巨大な太陽光発電で雨雲を作り出し、砂漠に雨を降らせることができるという研究
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砂漠が広がるアラブ首長国連邦(UAE)は、水は不足しているが、太陽の光なら豊富にある。もしかしたら、この日光が乾燥した国に大量の雨をもたらすかもしれない。
ドイツ、ホーエンハイム大学の研究チームによれば、広い範囲に太陽光発電に使用するソーラーパネルを設置すれば、それが上空に雨雲を作り出し、大勢の人たちに貴重な水をもたらす可能性があるという。
だが、こうした地球工学は、ほかの地域に干ばつを引き起こすなど、思わぬ副作用をもたらす恐れもある。ことを進めるにあたっては慎重さが求められるようだ。
・ソーラーパワーでどうやって雨雲を作り出すのか?
太陽光発電に使用されるソーラーパネルによって雨が降る仕組みはこうだ。
ソーラーパネルは、できるだけ発電効率を高めるよう、太陽の光をたくさん吸収するように作られている。
その結果そこに熱がたまり、局地的な”人工ヒートアイランド”が形成される。すると海から流れ込んできた湿気を含む空気が温められて上昇し、それが雨雲となる。
では実際に雨を降らせるために、どの程度の広さのソーラーパネルが必要になるのか?
研究チームがこれをシミュレーションで推定してみたところ、10km2程度では雨の量にほとんど変化はないようだった。
だがそれ以上の規模になれば、かなりの豪雨を降らせる可能性がある。
20km2のソーラーパネルなら1日に57万m3の雨になる。1年にたった10日間雨を降らせるだけで、3万1000人分以上の水を供給できるということだ。
さらに50km2なら、毎年12万5000人分の水をまかなえるだけの雨が降る。
ホーエンハイム大学の気候科学者オリバー・ブランチ氏は、「いくつかの太陽光発電所は適切な規模になりつつあります。降雨効果はSFの話ではなくなるかもしれません」と語っている。
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photo by iStock・副作用を懸念する声も
水不足で困っている地域を潤わせてくれる素晴らしい解決策に思えるが、これを実行する際には細心の注意が必要になるかもしれない。
2020年に行われた別の研究によれば、たとえばアフリカのサハラ砂漠で同じことをすれば、その地域の雨が増えても、アマゾンでは熱帯雨林に干ばつを引き起こし、北極では気温上昇や海氷の融解を引き起こすなど、地球全体に重大な副作用が出る恐れがあるという。
地球の気候は非常に複雑なシステムで、そこに人間が手を加えれば、予想だにしないことが起きるだろうことは容易に想像できる。
一方で、水不足で悩む人たちに綺麗な水を供給する必要があることも確かだ。
地域のニーズを満たし、他の地域への影響は最小限におさえる。そんな方法を見つけるために、この手の地球工学的な実験は、慎重に行われてしかるべきものだ。
この研究は『Earth System Dynamics』(2024年1月30日付)に掲載された。
References:Giant Solar Farms Could Bring Much-Needed Rainclouds To The UAE | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
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