーズ、フィラデルフィア・フィリーズとメッツが対戦する。

 なお、NPBの榊原定征コミッショナーの談によれば、きたる25年のシーズンは

「東京ドームでの日本開幕が濃厚」とのこと。

 となれば、興行的なメリットからしても、大谷らを擁するドジャースの来日が最有力。記念すべき“二刀流”の復活登板が、日本で実現する日も近い!?

■検証!大谷の弱点を探れ

 野球においては弱点なしの大谷だが、苦手なものはあるのだろうか。

「同じ球技とはいえ、ゴルフが苦手。昨年末に、エンゼルスの監督だったジョー・マドン氏が、『MLBトゥナイト』という番組に出演した際、“オオタニをゴルフに誘おうと思ってプレーしているビデオを見たけど、上手ではなかったよ。信じられなかったよ、野球は何でもできるのにって”と発言していました」(スポーツ紙MLB担当記者)

 ゴルフ下手はメジャーリーグで知れ渡っているという。

「日本ハム在籍時の13年、球団のゴルフコンペに参加した際の、クラブを振ってもボールが前にコロッと転がるだけの映像をMLB公式サイトが紹介したんです。ちなみに、そのときのスコアは146だったそうです」(前同)

 完璧な肉体のためには食生活も大事だが、苦手な食べ物もあるという。 

「2015年オフに『ZIP!』(日本テレビ系)内の料理コーナー『MOCO’Sキッチン』にゲスト出演した際、料理を振る舞う俳優の速水もこみちに“トマトだけは苦手なので勘弁していただきたい”とリクエストしていました」(地方紙記者)

 この日は牛肉のパイ包みを頬張って満足顔だった大谷にピンチが訪れたのは、その2年後のことだったという。

「17年オフに、応援大使を務める北海道月形町で、町民600人ほどの前でトークショーをしたんですが、イベント終了間際に同町の名産品であるトマトジュースが目の前に運ばれてきたんです。取材していてヒヤヒヤしましたね」(前同)

 対決不可避の苦手食材の前で大谷は、どうしたか。

「“飲んだことがないんです”と前置きしながら、一気に飲み干して、町民はやんややんやの大拍手。さすがだなと胸を撫で下ろしましたよ」(前同)

 やっぱり、完全無欠の男なのだ。

【画像】2024年「日本人メージャーリーガー」選手名簿

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